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Laughrain Circus  作者: 鬱乃みや


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7/8

観測者

「面白いね、セラって」

その言葉が、やけに残る。軽いはずなのに、どこか引っかかる。

「本当に面白い」

違う。今のは…クラリスじゃない。

「……え?」

思わず声が漏れる。クラリスがきょとんとする。

「なに?」

何も気づいていない顔。でも確かに聞こえた。もう一つの声が。

「………聞こえたか」

今度ははっきりと。低く、静かな声。確かに聞こえたのに、どこから聞こえているのかわからない。空間そのものから滲み出るみたいに。空気が重く、静かに沈む。クラリスの笑顔が、ぴたりと止まった。

「…あれ?」

小さく呟く。さっきまでの軽さが消えている。ヴェラの視線が、一瞬で鋭くなる。

「…出てきたか」

低く吐き捨てた。その一言で理解する。これが……

「そう警戒するな。ヴェラもな」

声が落ちる。すぐ近くで。でも、そこには誰もいない。

「興味が湧いただけだ」

ゆっくりと空間が歪みだす。そこに、何かが形を持ち始める。人の輪郭。

「ノクス」

クラリスが小さく呟く。その声には、わずかな緊張が混じっていた。今までとは違う。明確な上下がある声。

「呼んでないですよ?」

軽く言っているが、いつもの調子じゃない。探るような声。

「呼ばれてないから来た」

静かに答える。意味の分からない理屈。けれど、否定できない圧がある。

「悪趣味」

ヴェラが吐き捨てる。隠す気もなく、敵意すら混ざっている。

「お前の遊びに付き合う気はない」

ほんの一瞬、空気が止まる。

「遊び、か」

ノクスがわずかに笑う。

「なら、そういうことにしておこう」

興味なさげに流す。怒りも否定もなく、ただ、どうでもいいと切り捨てるように。

その視線が、こちらへ向く。逃げ場がない。

「…なるほど」

観察するような声。ゆっくりと、値踏みするみたいに。

「これは、確かに…空白だ」

ノクスが一歩近づく。異様なほど強い圧に体が強張る。

「だが」

わずかに間をおいて続ける。

「完成に最も近い」

意味が分からない。けれど、理解してはいけない気がした。

「…もうやめな」

ヴェラの声が低く、鋭く響く。

「セラに触れるな」

明確な拒絶。けれど、ノクスは気にしない。まるでそこにいるヴェラの存在を認識していないかのように。

「セラ…といったか」

名前を呼ばれただけで、息が詰まる。

「…いい」

短く言う。評価するように、決めるように。

「使える」

その一言で、すべてが決まった気がした。

何かが、取り返しのつかない方向へ動き出す。

「…気に入った」

静かに言う。

これは、選ばれたんじゃない。捕まった。

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― 新着の感想 ―
一気によませていただきました。このサーカス自体がなんなのか大変気になります。今後どのように話が進んでいくのか楽しみです
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