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無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第4章 癒えぬもの

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第49話 選択

昼に近づいていた。


だが、部屋の空気は変わらない。


重いまま。


静かなまま。


リゼは再び眠っている。


先ほどの不安定さが嘘のように、今は落ち着いている。


――ガルドが、近くにいる限り。


ロックが壁にもたれながら言う。


「……結論、出てるよな」


誰に向けた言葉でもない。


だが、二人とも分かっている。


セリナは、リゼの髪をそっと撫でながら答える。


「……ええ」


短く。


「このままじゃ、ダメ」


ロックが鼻で笑う。


「だろうな」


一歩、踏み出す。


部屋の中央へ。


「離れられない」


指を一本立てる。


「近づきすぎると、ダンナが削られる」


もう一本。


「あの首の“残り”も消えてない」


三本目。


「つまり」


指を下ろす。


「詰みかけてる」


セリナは否定しない。


できない。


「……だから、治す」


静かに言う。


だが、その声は揺れない。


ロックが目を細める。


「方法は?」


現実的な問い。


セリナは迷わず答える。


「……聖教会」


ロックの眉が上がる。


「教会、か」


セリナは頷く。


「呪いや魔導具の解除なら、あそこが一番可能性が高い」


理屈としては正しい。


だが。


ロックは腕を組む。


「……気に入らねえな」


率直に言う。


セリナが視線を向ける。


「何が?」


ロックは少しだけ言葉を選ぶ。


「……うまく言えねえけどよ」


窓の外を見る。


光。


人の気配。


普通の世界。


「“ああいう場所”って、なんか……」


言葉が止まる。


違和感。


「……噛み合わねえ感じがする」


セリナは一瞬だけ考え、しかし首を振る。


「でも、他に当てはない」


ロックもそれは分かっている。


「……まあな」


小さく息を吐く。


その時。


ガルドが動く。


静かに。


視線が、リゼへ。


そして――その首元へ。


わずかに、眉が動く。


ほんの僅かに。


セリナが気づく。


「……何か分かる?」


ガルドは答えない。


ただ、黒剣にわずかに手をかける。


触れない。


近づけるだけ。


その瞬間。


リゼの首元が、微かに反応する。


光が、揺らぐ。


「……やっぱり」


セリナが呟く。


「完全には切れてない」


ロックが舌打ちする。


「しつこいな……」


ガルドが手を離す。


それ以上は何もしない。


ただ、分かっただけで十分だった。


セリナが立ち上がる。


決意は固まっている。


「……行くわよ」


ロックが顔を上げる。


「もうか?」


セリナは頷く。


「時間がない」


ロックが肩を回す。


「……教会ねえ」


少しだけ苦い顔。


だが。


「まあ、行くしかねえか」


その時。


セリナがリゼを抱き上げる。


軽い。


だが、その身体は不安定で、長く抱えていられる状態ではない。


一歩、踏み出そうとした、その時。


「……良いか」


低い声。


ガルドだった。


セリナが顔を上げる。


ほんの一瞬だけ、視線が交わる。


言葉は、それだけ。


だが、意味は分かる。


セリナは、わずかに迷い――


そして、頷く。


「……お願い」


短く。


ガルドが一歩近づく。


静かに。


リゼを受け取る。


そのまま、背に負う。


抱えるのではなく。


しっかりと支えるように。


その瞬間。


リゼの呼吸が、わずかに安定する。


首元の光も、弱まる。


ロックがそれを見て、小さく息を吐く。


「……やっぱそれが正解か」


ガルドは何も言わない。


ただ、前を見る。


そのまま歩き出す。


セリナは、その背を一瞬だけ見て――


すぐに、後を追った。


ロックも続く。


三人と一人。


外へ。


光の中へ。


港町の喧騒は、遠い。


だが。


彼らの進む先にあるのは――


救いか。


それとも、別の現実か。


まだ、誰にも分からない。


ただ一つ。


選んだ以上、進むしかない。


そして――


その選択は、静かに記録されていた。

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