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横浜元町商店街

開発作業が大詰めで、正直今度にして欲しかったが、新しい店の話となればそうもいかない。


貴重な休日をつぶし、小夜さんと先輩の三人で元町商店街にあるお店に行くことになった。




元町商店街は、かつてノワールがあった場所だ。


もともと外国人むけ商店街としてスタートしたこともあり、異国情緒がただよう高級感のあるストリートになっている。




その商店街の表通りから脇にそれた、少し静かな場所にあるのが開店予定の場所だった。




「表通りじゃないんですね」




案内しますと言って、どんどん商店街から離れていく小夜さんに声をかけた。




「はい。ツテで安く借りれた場所で。長続きさせるためには家賃がすごく重要だから、アクセスには少々目をつぶりました」




でも、とにっこり笑って小夜さんが続ける。




「最初の店がうまくいけば、支店はもっといいところに出す予定です。次は元町商店街の表通りに大きく出したいんですよ!」




店は改装中で、中には入れないという。今日は場所だけ確認して解散しようといわれて、内心ほっとする。


さっさと帰って、自分の作業に戻りたかった。




「すみません、電話が来たみたいで」




開店予定の小さなビルに着いた途端、先輩が言った。少し離れた場所で先輩が話している間、小夜さんとふたりきりになる。




「一新さん、本当に体調悪そうなんですね」


ふたりになった瞬間、待ち構えていたように小夜さんが言った。


「本当にって?」


「七星さんがずっと心配してて。ほら、一新さんって今月から取材に出る予定だったでしょ。でも七星さんが、カメラで追い回すようなことするなって言って、取材が最後の日だけになったんです」




確かに、もともと一週間ほどと言われていた取材がどんどん短くなり、いまは最終日の提案会の前に、少しインタビューを受けるだけと言われていた。




そういうものかと思っていたが、先輩が手を回していたのか。




「この提案会もかなり反対されたんですよ。ずいぶんガードかたいなって思ってたけど、顔色とやせ方見て納得しました」




短期間しか会っていない小夜さんでも、変化がわかるほどなのか。


しばらく鏡すら見ていなくて、気がつくこともできなかった。




「むりしなくていいですよ。ここまでの撮影が順調なので、明日はなくてもなんとか」


「でも、小夜さんの会社の方が来るんですよね?その人たちに覚えてもらわないと、新店舗に推薦するのは難しいって聞いてますけど」


「まあ、そうですね」




否定してはくれなかった。フレンドリーなようでいて、こういうところはドライな人だ。




先輩が戻ってきたので、ふたりともぱたっと話すのをやめた。小夜さんがにっこり笑い、自然なトーンで看板の理想の位置について話し出す。


小夜さんと話したことで、焦りが増した。そのうえ、もうひとつ心配なことがあった。




(新月の晩、日が落ちるまでに神社に来い。)




サバオに指定された日時は、最終日の提案会と同じだった。




どちらに行けばいいのだろう。


このまま味覚が戻らないのはいやだ。でも先輩と店をやるチャンスを失いたくない。味覚がなくても自分はできる。むしろ味覚がない方ができる。




でも、このまま味覚が戻らないのはいやだ。




考えはぐるぐるとめぐり続け、決められないまま、ついにその日になった。

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