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新作

あの夜以降も、俺とサバオは変わらず毎晩、厨房に集まっていた。




サバオはいつも通りだらだらしたり、菓子を食べたりして過ごす。


俺はほとんど口をきかず、感想を求めたり、人手がいるときだけ声をかけた。




気まずいといえば気まずいが、こういうものと思えばやりきれる。


こいつのことは、使えない同僚とでも思えばいい。




新作も、サバオに禁じられたからといってあきらめる気はまったくなかった。むしろ、火がついたとすらいえた。




サバオの協力はのぞめないが、自分ひとりでやればいい。




仕事終わり、深夜〇時を越えるまではサバチョコレートの開発をする。サバオが神社に帰ったら、そこから明け方まで自分ひとりで新作をつくる。




相変わらず味のことはわからなかったが、食感、盛りつけ、構造などはここ何ヶ月かで自分でも成長したと感じていた。そのまま店に出すのはむりでも、提案会向けであればなんとかなる。




サバオ抜きで完成させれば、大きな自信にもなるだろう。




サバチョコレートの方は、さっぱりした味つけの塩サバに、苦みの強いチョコソースをかける炙りサバ料理に落ち着いた。




苦戦しているのはソースのとろみで、口にいれたとき、チョコのなかのミルクをサバの「脂」とかん違いする配合を目指していた。


これなら脂の乗っていないサバでもおいしく食べることができるし、チョコレートならではのアプローチになる。




新作の方は「若鮎」という、魚の形をしたカステラ和菓子をアレンジするつもりだった。毎日魚ばかりなので、こっちもいっそ魚にしてしまえと思ったのだ。




わらびを練り込んだ半透明の生地のなかにチョコレートを入れ、魚の形につつむ。


その魚を、先輩が好きな海の模様の皿に泳がせ、夏の水面を上から見た様子を再現する。




和菓子を作るのが久しぶりで、正直いって苦戦している。けれど、なんとかするしかない。




小夜さんに、オープン予定の店を見に行こうと言われたのは、そんなときのことだった。

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