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無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第3章 観測領域

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第23話 観測記録

光は、存在しない。


だが、暗闇でもない。


そこには、何もないはずだった。


空間という概念すら、定義されていない。


にもかかわらず。


“情報”だけが、浮かんでいる。


線。


点。


断片。


それらが意味を持つ前に、結びつき。


意味を持った瞬間に、分解される。


繰り返し。


絶え間なく。


――観測は、続いている。


「……取得」


声がした。


どこからでもない。


誰のものでもない。


ただ、“記録された音”が再生されているような声。


「第七区画。選別工程」


わずかに間が空く。


「完了」


三つの輪郭が浮かぶ。


形は人間に似ている。


だが、正確ではない。


歪んでいる。


揺れている。


安定していない。


「個体、三」


一つの輪郭が、引き伸ばされる。


細かく分解される。


動き。


呼吸。


視線。


反応。


それらが、時間ごとに切り分けられる。


「反応、取得」


「分類」


「再構成」


声は重なる。


一つではない。


だが、区別もできない。


「個体一」


輪郭が固定される。


「選択――他者」


「再現性、高」


「適合」


次。


「個体二」


同じ処理。


同じ速度。


同じように。


「選択――他者」


「適合」


わずかに。


空間が“満たされる”。


だが、それは満足ではない。


ただ、予定通りというだけ。


そして。


最後。


「個体――」


一瞬。


止まる。


ほんの、わずか。


だが、確かに。


「……未取得」


輪郭が、崩れる。


形を保てない。


定義が、揺らぐ。


「反応――不明」


「選択――不在」


「記録――不可能」


声が、重なる。


増える。


だが、どれも同じ。


「再試行」


線が集まる。


無理やり、形を作ろうとする。


だが。


崩れる。


何度でも。


同じように。


「……取得不能」


結論。


その瞬間。


空間の奥で、何かが“こちらを見た”。


視線ではない。


認識でもない。


だが、確かに。


「――例外」


初めて。


“言葉”が意味を持った。


それまでの音とは違う。


ほんのわずかに。


“意思”が混じる。


「定義外」


「観測外」


「……干渉あり」


別の記録が、引き出される。


乱雑に。


無理やり。


「対象――実験体」


少女の輪郭。


静止している。


呼吸だけが、ある。


「安定状態――外部依存」


「制御下でのみ維持」


次の瞬間。


映像が歪む。


乱れる。


ノイズ。


その中で。


一つの影が、重なる。


「……接近」


少女の輪郭が、揺れる。


崩れるはずの形が。


「……保持」


「……安定」


声が、わずかにずれる。


同時ではない。


ほんの少し。


遅れる。


「因子、不明」


「関連性、未定義」


黒い線が浮かぶ。


長く。


歪んだ形。


「識別――不可」


それは、剣。


だが。


剣として処理されない。


「……対象個体」


再び、輪郭。


だが、やはり。


固定できない。


見るたびに、違う。


形が変わる。


位置がずれる。


存在が、安定しない。


「観測不能」


「――にも関わらず」


わずかな、間。


「影響あり」


空間が、わずかに沈む。


何かが、沈み込むように。


「優先度、変更」


淡々と。


だが、確定的に。


「対象個体、継続観測」


「実験体――利用」


少女の輪郭が、わずかに引き寄せられる。


引かれる。


意志はない。


抵抗もない。


ただ。


“配置される”。


「回収――不要」


「誘導――開始」


光が、組み替わる。


道が作られる。


意図的に。


だが、それは見えない。


当事者には。


「……観る」


最後の声。


それは、他と違った。


記録でも、処理でもない。


「どこまで、壊れないか」


その言葉だけが。


わずかに。


“意味”を持っていた。


そして。


すべてが、消える。


何もなかったかのように。


だが、観測は終わっていない。


むしろ。


ここからが、始まりだった。

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