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無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第3章 観測領域

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第30話 追放の騎士

扉が、軋む。


重く。


閉ざされていたものが、開く音。


ガルドは迷わず中へ入る。


ロックとセリナも続いた。


その瞬間。


空気が変わる。


石の冷たさ。


磨かれた床。


高い天井。


――広間。


ロックが低く呟く。


「……なんだ、ここ」


赤い絨毯。


左右に並ぶ騎士たち。


壁には紋章。


そのすべてが、異様なほど整っている。


「……騎士団……?」


セリナが小さく言う。


その時。


音が響いた。


カツ、カツ、と。


規則正しい足音。


視線の先。


中央に、一人の男が立っている。


黒い鎧。


背を向けたその姿。


ロックの眉が寄る。


「……あいつ」


見覚えがある。


言葉にするより先に、セリナが呟く。


「……ガルド」


今、横にいるガルド。


そして、前にいるガルド。


二つの存在が、重なる。


その時。


低い声が響く。


「ガルド・アイゼン」


広間の奥。


一段高い位置に立つ男。


重厚な鎧。


圧のある声。


「貴様の任務失敗について、報告は受けている」


空気が、張り詰める。


騎士たちの視線が集まる。


その中で。


一人の若い騎士が、わずかに前に出た。


「隊長、それは――」


言いかけた、その瞬間。


ガルドが、わずかに視線を動かす。


ほんの一瞬。


だが。


それだけで、十分だった。


若い騎士の言葉が、止まる。


喉が詰まったように。


歯を食いしばる。


そして――下がる。


ロックの目が見開かれる。


「……おい」


今のは。


偶然じゃない。


セリナも息を呑む。


何も言わない。


だが、理解する。


あの一瞬で。


「……」


ガルドは、何も語らない。


隊長格の男が続ける。


「任務において、貴様は規律を逸脱した」


「結果、対象の取り逃がし及び、部隊の損耗を招いた」


淡々と。


事実だけを並べる。


だが。


それがすべてではないと、分かる空気。


「反論はあるか」


沈黙。


広間に、音がない。


ロックが拳を握る。


「言えよ……」


届かない声。


ガルドは動かない。


否定しない。


視線も上げない。


ただ、受けている。


その姿に。


誰も、何も言えなくなる。


「……ないようだな」


冷たい結論。


「ガルド・アイゼン」


「貴様を、騎士団より追放する」


言葉が落ちる。


重く。


確定したものとして。


ロックが吐き捨てる。


「ふざけんなよ……!」


だが。


届かない。


セリナは、ただ見ている。


あの一瞬。


止めた視線。


それだけが、頭から離れない。


ガルドは、ゆっくりと踵を返す。


振り返らない。


誰も見ない。


ただ、歩く。


その背中は――


静かだった。


ロックが低く言う。


「……なんなんだよ、それ」


怒り。


苛立ち。


だが。


それ以上に。


分からない。


なぜ何も言わないのか。


なぜ受け入れるのか。


セリナは答えない。


ただ、見ていた。


その背中を。


景色が揺らぐ。


騎士たちが滲む。


広間が崩れる。


次の場面が、浮かび上がる。


ガルドの足が動く。


追うように。


あの背中を。


黒剣が、静かに脈打つ。


導くように。


――まだ、終わっていない。

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