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チョコミントゼリー

「なにか違うのう」




サバオが、チョコクリームが載ったミントゼリーをほおばりながら、首をかしげる。




「なにかってなんだよ」


「もっと口に残る甘さが欲しい。後味すっきりしすぎなんじゃ」




馬車道駅の例の神宝庫で、俺とサバオは論争を繰り返していた。




神宝庫の中は、大きく様変わりしている。壁には巨大な石をくり抜いて作られたシンクがあり、部屋の真ん中には大理石のひかれたコンロ付きの作業台が置かれている。




ひとりで使えると考えれば、清風亭より快適な厨房といえるだろう。




これを準備したのはサバオだ。当初、ここは火も水もないから俺の家にサバオを呼びつけて調理をするつもりだった。




が、家に来たサバオはひどかった。家にある少しでも甘みのある食材を食べまくり、バターやみりんまで「少し甘みが足りぬ」とのたまいながら舐めつくした。


そのうえゲームなるものをやりたいと騒ぐので、お菓子を消す簡単なパズルゲームをやらせたところ、「なぜ自ら菓子を消さねばならぬのか」と号泣した。




そのあまりの厄介さに、俺は二度とサバオを家に招かないと決意した。


というか、家でなくてもどこにも連れていきたくない。




そういうわけで、適度な調理場が必要になった俺は、馬車道の神宝庫を改修させた。




「知り合いの神連中に頼んだんじゃ」




予想をはるかに上回る立派な調理場が用意されて驚く俺に、サバオが言った。




「火は昔いやがらせから助けたカグヅチが、水は昔いやがらせから助けた弁財天がやってくれて......」


「ずっと思ってたけどさ、神連中ってお互いにいやがらせしすぎじゃないか?」


「いまは人をたたることができんからの。神同士のいやがらせがはやりなんじゃ」




お菓子を禁止されてバナナを持ってくる小学生か。あきれたが、とにかく調理場ができたのはありがたかった。




俺たちの目的は、海神が納得するサバチョコレートを作ること。なのだが、味覚のまったくない俺にクセのあるサバはまだ扱いが難しい。




そのうえ、先輩に新商品を作るという自分の首を締める約束をしてしまった。


だからまずは、サバ以外の食材で練習するという作戦で、最初に選んだのがこの前実験したばかりで俺が味の予想をしやすいチョコミントのデザートだった。




「てっきりサバチョコレートを作るものと思っていたのに」




サバオが不満そうに言う。




「そんなに食べたかったのか?」


「嫌なことは早く終わらせたい主義じゃ」


「嘘つけ!お前、野菜ばっか後回しにしてるだろ」




チョコミントは清涼感があるので、チョコ系のフレーバーでは珍しく夏に向く。好みのわかれる味だがその分インパクトもあるので、うちの新商品にするにはちょうどいいと思っていた。




通常、新商品を作るときはたくさんの味見を重ねる。味だけでなくかおり、食感、のどごしなど確認すべきことはたくさんある。




が、いまの俺はそのチェックをすべてサバオにゆだねないといけない。


甘党のサバオに合わせると甘すぎるのでは? そもそも神と人では好みが違うのでは? こいつに頼るのはなんとなく癪にさわらないか?




開発を進めながらも、俺の中では様々な思いが入り乱れていた。




「もっと、こってりしたチョコレート感が欲しいんじゃがの」


「そういうゲストは最初からチョコケーキとかを頼むんだよ。チョコミントはすっきり感が欲しい人向け」


「でもすっきりもしたいんじゃ!」


「お前、あんなに怒ってたわりにチョコミントのこと気に入ってるよな」


「何度も食べるうちにクセになった。わしはこの味を極めたい」




極めるって、お前食べてるだけじゃねーか。




「あーもう。いっそゼリータルトにでもするか?いまみたいな単なるゼリーじゃむりそうだったから、昨日仕込みだけやっといたんだよ」


「ぬしは腕はともかく、努力だけは怠おこたらんの。よきにはからえ」


「いい加減にしろよお前」

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