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無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第3章 観測領域

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第39話 観測の内側

暗い。


だが、完全な闇ではない。


淡く光る魔法陣が、床一面に広がっている。


その中心。


少女が、横たわっていた。


細い呼吸。


閉じた瞳。


微かに揺れる指先。


――不安定。


その状態を示すように、魔法陣の光が脈打つ。


強く。


弱く。


一定ではない。


「……数値、揺らいでるな」


低い声。


感情は、ほとんどない。


カイナは、少し離れた位置からそれを見ていた。


視線は、少女――リゼへ。


「安定域、逸脱しかけ」


誰に向けるでもなく、呟く。


その言葉に応じるように、空間の奥から声が返る。


「観測済み」


機械のような声。


抑揚がない。


「制御装置、再起動を推奨」


カイナは、わずかに首を振る。


「不要」


即答だった。


「……今はまだ」


その視線が、わずかに細くなる。


「興味深い変化が出てる」


魔法陣の光が、一瞬だけ強くなる。


リゼの体が、びくりと震える。


「……ッ……」


かすかな声。


夢の中で、何かを拒むような。


その瞬間。


魔力が、溢れる。


制御を無視するように。


空間が歪む。


だが――


「……止まったな」


カイナが呟く。


魔力の奔流が、急激に収束する。


何かに押さえ込まれるように。


「外的要因、未確認」


機械音声が即座に返す。


「原因不明」


カイナの口元が、わずかに歪む。


「……分かってるだろ」


独り言のように。


「さっきの“接触”だ」


沈黙。


だが、否定はない。


カイナはゆっくりと歩き出す。


リゼへ近づく。


足音は静かだ。


まるで、この空間自体が音を拒んでいるように。


「完成体に近い」


リゼを見下ろす。


「だが――未完成」


わずかに手をかざす。


魔法陣が反応する。


「制御下では安定」


「外せば暴走」


「だが今回は違う」


少しだけ、間。


「“干渉”で安定した」


それは、あり得ない挙動。


通常なら、外部刺激は不安定要因になる。


だが――逆だった。


「対象、特定必要」


機械音声。


カイナは、ゆっくりと頷く。


「ああ」


「……もう特定はできてる」


その目に、わずかな熱が宿る。


「黒剣の男」


その言葉だけで、空気が変わる。


静かに。


だが確実に。


「観測対象、格上げを提案」


機械音声が続く。


「許可」


即答。


迷いはない。


カイナはリゼから視線を外す。


「……面白くなってきたな」


小さく呟く。


だが、その声に感情はない。


あるのは、ただの興味。


観察者の目。


「回収は?」


機械音声。


カイナは少しだけ考える。


ほんの一瞬。


「保留」


結論は早い。


「今はまだ、泳がせる」


理由は明確だ。


「近づく」


「必ず」


その確信。


「なら、その時に回収すればいい」


合理的。


そして、冷酷。


リゼの指が、わずかに動く。


カイナは一瞥だけする。


「……壊すなよ」


誰に向けた言葉でもない。


だが。


魔法陣が、わずかに強く光る。


応答のように。


そのまま、カイナは背を向ける。


「次の段階に移る」


足音が遠ざかる。


機械音声が最後に告げる。


「観測継続」


「対象、接近中」


「接触予測――」


わずかな間。


「近い」


静寂が戻る。


リゼの呼吸だけが、残る。


だが、その奥で。


何かが、揺れている。


優しい記憶か。


それとも――


壊された何かか。


そして。


その全てを。


“見ているもの”がいる。

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