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海神について

「最近、なんだかぬしは元気がないの」




馬車道の厨房。サバオが木箱の上に寝そべりながら言う。




「お前のせいで三ヶ月まともに食べてないからな。そりゃ元気いっぱいにもなるよ」




サバオが、むーとふくれる。


職場に無関係なサバオは、立場だけみれば相談相手にふさわしい。




しかし俺はこれまでの経験から、こいつに相談しても得られるものはなにもないと断言できた。サバオに、人の感情を理解する才能はない。




ゆえに、こいつには最近の俺の悩みや葛藤をまったく話していなかった。




「そういえばちょうど三日前、ぬしが来なかった日があったろう」




先輩とのディナーの日だ。それ以外はほとんど毎日来ているから、久々にこいつと会わなかった。




「仕事だよ。前日に、多めにお菓子作り置きしといただろ」


「もちろん全部食ったぞ。そうではなくて、久々にひまだったから知り合いの神をまわり、海神殿について調べてきたのじゃ」




海神のタイムリミットが刻一刻と迫っていることをすっかり忘れていた。いや、考えないようにしていたという方が近いかもしれない。


仕事がいくら波乱万丈でも、それはそれとしてサバチョコレートは作らねばならないのだ。




頭を切り替えてサバオを見る。




「どうだった?なんかわかったか?」


「悪い話と、とても悪い話がある。ので、悪い話から聞かせてやろう」




サバオが口をへの字に結び、深刻な顔でこちらをにらむ。




「......」


「.......いや、さっさと話せよ」


「心の準備をさせておった。ぬし、聞く覚悟はできたか?」


「いらん演出しなくていいから、すみやかに話せ」


「では話そう。海神殿は、すこぶる機嫌が悪いらしい」


「はあ」


「とても、非常に、極めて機嫌が悪いとのことだ。海の幸の不漁続きで、おなかが空いているのだという」




子どもかよ。もしかして、神様って全員こいつみたいな感じなのだろうか。




「だから、供えものはかなりの出来栄えが必要じゃ。心してかかれ」


「言われなくてもそのつもりだよ。もうひとつは?」

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