表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第3章 観測領域

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/55

第40話 対峙

通路の奥。


空気が変わる。


一歩踏み込んだ瞬間、それは明確だった。


重い。


圧ではない。


だが、確実に“何かがある”。


ロックが足を止める。


「……ここ、さっきまでと違うな」


軽口はない。


自然と声が落ちる。


セリナも頷く。


「ええ……」


視線を巡らせる。


壁。


床。


天井。


すべてが同じ石造りのはずなのに――


「……整いすぎてる」


違和感の正体は、それだった。


荒れた跡がない。


戦闘の痕跡も。


魔力の乱れも。


まるで――


最初から“ここだけ”が別の場所のように。


ガルドは止まらない。


そのまま進む。


迷いなく。


ロックが小さく息を吐く。


「……ほんと、遠慮ねえなダンナ」


だが、続く。


セリナも。


三人の足音が、静かに響く。


やがて。


開けた。


広い空間。


中央に、魔法陣。


淡く、安定した光。


そして――


その前に、一人。


立っている。


黒い装束。


細身の男。


微動だにしない。


ただ、そこに“いる”。


ロックが眉をひそめる。


「……あいつか?」


セリナの目が鋭くなる。


「……ええ」


短く。


確信。


男――カイナは、ゆっくりと顔を上げる。


三人を見る。


順に。


観察するように。


そして。


わずかに、視線が止まる。


ガルドに。


「……来たか」


感情のない声。


ただの事実確認のように。


ロックが肩をすくめる。


「お出迎えとは、随分親切だな」


返答はない。


カイナの視線は、ガルドから外れない。


「黒剣」


短く。


それだけで、空気が変わる。


セリナが一歩前に出る。


「妹を返して」


迷いのない言葉。


カイナは、初めて視線を動かす。


セリナへ。


「妹」


繰り返す。


意味をなぞるように。


「……ああ」


わずかに頷く。


「被検体か」


その言葉。


空気が、凍る。


ロックの目が細くなる。


「……おい」


一歩前に出る。


だが、セリナが手で制する。


目は逸らさない。


カイナを見据えたまま。


「リゼよ」


強く。


はっきりと。


名前を告げる。


カイナは、わずかに興味を示す。


「名前があるのか」


その言い方は――


完全に“対象”として見ているものだった。


セリナの指が、わずかに震える。


だが。


声は揺れない。


「返して」


短く。


二度目。


カイナは、答えない。


代わりに。


一歩、動く。


魔法陣の前から。


わずかに、位置をずらす。


「……近いな」


独り言のように。


だが、その視線はガルドに向いている。


「想定より」


ロックが顔をしかめる。


「は?」


カイナは続ける。


「干渉」


「安定化」


「異常値」


断片的な言葉。


だが、それで十分だった。


セリナの目が鋭くなる。


「……あの時のこと、見てたのね」


カイナは否定しない。


「観測はしている」


当然のように。


ロックが舌打ちする。


「趣味悪ぃな」


カイナは無視する。


ガルドを見る。


じっと。


測るように。


「……面白い」


その一言だけが、わずかに感情を含んでいた。


そして。


ゆっくりと、手を上げる。


魔法陣が、応じる。


光が強くなる。


空気が震える。


セリナが構える。


弓に手をかける。


ロックも剣を抜く。


「……来るぞ」


だが。


ガルドは動かない。


ただ、立つ。


黒剣を背負ったまま。


カイナの目が細くなる。


「……抜かないのか」


試すような声。


その瞬間。


空気が変わる。


一気に。


重く。


押し潰すように。


魔力が満ちる。


ロックが歯を食いしばる。


「……っ、なんだこれ……!」


セリナも顔を歪める。


「……圧じゃない……」


違う。


もっと直接的な。


“侵入”に近い何か。


だが――


その中心で。


ガルドだけが、動かない。


一歩。


前に出る。


静かに。


黒剣に手をかける。


そして。


ゆっくりと、引き抜く。


音はない。


だが。


空間が、切れる。


魔力が――


裂ける。


一瞬。


完全な静寂。


カイナの目が、わずかに見開かれる。


「……なるほど」


初めて。


明確な“興味”が乗る。


ガルドは何も言わない。


ただ。


剣を構える。


その姿は、変わらない。


だが。


“何か”が違う。


黒剣が、わずかに軋む。


ドクン――


脈打つ。


カイナが、小さく笑う。


「……いい」


その声は、冷たい。


「回収する価値がある」


セリナが叫ぶ。


「リゼを返して!!」


カイナは答えない。


ただ。


手を下ろす。


その瞬間。


魔法陣が、起動する。


光が爆ぜる。


戦いが――


始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ