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Laughrain Circus  作者: 鬱乃みや


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5/8

配役

「まあまあ!」

割り込むように、少女が一歩前に出た。

「そんな怖い顔しないでよ~」

くすくすと笑う。けれどその笑顔は、どこか不自然だった。

もう一人の方は、小さくため息を漏らしながら、興味が無いように視線を逸らす。

けれど完全に外れたわけではない。こちらを警戒するように見ている。

「とりあえずさ!…自己紹介!しよっか」

少女が手を叩き、軽やかな音を響かせながらくるりと回る。

「アタシはクラリス!」

胸を張って名乗る。その笑顔は、やっぱり完璧だった。

「このサーカスの歓喜担当!みんなを笑顔にするのが仕事なの!」

その言葉に、観客席の光景がよぎる。誰も笑っていなかった。それでも、笑顔にすると言い切る。そのズレが妙に引っかかった。

「で!」

クラリスが隣を指さす。

「こっちは……」

「ヴェラ」

遮るように、低い声が響く。

「…怒り」

付け足すように言う。感情の乗らない声で。その一言だけで空気が重くなる。

「真逆でしょ!」

クラリスが笑う。本当に楽しそうに。

「でもそれがいいんだ!」

軽やかに言って、こちらを見る。

「じゃあ次は君!」

逃げ場はない。

「名前は?」

「……セラ」

「セラ!」

クラリスが嬉しそうに繰り返す。無邪気に笑って。

「配役は…できないじゃんね」

困ったように笑う。その声は少しだけ、楽しそうだった。

「…で、それってさあ」

指先でチケットを叩く。トントン、と規則的に。

「ここにいられないってことなんだけど」

さらりと言う。まるでどうでもいいことのように言う姿に背筋が冷える。

「排除すればいい」

ヴェラの迷いのない一言に空気が凍る。

「え~?それじゃつまんないじゃん」

クラリスが不満そうに声を上げる。でもその口元は、少しだけ楽しそうに歪んでいた。

「せっかくの空白なんだよ?」

一歩近づく。

「何にでもなれるってことかもしれないじゃない?」

囁くように言う。その目は笑っていなかった。

「……」

ヴェラは何も言わないが、明らかに納得していないようだった。

「…チケット持ってるなら」

気づけば口が動いていた。

「それを用意した人がいるんじゃないの?」

一瞬の沈黙のあとクラリスの表情がぱっと明るくなる。

「それいい!確かに、あの人ならわかるかも!」

「やめな」

低い声が割り込む。

「あれは…関わるな」

ヴェラは何かを言いかけて、吐き捨てるように言った。それだけで十分だった。

ここにいる誰よりも『あの人』が危険だと理解するには。

「まあいいや!」

クラリスはさっきまでと同じ明るい顔に戻ってくるりと回る。軽やかに、楽しそうに。

「壊れるかどうか、見てみよっか!」

……壊れる?何が。誰が。答えは、聞かなくてもわかる気がした。


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