えぴそーど2~乙女ゲーム悪役転生?
本日2話目です。
息抜きに書いたら楽しすぎて、やらないといけないことが後回しになったのは秘密です
ローズメアリーは公爵令嬢であり、産まれた時から王家に嫁ぐことを運命づけられた少女だった。
そんなローズメアリーには、秘密があった。
実は現代日本からの転生者であり、この世界はとある乙女ゲームの舞台だったのである。
当然のように、王子は攻略対象者で、自分は悪役令嬢である。
(はい、テンプレ乙~)
現状をしっかり把握して死んだ目になったのは5歳の時だった。
それまでは(異世界転生キタコレ)なんて、ちょっと調子に乗っていた。
まだ幼児だったので、何もできてなかったけど。
とりあえず、王子様の婚約者なんていやだと駄々をこねた。
そもそも婚約が結ばれなければ、乙女ゲームの悪役にはなりえないと思ったからだ。
舞台に上がらなければ、そもそも始まらないのだから。
ところが、産まれた時から。何なら、産まれる前から決まっていた婚約である。
子供が駄々をこねたところで、覆るわけがない。
しかも、王子とは幼馴染として庭を駆け回って遊ぶ仲良しさんだった。
「あらあら、喧嘩しちゃったの?ちゃんと謝れば仲直りできるわよ~」
「父さんも一緒について行ってあげるから、ちゃんと謝ろうな」
てな感じである。
違う、そうじゃない。
そもそも、なんで自分が謝る=悪いことした前提なのか?
ローズメアリーは大いに不満だった。
残念ながら、くだらない悪戯を思いついては王子を巻き込んで、プチ騒動を起こす常習犯だったため両親の対応もあながち間違いではなかった。
しかし、子供は悪戯するものだろうという認識のローズメアリーだけが、自分がやや問題児扱いされている事に気づいていなかった。
次に、王子本人に訴えてみた。
自分は前世の記憶があり、ここは恋愛を楽しむ特殊なゲームの世界なのだと。
「今度はどんな本読んだの?面白そうだから僕も読んでみたいな」
あっさりと子供の妄想扱いされて終わった。
この王子様。
こっちこそ人生何週目だと言いたくなるほどのハイスペックの持ち主だった。
一を聞いて十を知る、どころか、ゼロから物事を生み出してみせる本物の天才である。
人生二周目とはいえ、しがない底辺大学生だったローズメアリーは5歳にして白旗をあげる羽目になった。
そんな王子様が、なんでローズメアリーの悪戯に付き合っているかというと、あまりにもくだらなさ過ぎて自分では思いつかない事が、逆に新鮮だったからだ。
優秀過ぎるゆえに先読みできてしまい、感情が希薄な王子が、あまりに破天荒すぎるローズメアリーに振り回されて大笑いしたり怒っている様子は非常に貴重である。
いつになく子供らしい反応を返す王子に、周囲も良い組み合わせかもしれないと、関係続行の姿勢だった。
親も駄目、相手も駄目で覚悟を決めたローズメアリーは、ここで最大の秘密をロイスに打ち明ける事にした。
「私、前世は男だったんです。だから、ロイスとは結婚できないわ」
そう。ローズメアリーの前世は男だった。
最後の記憶は、大学に向かっている所である。
昔気質の教授は頑なに手書きのレポートを出させることにこだわっており、文句を言いつつもにジップロップで二重に包んだレポートを手に、雷雨警報が出ている中、家を出た。
これを落としたら留年の危機だったため、しょうがなかったのだ。
恐らく、運悪く雷に打たれて命を落としたのだろう。
奇しくも女性の体で転生してしまった事には驚いたけれど、まあ可愛いしいいかとあっさりと受け入れた。
同性なら、侍女に甘えて抱きついても拒否されないだろうし、ゆくゆくは女友達と一緒にウフフ・・・・・・なんて、あくどい笑みを浮かべてもいた。
「でも、今は女の子なんだし、問題ないよね?」
ロイスは、コテリと首を傾げた。
金髪碧眼のまるで天使のような容姿を持つ王子にはそんな仕草が良く似合う。
ローズメアリーも見事に心臓を打ち抜かれて、胸を押さえ崩れ落ちた。
「え?いいの?まあ確かに女の体だし?いやでも男と色々するの嫌なんだけど?」
あまりの衝撃に、主張どころか記憶まで飛びかけて、ローズメアリーは自問自答する。
「大丈夫、人間は環境に馴染む生き物だから、今は違和感あっても女の子としての生活が長くなればその違和感もなくなるよ」
ニコニコとほほ笑みながら、慰めるように頭を撫でて説得してくる王子。
現在5歳である。何これ、怖い。
「なんか、ロイスの方が人生周回してる気がしてきた。一回目でこんな5歳児ありえない・・・・・・」
「僕は僕だよ?」
ブツブツと呟くローズメアリーに、ロイスは不思議そうに答える。
「くそ~。キョトン顔もかわいいな~」
「褒めてくれてありがとう。ローズメアリーもかわいいよ」
ほんのり頬を染めて、褒め返しをしてくるロイスはあざとかわいかった。
しかし、その笑顔がフッと曇る。
「そんなに僕と婚約するの嫌?僕の事、嫌い?」
「そんな事ないよ!ロイスの事好きだよ!友だちだもん!」
ションボリと問いかけられて、ローズメアリーは即座に否定する。
「ロイスは優しいし、なんだかんだでやりたいことに付き合ってくれるし、ロイスの前なら猫被んなくていいし」
侯爵家の令嬢に産まれた以上、下手な言動をするわけにはいかないローズメアリーは、お外では特大の猫を何枚も被っていた。
おかげで幼いのに完璧な淑女ね、なんて評判も上々だ。
転生前の記憶があるせいで物心がつくのは早かったし、人間関係失敗すると面倒なのは前世で身に染みていたので、対策は完ぺきである。
とはいえ、疲れないわけではないので、子供相手ならいいだろうと、ロイスと二人きりの時には早々に猫を放り投げていた。
結果、訳の分からない行動が増え、ロイスの興味を引いたのだから、人生何が幸いするのか分からないものである。
ここで評判通りの完璧な淑女を崩さなければ、婚約破棄の申し入れにロイスが抵抗することもなく、比較的穏やかに受け入れられていた可能性もあったのだが、知らずが仏とはまさにこの事だろう。
「じゃあ、やっぱり僕にしときなよ。言っとくけどローズメアリーの立場だと、僕との婚約が立ち消えても別の婚約が結ばれるだけだよ?男と結婚するのは嫌なんでしょう?」
「え?別の婚約者?」
そもそも、悪役令嬢にならないためにロイスとの婚約を解消したかったはずのローズメアリーは、『男との結婚』というパワーワードに意識を持っていかれてしまう。
「だって、ローズメアリーは公爵家の一人娘だし、家を継ぐために婿を取らないとでしょう?誰かと結婚しないといけないなら、友達の僕との方が良くない?」
「そっか。そうだよね。どうせ誰かと結婚しないといけないなら、ロイスの方がいいかも?」
強調された友達に、ローズメアリーはなんとなく納得してしまった。
「ロイスの前なら猫被らなくてもいいし、お得だよね」
ニコニコと笑顔を浮かべるローズメアリーに、ロイスは心の中でこぶしを握り締める。
(誤魔化し完了。ローズメアリーが単純で良かった)
ロイスと結婚したところで、男と結婚するのに変わりはないのだが、いまのところローズメアリーがそのことに気がついた様子はない。
(それにしても、転生とか面白いこと言い出したな。まぁ、確かに思考回路が男性寄りっポイしそこは認めるとしても、ゲームの世界とか・・・・・・。本当にそんなことあるのかな?)
悩みが落ち着いたとばかりに(実際は何も解決していない)スッキリした顔でお菓子を食べ始めたローズメアリーに適当に相槌を打ちながら、ロイスは考えを巡らせる。
(詳しく聞き出して、一応条件が合う人物がいるかは調べてみるか。障害物は排除しなきゃね)
支離滅裂なローズメアリーの言葉だけでは全容を掴みにくかったけれど、平民が高位貴族の子息を色恋沙汰で次々と誑し込むなど、本当に起こったら前代未聞の大騒動だ。
十年以上先の話みたいだけど、本当になりそうなら、芽がでる前に摘んでおく方が安心だろう。
3歳の時に婚約者候補として引き合わされてから、ロイスはローズメアリーに夢中だった。
先の先まで見通せてしまうロイスにとって、世の中は退屈の極みだった。
誰もかれもが、想像通りの動きしかしない。
仮にも王族の一員であるロイスへの対応は、どうしても儀礼的になるためしょうがないと分かっていても、幼いロイスには不満で、これが一生続くなど耐えられないとまで思い始めていた所だったのだ。
そこにきてのローズメアリーである。
幼いながらも理路整然とした行動をしているかと思えば、隠れて訳の分からない行動を始める。
しかも、一緒にやろうとロイスを巻き込んだ。
だけど、本人は心の底から楽しそうで、ロイスにもその楽しさのおすそ分けくらいの気持ちなのである。
侍女のエプロンのポケットにカエルを入れるのも、いい感じの枝を探すために護衛を撒いてうろつくのも何が楽しいか分からなかった。
だけど頬を赤く染めて全開の笑顔のローズマリアに手を引かれて走るのは、悪くないと思ってしまったのだ。
(こんな面白い存在、手放すわけないのにね)
クッキーを侍女にばれないようにいくつポケットに詰め込む事ができるかを挑戦しているローズメアリーを見守りながら、ロイスはこっそりと嗤う。
賢すぎて先読みできてしまうせいで人としての感情が薄い第二王子が、貴族の常識が通じない平民の娘に振り回されて感情を取り戻し、やがて恋心を育てていく。
乙女ゲームの中でのエピソードを、無意識のまま見事に先取りしてしまったローズメアリーは、その後綺麗に外堀を埋められて幸せになるのだが、それもまた運命という事だろう。
ちなみに乙女ゲームは始まりませんでした。
お読みくださり、ありがとうございました。
というわけで、今回の主人公は転生者です。
だけどあまり賢くないので、転生チートは活かせてません(笑
いや、でも仮に夜凪がこの立場でもこうなる気はしますけどね(汗
今回はお相手がチートなので、こんな感じに落ち着きました。
ほんのりヤンデレ臭がしますね!
きっと主人公が活かせなかった知識を上手に引き出して発展させてそうですね。
ちなみに、次男なので王様にはなりません。
そんな忙しい立場になったら、観察する暇がなくなるので下克上もしないです。




