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部屋にて

「おい!女神がどっかに行ったぞ!?」


「急げ!部屋に戻らねば!」




屋上に着くやいなや、サバオが非常階段を駆け下りた。急いでそのあとを追う。


ふたたびロイヤルスイートの部屋に戻った。部屋は特に変わった様子はない。




窓の向こうには、先ほどと同じ横浜の夜景が広がっている。さっきのゴンドラからとは違い、ガラスの向こうにある夜景は輝いてみえた。




「サバオ、女神はどこに......」




パリーン!




ガラスのわれる鋭い音が、部屋いっぱいにひびく。あぜんとして窓を見る。


女神はロイヤルスイートの大窓を外から豪快にぶちやぶり、ガラスの破片だらけになったベッドルームで、床にごろごろと転がっている。




窓を割って入ってきたのか?




そんなのありか!?




「これはようこそ、海神殿」




サバオがまるでまったくなにもおきていないかのような態度で、女神に手を差し伸べた。




「シャアアアアア」


「そうですな。いつも通り横になるのがよろしかろう」




女神の巨体は、スイートでないと泊まれない大物というだけあって、体育座りにしてもロイヤルスイートにおさまらないほど大きかった。




本人も居心地が悪いのか、周りの家具をめちゃめちゃにしながら体勢をあれこれ変え続けている。




最終的に、両手を前に伸ばしたうつぶせ座りで落ち着いたらしい。スフィンクスのように頭だけをすっと上げ、感情のないブロンズの目でこちらを見る。




一連の流れをあっけに取られて見ていたが、気づくと窓ガラスが直っていた。船霊神の双子が、なんらかの方法で直したらしい。出来をチェックしているのか、ふたりでばんばんと窓を叩いている。




「さて......」


「さて、じゃねーよ!」




相変わらず飄々としているサバオに食ってかかる。




「お前さ、いろんなこと先に言えよ!この十分だけで何回死にかけたと思ってんだよ!」


「ところがどっこい、生きておる」


「ぎりぎりなんだよ!」


「そう怒るな。海神殿の前であるぞ」




海神が白目をぎょろつかせてこちらを見ている。その射抜くような視線に、前進から冷や汗が流れた。




「......失礼しました」


「海神殿、こちらが前もってお話した人の子です」


「シャアアー」


「小汚い?それは失礼しました」


「シャアアー」


「はい。しかしそれは本人にはどうしようもないことですから」


「シャアアー、シャアアー」


「ははは。それはきっと本人も無念なことでしょう」


「おい!お前らなんかずっと俺の悪口言ってないか!?」




海神がキッとこちら見た。ささっと頭を下げて黙る。


サバオが耳打ちしてきた。




「ぬしは余計なことをいうな」


「お前の翻訳が信用できないんだよ」


「ぬしの見た目を悪く言っておっただけじゃ。害はない」


「それでないならなにが害なんだよ」

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