清風亭ロビー2
「じゃあ、説明も終わったところで、早速このかわいいかき氷をいただきますね!」
小夜さんが三六〇度どこから見ても完璧な笑顔で、新作をぱくぱくと食べ始めた。
「めちゃくちゃおいしい!」
「ありがとうございます」
「メニューになったら絶対、友達と食べに来ますね」
「ありがとうございます」
「盛りつけも最高!写真撮りたくなっちゃいます」
「ありがとうございます」
俺と小夜さんの、褒め言葉とありがとうございますを応酬するだけの会話中、間にはさまれた先輩はずっとすずしい顔で紅茶を飲んでいた。
正直いえば、ストレートにこれだけ褒められて、悪い気がしないわけがない。
真ん中に先輩という大きな重しがなければ、口角はあと四十五度ぐらいあがっていただろう。
食べ終わったあと、小夜さんがこちらを見てにっこり笑った。
「私、実は一新さんのファンなんですよ!だから会えて嬉しいです!」
一瞬、冗談かと思った。が、小夜さんの目はきらきらしている。
嘘を言っている顔ではない。
「ファン?」
「はい!この前、七星さんにタルトの写真を見せてもらって。かわいいし、コンセプトも最高だなって!今日のかき氷も、食べたらすごくおいしいし!私、ファン一号になれました!?」
ガツンと来た。人生で、こんな風にストレートに人から褒められたことはない。
嘘でもお世辞でも嬉しい。
最高じゃないか! ファンだぞ、ファン。
口角が最高点まで急上昇し、急いでうつむいた。先輩が、突如としてなにかに気を取られて向こうをむくことを祈った。
「このかき氷、絶対ラインナップに入れた方がいいですよ!番組にも話通しときます!」
小夜さんはそのあと、取材についてのいくつかの注意事項を教えてくれた。いろいろ言ったあとに、緊張はしなくていいです、編集で全部なんとかなります、と明るく笑った。
「じゃあ私はこれで」
一通りの説明を終えた小夜さんが立ち上がり、つるっとした布の大きなバッグを肩にかける。
そして、ふと、思い出したように声を低めて先輩に言った。




