みなとみらい2
高層ビルが立ちならぶ横浜の心臓、みなとみらいに、ヨットの帆を模した巨大なホテルがある。
ヨコハマ・グランド・インターコンチネンタル・ホテル。
五つ星ホテルとして名高く、横浜三大ホテルにも名を連ねる、正真正銘の高級ホテルだ。
そして、そのロイヤルスイートに、海神がいるらしい。
「海神殿はこのホテルが建ったときから、えらくお気に召されておる。ゆえに、わしとの面会は毎年ここのスイートじゃ」
「お前と会うのに、なんでわざわざスイートなんだよ」
「海神殿は大物だからの。スイートにしか泊まれんのじゃ」
優雅という言葉がぴったり当てはまる吹き抜けホールを通り、サバオが颯爽とエレベーターへと向かう。
サバチョコレートを載せた台車を、ガラガラ引いてあとを追う。けっこうな状況なのに、周りの人はなぜか誰も俺たちのことを気にしない。
いろいろ気になることはあるが、いまは着いていくしかない。
「先にスイートに海神殿が来ておればいいんじゃがのう」
エレベーターに乗り込むと、サバオがゆううつそうに言った。
「もしいなければ、起こしにいかねばならん。わしはこの作業が苦手じゃ」
「起こす?」
「そうじゃ。モップでばしばしと顔をたたく」
質問しようとしたところで最上階に着いた。エレベーターを降り、『Royal Suite』と書かれた部屋をノックする。
「おらんかもしれんの」
サバオが、自然な動作でドアを開けた。なかから、ふんわりとアロマのいいかおりがする。
重厚な家具にかこまれた、小さな玄関ホールが出迎える。この部屋だけで、そのあたりのビジネスホテルひと部屋ぐらいの広さはある。
「海神殿、おられるか?」
サバオがずかずかと中にはいっていく。
ソファのあるダイニング、テーブルを囲むふたつめのダイニング。
使い勝手のいいパントリー、大理石でできたジャグジー風呂。
最後の部屋は、引き伸ばされたかのように大きいベッドルーム。
ロイヤルスイートだけあって、使い切れないほどたくさんの部屋がある。
しかし、そのどれにも海神らしき姿はない。
「はー。まだあっちか」
「あっち?」
「気は進まんが、むかえに行こう。サバを置いてぬしも来い」
船霊神は、この部屋で仕事があるから残るという。
ふたりで廊下に出ると、サバオが明らかに関係者用らしきドアを開けた。




