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無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第3章 観測領域

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第26話 黒き残響

三人は、無言で進んでいた。


先ほどまでの焦りはない。


だが、決して落ち着いているわけでもない。


追うべき導線は、断たれた。


だから今は、ただ進むしかない。


その静けさが、かえって異様だった。


「……静かすぎねぇか」


ロックがぽつりと呟く。


足音が、やけに小さい。


いや――違う。


響いていない。


石造りの通路なら、本来は反響するはずの音が、どこかに吸われている。


「音だけじゃないわ」


セリナも足を止めずに言う。


「魔力も……変」


ロックが横目で見る。


「変ってのは?」


セリナは少し考え、言葉を探す。


「あるのに……届かない」


その表現は曖昧だった。


だが、本人にはそれ以上の言いようがない。


「消えてるわけじゃないの」


「でも、感じ取れない」


指先を軽く動かす。


普段なら、周囲の魔力はもっと自然に流れ込んでくる。


呼吸のように。


だが今は。


まるで、そこだけ空白になっているような。


「……気味悪いな」


ロックが小さく息を吐く。


その時だった。


わずかに、空気が震えた。


セリナが反応する。


「来る――」


瞬間。


通路の奥に、淡い光が生まれた。


魔法陣。


小さく、だが明確に発動する。


「トラップか!」


ロックが構える。


だが。


次の瞬間。


光が、消えた。


弾けたわけでも、砕けたわけでもない。


ただ。


「……消えた?」


セリナが呟く。


あり得ない現象だった。


発動した魔法は、途中で止まらない。


最低限の効果は発現するはずだ。


だが今のそれは。


「……発動してない?」


ロックが眉をひそめる。


「いや、してた」


セリナは首を振る。


「確かに、起動した」


「でも……」


言葉が続かない。


説明がつかない。


その時。


ロックの視線が、横へ流れる。


ガルド。


何も言わず、ただ前を歩いている。


変わらない。


いつも通り。


だが――


「……おい」


ロックが小さく呼ぶ。


「なんだよ、これ」


セリナも、気づく。


ガルドの周囲だけ。


静かだった。


あまりにも。


空気が、揺れていない。


魔力が、寄ってこない。


まるでそこだけ。


「……空いてる」


セリナが呟く。


空白。


そうとしか表現できない。


ロックが苦く笑う。


「さっきの魔法……」


視線をガルドに向けたまま言う。


「このダンナの近くで、消えたんじゃねぇか?」


セリナは否定しない。


できなかった。


理屈では説明できない。


だが。


現象としては、それしかない。


ガルドは、変わらず歩く。


何も知らないように。


何も感じていないように。


ただ、前へ。


その背中を見ながら、セリナは息を整える。


(……この人は)


何なのか。


言葉にはならない。


だが。


確実に。


「普通じゃない」


小さく、そう呟いた。


その時だった。


ガルドの腰。


鞘の中で。


わずかに、何かが揺れた。


音ではない。


振動でもない。


だが、確かに。


“そこにあるもの”が、反応した。


まるで。


何かに呼応するように。


ロックは気づかない。


セリナも、まだ気づかない。


ただ一人。


ガルドだけが。


ほんの一瞬だけ。


足を止めた。


だが、それもすぐに消える。


何も言わず。


再び歩き出す。


その奥で――


微かに。


黒が、脈打っていた。


――――――


『……干渉、消失』


無機質な声が、記録を読み上げる。


『対象周囲において、魔術式の維持を確認できず』


『原因不明』


わずかな沈黙。


そして。


『反応空白域、継続中』


『観測対象として記録』


音は、それ以上続かない。


ただ。


静かに。


“異常”だけが、積み上げられていく。


――――――


通路は続く。


先は、まだ見えない。


だが。


何かが、確実に変わり始めていた。


それは、まだ小さい。


だが確実に。


この先の流れを――


歪める。

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