表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第3章 観測領域

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/61

第29話 黒の呼応

通路の空気が、重くなる。


ロックが顔をしかめた。


「……なんだよ、これ」


ただの圧迫感じゃない。


空気そのものが、濁っているような感覚。


セリナも足を止める。


「……変」


短く、そう言った。


魔力とも違う。


だが確かに、“何か”が満ちている。


その時だった。


カタ、と。


小さな音が鳴る。


ガルドの背。


黒剣が、震えた。


ロックの視線が向く。


「……おい」


次の瞬間。


ドクン。


黒剣が、脈打つ。


まるで、生きているように。


ガルドの手が、柄に触れる。


抜かない。


だが――離さない。


その瞬間。


視界が、歪んだ。


通路が、消える。


「――は?」


ロックが声を漏らす。


そこにあったのは、石の通路ではなかった。


焼けた大地。


崩れた建物。


空は濁り、灰が舞う。


「……外、か?」


ロックが低く呟く。


だが。


風の感触が、ない。


匂いも、曖昧だ。


セリナが目を細める。


「……違う」


弓を構えたまま、周囲を見る。


「これ……何か、重なってる」


現実じゃない。


だが、幻でもない。


その中途半端な“存在感”。


ロックが舌打ちする。


「気味悪ぃな……」


その時。


黒剣が、強く鳴る。


ドン、と。


心臓を叩くような衝撃。


ガルドの視線が、前を捉える。


遠く。


崩れた岩の向こう。


何かが、いる。


ゆっくりと、動く影。


巨大な翼。


長い尾。


ロックの喉が鳴る。


「……おい、嘘だろ……」


セリナも息を呑む。


「……あれ……」


言葉にならない。


それは――


“竜”。


だが、どこか曖昧だった。


輪郭が揺らいでいる。


はっきり見えているのに、確かじゃない。


まるで。


“映っている”だけの存在。


だが。


その圧だけは、本物だった。


ガルドは動かない。


ただ、その影を見ている。


黒剣が、応えるように脈打つ。


一度。


二度。


強く。


深く。


呼応するように。


その時。


竜の首が、ゆっくりと動いた。


こちらを向く。


目が合う。


――瞬間。


空気が凍りつく。


ロックが叫ぶ。


「来るぞッ!」


だが。


竜は、動かない。


ただ、見ている。


ガルドを。


まっすぐに。


敵意はない。


だが。


試すような、圧。


ガルドは、一歩も引かない。


剣も抜かない。


ただ、見返す。


沈黙。


重い時間。


その中で。


黒剣が、さらに強く鳴る。


まるで――


“応じる”ように。


次の瞬間。


世界が、崩れる。


音もなく。


景色が砕ける。


焼けた大地が消え。


通路が戻る。


「……っ!」


ロックが息を吐く。


「なんだよ、今の……!」


セリナも言葉を失っている。


だが。


ガルドは。


変わらず、前を見ていた。


ただ一つ。


違っていたのは。


その手。


黒剣の柄を、強く握っている。


――――――


『……対象、ロスト』


無機質な声が響く。


『視認不能』


『位置情報、消失』


沈黙。


わずかにノイズが混じる。


『……干渉を確認』


『領域外』


『追跡不能』


初めての事態。


『記録不能』


その言葉だけが、静かに残る。


――――――


通路の奥。


今まで存在しなかった扉が、現れる。


黒く。


重く。


どこか、歪んでいる。


ロックが低く言う。


「……こんなの、あったか?」


セリナは首を振る。


「……ない」


ガルドは迷わない。


その扉へ向かう。


黒剣が、静かに鳴る。


導くように。


呼ぶように―――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ