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無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第3章 観測領域

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第24話 干渉の兆し 

通路は、静かだった。


あまりにも。


ロックが眉をひそめる。


「……さっきまでと違うな」


敵が出ない。


罠もない。


あの“選別の部屋”以降、何も起きていない。


静かすぎる。


セリナも同じ違和感を抱いていた。


「……誘導されてる」


小さく、呟く。


偶然じゃない。


この道は――


「“進ませてる”」


ガルドは何も言わない。


ただ、歩く。


変わらない。


その背中だけが、唯一の確かなものだった。


やがて。


通路の先に、広い空間が見えてくる。


扉はない。


遮るものもない。


ただ、ぽっかりと開けている。


ロックが立ち止まる。


「……また、かよ」


警戒は解かない。


だが、足は止めない。


三人はそのまま中へ入る。


――その瞬間。


“音”が消えた。


足音が消える。


衣擦れも消える。


呼吸の気配さえ、薄れる。


「……っ?」


ロックが口を開く。


だが、声が出ない。


出ているはずなのに。


聞こえない。


セリナも同じだった。


言葉が、届かない。


空間に、吸われている。


いや。


“切り離されている”。


その時。


床に、淡い光が浮かぶ。


円。


魔法陣。


だが、これまでのものとは違う。


複雑ではない。


むしろ単純。


線が、少ない。


最小限。


「――――」


音はない。


だが。


“何か”が、直接頭に触れる。


言葉ではない。


意味だけが、流れ込む。


――停止


ロックの足が止まる。


意図していない。


勝手に、止まる。


「……なんだよ、これ……!」


声にならない声。


身体が重い。


動かない。


セリナも同じだった。


指先が、わずかに震えるだけ。


弓も引けない。


完全な拘束ではない。


だが。


“許可されていない”。


そんな感覚。


その中で。


ガルドだけが、動く。


止まらない。


一歩。


また一歩。


魔法陣の中心へ向かっていく。


「――――」


再び、“意味”が流れ込む。


今度は、はっきりと。


――対象、確認


――接触、開始


空間が、わずかに歪む。


目に見えない何かが、ガルドの周囲に集まる。


触れる。


探る。


測ろうとする。


だが。


「……?」


わずかに、ズレる。


触れているはずなのに。


掴めない。


定義できない。


その瞬間。


空間が、軋んだ。


微かに。


ほんの一瞬だけ。


魔法陣の光が、乱れる。


――干渉、検知


意味が、流れる。


だが。


その直後。


――不安定


初めて。


“想定外”が混じる。


ロックの拘束が、わずかに緩む。


「……動ける……?」


完全ではない。


だが、さっきより動く。


セリナも同じだった。


「……何かが……ズレてる」


視線は、ガルドへ。


中心にいる。


ただ、立っているだけ。


何もしていない。


それなのに。


空間の方が、揺らいでいる。


――再調整


意味が流れる。


魔法陣の光が強くなる。


押さえ込もうとする。


均そうとする。


その時。


ガルドの背の剣が、わずかに揺れた。


黒い。


光を吸うような刃。


それに呼応するように。


空間の歪みが、広がる。


――干渉増大


――原因、未特定


“焦り”に似た何かが、混じる。


ロックが歯を食いしばる。


「……ダンナ、何してんだよ……」


だが。


分かっている。


何もしていない。


ただ、そこにいるだけだ。


それだけで。


壊れていく。


セリナが小さく息を呑む。


「……この人が」


言葉にならない。


理解が、追いつかない。


ただ一つ。


確かなこと。


「……触れられない」


観測されているのに。


干渉されているのに。


届いていない。


その瞬間。


空間が、弾けた。


光が散る。


魔法陣が崩れる。


拘束が、一気に消える。


ロックが前に踏み出す。


「っ、戻った……!」


セリナもすぐに構え直す。


だが。


もう、何も起きない。


静寂だけが残る。


さっきまでの“何か”は、消えていた。


完全に。


ロックが周囲を睨む。


「……終わりか?」


返答はない。


当然だ。


だが。


セリナは違った。


ゆっくりと、呟く。


「……違う」


終わっていない。


「……“見られた”」


それだけ。


確信だけが残る。


ガルドは何も言わない。


すでに、次へ向かって歩き出している。


止まらない。


ロックが苦笑する。


「……ほんと、なんなんだよあんたは」


だが、その背中を追う。


セリナも、続く。


三人は進む。


さらに深くへ。


今度は。


“触れられた”まま。


その先に何が待つか。


まだ、誰も知らない。

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