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無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第5章 残響の先へ

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第99話 騎士団の系譜

翌朝。


聖教会本部。


王都の朝は早い。


鐘楼から響く鐘の音が街中へ広がっていた。


窓から差し込む陽光の中、ロックは大きく欠伸をする。


「眠ぃ……」


昨夜は考え事が多すぎた。


レオン。


黒剣。


封印。


竜。


情報が増えるほど分からなくなっていく。


セリナも同じらしく、朝から難しい顔をしていた。


「整理しないと頭が追いつかないわ」


リゼはそんな二人を静かに見ている。


そして。


ガルドだけはいつも通りだった。


朝食を黙々と食べている。


ロックが苦笑した。


「ダンナだけ平常運転だな」


ガルドは答えない。


いつものことだった。


***


朝食後。


一行は再び書庫へ呼ばれていた。


昨日の老神官が待っている。


机の上には数冊の資料。


そして一枚の古い写本。


老人は開口一番こう言った。


「昨日の話の続きです」


セリナが頷く。


「レオンについてですか?」


「ええ」


老人は写本を広げる。


そこには紋章が描かれていた。


剣。


翼。


盾。


どこかで見た形。


ロックが眉を上げる。


「またこの紋章か」


最近何度も見ている。


教会の記録。


竜騎士団。


古代資料。


頻繁に登場する。


老人は頷いた。


「これは初代王国騎士団の紋章です」


その言葉に。


ガルドの視線が僅かに動く。


老人は続ける。


「そして」


「現在の王国騎士団紋章の原型でもあります」


ロックが思わずガルドを見る。


ガルドの胸当て。


刻まれた徽章。


確かに似ている。


完全に同じではない。


だが系統は明らかだった。


セリナも気付く。


「つまり……」


老人は頷く。


「現在の騎士団は」


「レオンの騎士団を祖としています」


静寂。


ロックが口笛を吹く。


「なるほどな」


ようやく繋がった。


紋章。


騎士団。


レオン。


ガルド。


全部が一本の線になる。


老人はさらに資料を開く。


そこには歴代団長の一覧が記されていた。


王国騎士団の長い歴史。


数百年分の名前。


その最上段。


最初に記されている名。


> 初代総団長 レオン


ロックが目を見開く。


「マジか」


セリナも驚いていた。


想像以上だった。


ただの英雄ではない。


騎士団そのものの始祖。


それがレオンだった。


老人は微笑む。


「王国では失われつつありますが」


「教会には記録が残っています」


ロックが横を見る。


ガルドは黙っていた。


だが。


ほんの少しだけ目が細くなっている。


珍しい反応だった。


***


さらに資料は続く。


騎士団の変遷。


組織改編。


戦争。


王朝交代。


長い歴史。


その中で紋章は少しずつ形を変えていった。


だが根幹は同じ。


レオンの時代から続いている。


その時だった。


老人が一枚の紙を取り出す。


古い肖像画の写し。


ロックが覗き込む。


「ん?」


そこに描かれていたのは若い騎士だった。


短髪。


鋭い目。


真面目そうな顔。


そして。


どこか見覚えがある。


ロックが瞬きをする。


「似てねぇか?」


セリナも気付いた。


「ええ」


確かに似ている。


誰にか。


数秒後。


二人同時に同じ名前を口にした。


「ライル」


老人が驚く。


「ご存知ですか」


ロックが頷いた。


「知り合いだ」


正確にはガルドの元部下だ。


老人は資料を見る。


「これは約百年前の団長です」


「血筋でしょう」


王国騎士団では珍しくない話だった。


優秀な家系。


代々騎士を輩出する一族。


その一つだったらしい。


ロックが笑う。


「真面目そうな顔まで同じだな」


ガルドも見ていた。


そして。


ぽつりと呟く。


「似ている」


ロックが吹き出した。


「本人も認めた」


セリナも少し笑う。


ガルドがこういう話に参加するのは珍しい。


それだけライルを評価しているのだろう。


***


話が一段落した頃。


老人は最後の資料を取り出した。


それは騎士団史ではなかった。


もっと古い。


劣化した紙片。


そこに書かれていたのは短い文章だった。


> 我らは翼を失っても


> 志を継ぐ


ロックが首を傾げる。


「翼?」


老人は答える。


「竜です」


部屋が静まる。


「竜騎士団が解体された後」


「騎士達は普通の騎士団として存続しました」


「それが現在の王国騎士団です」


セリナがゆっくり頷く。


ようやく理解できた。


竜騎士団。


王国騎士団。


別組織ではない。


同じ流れを汲む存在だったのだ。


老人は資料を閉じる。


「だからこそ」


「レオンの歴史は騎士団の歴史でもあります」


その言葉は重かった。


ガルドは静かに紋章を見る。


レオン。


初代総団長。


竜騎士。


黒剣。


そして自分。


不思議な縁だった。


その時。


遠くから鐘の音が響く。


昼を告げる鐘。


老人が窓を見る。


そして少しだけ表情を変えた。


「……来たようですね」


ロックが首を傾げる。


「誰が?」


老人は微笑んだ。


「あなた方を探していた騎士です」


一瞬の沈黙。


そして。


ロックの顔に笑みが浮かぶ。


「おお」


セリナも気付いた。


王都に来た理由の一つ。


手紙を送ってきた男。


ガルドの元部下。


ライル。


ついに再会の時が近付いていた。

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