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先輩について

「七星さんとふたりでディナー!?」




身のまわりでもっともまともに相談ができそうな相手、つまり晴人がすっとんきょうな声を出す。




さすがに職場では相談しにくかったので、俺たちは仕事終わりにふたりで横浜の野毛にある飲み屋街にくり出していた。


あやしげな店が並ぶ商店街で、静かなカウンターだけの店を選んだ。




春始めの半端な暑さに、冷えたビールがしみわたる。




「なにをしたらふたりで行くことになるんです!?天変地異?」


「俺にもわからん」


「最近の一新さん、怖いくらい絶好調ですね」


「七星さんとディナーに行くって好調なのか?」


「上司だと思うからですよ。仕事の先入観なしで、七星さんという女性とごはんに行くと考えてください」




むしろ上司と行くのだと思えていないことに問題があったが、晴人は真逆の問題ととらえたらしい。




「あの人はきれいですよ。きれいな人とごはんに行くと考えればいいんです!うわー楽しそうだなあ」


「お前、おもしろがってるよな」


「じゃあ料理人仲間と行くと考えたらどうですか?」


「どうもなにも、それが事実だよ」


「料理人なんて一緒にごはん行ったところで、食材がどうとか、盛りつけがどうとか、そんな話ばっかじゃないですか。色気なんて全然ないです」




確かにそうだ。お互い料理人なのだから、困ったら料理のことを話せばいい。


というか、そういう会話の練習をしに行くのだから、心配することはなにもない。




「あの人、無駄話はしないけど、取材の練習ってことなら料理の話ぐらいはするでしょう。いろいろ置いといても、勉強にはなるんじゃないですか?」


「それはそうかも」


「なんかうらやましくなってきたな。僕も行けるか頼もうかな」


「絶対やめろ」




強い口調で拒否をした。これ以上、話をややこしくしないで欲しい。




「えー。それは七星さんとふたりがいいってことですか?」


「......」




とん、と胸をつかれた気がした。




そうなのか?


俺は、ふたりで行きたいのか?




晴人の軽口にうまく返すことができない。




「え......。一新さん、もしかして本気のやつですか?」


「いや違う!」




あわてて大声を出してしまった。カウンターにいた他のお客さんの視線が俺に集まる。


急いで声を落として言葉を続ける。




「お前を呼ぶか迷ってたんだよ」

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