十七時 2
起き上がろうとしたら、晴人に必死で止められた。
「無理ですよ! どうしたんです、急に?」
「最終日の提案会って、どうなった?」
「七星さんがキャンセルしました。戻ってもやらせてもらえないですよ。『パスタを完食したとしても私が止めるべきでした』って言ってました。なんの話かわからないけど」
へなへなと力が抜けていく。
期待に応えられなかった。
あんなにがんばったのに。
こんなにいろんなものを犠牲にしたのに。
自分が最終的にしくじったという事実を受け入れられずに、目を閉じた。
期待してくれた先輩の顔に泥を塗り、味方をしてくれた小夜さんのお膳立てを無駄にして、小馬鹿にしていたはずのみんなの仕事を増やしてしまった。
そして、先輩と店をやるというチャンスもなくなった。
結局、こんなもんだった。
がんばってきたのに、終わるときはあっけない。
これが「しかたない」ってやつなんだな。
気を抜くとぽろっと目からこぼれそうだった。晴人の手前、必死でこらえる。
「僕はいま、付きそいという名のサボりなんですけど、このあとご家族来るそうなので、そしたら交代します」
眠くなったふりをして、目をつぶりながら晴人の説明を聞く。
が、ふと気づいた。
家族は俺が働き始めたころに、遠くに引っ越した。飛行機が必要な距離だから、急に呼び出されても来れないはずだ。
「.....俺、来れる家族いないと思う」
「弟さんとか言ってましたよ」
「弟いない」
「じゃあ誰が来るんです?」
「知らない。急に怖い話始めんなよ」
なにかの間違いかと疑っていると、急にカーテンががばっと開いた。
カーテンの向こうから現れたのは......。




