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無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第5章 残響の先へ

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第100話 再会

聖教会本部。


昼を告げる鐘の音が王都へ響いていた。


老神官の言葉に、ロックが思わず立ち上がる。


「来たのか」


老人は静かに頷いた。


「先程連絡が入りました」


「騎士団本部からです」


セリナも少し表情を緩める。


ベルンで手紙を受け取ってから数日。


ようやく本人と会えるらしい。


だが。


当のガルドは特に反応を見せなかった。


いつも通りだった。


ロックが呆れた顔になる。


「もうちょっと何かないのかよ」


「……何がだ」


「久しぶりの再会だろ」


「そうか」


「そうだよ」


会話が終わる。


ロックは頭を抱えた。


セリナが苦笑する。


「ガルドらしいわ」


***


聖教会を出ると、騎士団本部から使者が来ていた。


若い騎士だ。


礼儀正しく一礼する。


「ガルド殿ですね」


ガルドが頷く。


「副団長補佐ライル殿がお待ちです」


ロックが口笛を吹く。


「本当に偉くなったんだな」


副団長補佐。


若さを考えれば異例の出世だった。


使者に案内され、一行は騎士団本部へ向かう。


王都中央区。


巨大な石造りの建物。


訓練場。


兵舎。


作戦棟。


かつてガルドも所属していた場所。


門を潜った瞬間だった。


何人かの騎士が動きを止める。


視線が集まる。


黒い鎧。


巨大な黒剣。


噂の男。


誰もが知っている。


だが声は掛けない。


ただ見ていた。


ロックが小声で呟く。


「有名人だな」


ガルドは答えない。


興味も無さそうだった。


***


やがて訓練場脇の応接室へ案内される。


扉が開く。


中には一人の青年騎士が立っていた。


短い茶髪。


引き締まった身体。


鋭い目。


胸には高位騎士の徽章。


ライルだった。


扉が閉まる。


静寂。


数秒。


誰も動かない。


ロックが思わず息を止める。


そして。


先に動いたのはライルだった。


真っ直ぐ歩み寄る。


その目はガルドだけを見ていた。


やがて立ち止まる。


敬礼。


昔と変わらない、綺麗な騎士の敬礼だった。


そして。


「生きていて良かったです」


静かな声。


だが感情が滲んでいた。


ガルドはしばらく黙っていた。


何を言うべきか考えているようだった。


そして。


「……そうか」


ロックが顔を覆う。


「おい」


セリナも思わず吹き出しそうになる。


ライルは真面目な顔のまま頷いた。


「はい」


成立していた。


二人の中では。


ロックだけが納得できない。


「いやいやいや」


「もっとあるだろ」


ライルが首を傾げる。


「何がですか」


「何がって」


ロックは言葉を失う。


久しぶりの再会。


感動。


涙。


そういうものを想像していた。


だが目の前の二人は違う。


ガルドとライルだった。


***


しばらくして席に着く。


お茶が運ばれてきた。


ライルはようやく少し表情を和らげる。


「本当に良かった」


今度は自然な言葉だった。


ガルドは黙って聞いている。


ライルが続ける。


「追放された後、行方が分からなくなりましたから」


部屋が静かになる。


重い話だ。


だが避けては通れない。


ライルは真っ直ぐ言った。


「探していました」


ガルドは少しだけ目を伏せる。


ライルらしい。


諦めない。


昔からそうだった。


訓練でも。


任務でも。


一度決めたことは最後までやる。


「……無事で何よりだ」


ガルドがそう言う。


ライルは一瞬だけ驚いた顔をした。


そして僅かに笑った。


「ありがとうございます」


ロックが横で呟く。


「普通の会話してる……」


セリナも同じことを思っていた。


ガルドにしては珍しい。


それだけ信頼していたのだろう。


***


やがて話は本題へ移る。


ライルの表情が引き締まる。


「実は」


「お伝えしたいことがあります」


空気が変わる。


ロックも真顔になる。


ライルは周囲を確認する。


誰もいない。


扉も閉じられている。


それを確認してから言った。


「最近、騎士団内部で古い記録の調査が行われています」


セリナが反応する。


「レオンですか」


ライルは頷いた。


「はい」


「そして」


そこで言葉を切る。


ガルドを見る。


「隊長の名前も出ています」


沈黙。


ロックが眉をひそめる。


「何でだ?」


ライルも分からないらしい。


首を横に振る。


「詳細は不明です」


「ですが上層部が動いています」


それは聞き捨てならなかった。


ガルドはただの追放騎士。


本来なら調査対象になる理由が無い。


なのに。


レオンの記録と並べられている。


ライルはさらに続けた。


「もう一つあります」


今度は声が低くなる。


「王都周辺で騎士が数名行方不明になっています」


ロックとセリナが顔を見合わせる。


結社。


二人の頭に同じ名前が浮かぶ。


ライルは知らない。


だが。


偶然とは思えなかった。


「隊長」


ライルが真っ直ぐガルドを見る。


昔と同じ目だった。


「嫌な予感がします」


ガルドは短く頷く。


「……そうか」


それだけだった。


だが。


ライルは安心したように息を吐く。


追放されても。


立場が変わっても。


自分にとっての隊長は変わらない。


そう感じていた。


そして。


誰も気付かないまま。


王都の地下では。


結社の第二段階が静かに動き始めていた。

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