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無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第3章 観測領域

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第27話 歪む境界

通路は、変わらず続いていた。


だが――


何かが、違っていた。


ロックが歩きながら、壁に視線を向ける。


「……さっきより、マシか?」


ぽつりと呟く。


セリナが首を傾げる。


「何が?」


「“ズレてる感じ”だよ」


言葉を探しながら続ける。


「さっきまでは、どこ歩いても同じに見えてたのに……」


周囲を見回す。


「今は、少しだけ違いが分かる」


セリナも目を閉じ、魔力を探る。


「……ええ」


頷く。


「完全じゃないけど……薄れてる」


あの“導線の歪み”。


それが弱まっている。


「戻ってきてるのか?」


ロックが聞く。


セリナは首を振る。


「違う」


視線を前へ向ける。


「……押し返してる」


ロックも同じ方向を見る。


ガルド。


何も言わず、ただ歩いている。


だが――


その背中の先。


一瞬だけ。


“違うもの”が見えた。


「……?」


ロックが目を細める。


だが、すぐに消える。


見間違いか。


そう思うしかない。


その時。


空間が揺れた。


「来る!」


セリナが声を上げる。


通路の奥に、光の裂け目。


魔法が発動する。


今度は強い。


「今度は消えねぇぞ!」


ロックが剣を抜く。


だが。


その瞬間。


ガルドが、一歩踏み出した。


ただ、それだけ。


――次の瞬間。


裂け目が、歪む。


「……?」


セリナの声が止まる。


光が、不安定に揺れる。


まるで、形を保てなくなったように。


魔法陣が、軋む。


音はない。


だが確かに、“崩れている”。


「……崩れてる?」


ロックが低く呟く。


裂け目の縁が、ほどける。


光が、散る。


維持できない。


存在を保てない。


そして――


静かに、消えた。


何も起きなかったかのように。


痕跡すら残さず。


「……は?」


ロックが間の抜けた声を出す。


セリナも、言葉を失う。


今のは。


防いだのではない。


弾いたのでもない。


「……成立、してない」


セリナが、ようやく絞り出す。


その直後だった。


ガルドが、さらに一歩踏み出す。


――その時。


ガルドの視界が、変わる。


通路の壁。


その奥に。


“道”が見えた。


石の向こう側。


本来なら存在しないはずの空間。


だが。


確かに、そこにある。


何の迷いもなく。


ガルドは、そちらへ歩く。


壁へ向かって。


ロックが目を見開く。


「おい!?」


ぶつかる。


そう思った。


だが。


ガルドの身体は、そのまま“抜けた”。


「……は?」


ロックの声が止まる。


セリナも息を呑む。


「……今」


言葉が出ない。


壁は、そこにある。


だが。


ガルドは、その向こうにいる。


振り返りもしない。


ただ、先へ進んでいる。


ロックが思わず笑う。


「いやいや……」


理解が追いつかない。


「壁、抜けたぞ?」


セリナは壁に触れる。


確かに、固い。


何も変わらない。


だが。


目を凝らす。


すると――


「……揺れてる」


ほんのわずかに。


空間が、歪んでいる。


完全な壁ではない。


「……行ける」


セリナが呟く。


ロックが苦笑する。


「マジかよ……」


覚悟を決める。


「行くぞ」


二人も、その“壁”へ踏み込む。


瞬間。


景色が変わる。


先ほどまでの通路とは違う。


少しだけ広い空間。


そして。


その先を歩く、背中。


ガルド。


まるで。


最初から知っていたかのように。


迷いなく進んでいる。


ロックが息を吐く。


「……なんなんだよ、あのダンナ」


セリナは答えない。


ただ、その背中を見る。


「……道が、見えてる」


小さく呟く。


自分たちには見えないものが。


あの人には見えている。


その時だった。


鞘の中。


黒が、脈打つ。


それは、応じている。


この空間に。


この歪みに。


まるで。


“元から知っている”かのように。


――――――


『……構造干渉、確認』


音声が、淡々と記録する。


『対象、隠蔽層を認識・突破』


わずかな間。


『視認領域、通常個体と不一致』


初めての評価。


『……認識差異あり』


そして。


『観測優先度、引き上げ』


音が途切れる。


その意味は明確だった。


“ただの異常”ではない。


“構造を逸脱する存在”


として、認識された。


――――――


通路は続く。


だが。


もはや、それは迷路ではない。


ガルドの前には。


“道”があった。


そして。


その道の先で。


何かが、待っている。

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