表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第5章 残響の先へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/126

第108話 第二段階

王都地下。


結社潜伏拠点。


白い石壁に囲まれた観測室。


静寂の中、淡く光る観測水晶だけが部屋を照らしていた。


カイナは水晶へ視線を向ける。


その中には幾つもの光点。


対象者達の現在位置が静かに映し出されている。


一人の観測者が前へ進み、一礼した。


「報告します。」


「対象ガルド一行。」


「聖教会地下保管庫にて、レオン関連記録との接触を確認。」


カイナは何も言わない。


観測者は続ける。


「記録内容は断片。」


「黒剣保持者への警告文。」


「竜域への誘導を確認しました。」


部屋が静まる。


別の観測者が口を開く。


「回収命令を出しますか。」


カイナは首を横に振った。


「不要です。」


短い返答。


「対象は既に記録へ辿り着いています。」


「今さら奪う意味はありません。」


「それよりも。」


視線が水晶へ向く。


「次です。」


***


机の上へ古びた羊皮紙が広げられる。


王国全域の古地図。


その上には幾つか赤い印が付けられていた。


「レオン記録保管候補。」


観測者が説明を始める。


「聖教会。」


「騎士団。」


「王立図書館。」


「北方監視砦跡。」


「そして。」


指が最後の印へ止まる。


「封印礼拝堂跡。」


カイナは静かに眺める。


「根拠は。」


「過去の断片記録です。」


観測者が一枚の資料を差し出す。


そこには古い文字。


一部しか読めない。


だが、一文だけ判読できていた。


『最後の祈りは翼の眠る場所へ』


部屋が静まり返る。


誰にも意味は分からない。


だが。


レオンの記録と一致する可能性が高い。


「調査部隊を。」


カイナが静かに命じる。


「記録の有無だけ確認。」


「対象との接触は禁止。」


「観測を優先します。」


「了解。」


数人の観測者が部屋を後にする。


***


部屋に残ったのはカイナだけだった。


観測水晶を見つめる。


ガルド。


セリナ。


リゼ。


ロック。


四つの光。


その中で一つだけ。


ほんの一瞬。


青白い光に微かな揺らぎが走る。


ロックだった。


「……。」


カイナは再観測を指示する。


魔法陣が展開される。


光が安定する。


異常なし。


再び普通の冒険者として表示される。


『対象ロック』


『危険度:低』


『観測継続』


カイナは小さく頷く。


「問題ありません。」


誰も気付かない。


あの一瞬の揺らぎを。


それは観測誤差。


その程度にしか認識されなかった。


***


その頃。


聖教会本部。


客室。


ライルは一人、騎士団から運ばれてきた古い目録を確認していた。


封印書庫。


閲覧禁止文書。


年代不明。


数百年前の記録。


その中に、一冊だけ気になる項目がある。


『北方遠征報告』


著者名。


――レオン・ヴァルハイト。


ライルは目を見開いた。


「まだ……残っていたのか。」


急いでページをめくる。


だが。


中身は空だった。


全て切り取られている。


残されていたのは最後の一枚だけ。


そこには乱れた文字で一言だけ記されていた。


『約束は果たされる』


ライルは眉をひそめる。


誰との約束なのか。


何を果たすのか。


何も分からない。


だが、その一文だけは誰にも消されず残されていた。


***


同じ頃。


聖教会の中庭。


ロックは木陰に寝転がり、青空を眺めていた。


「王都も疲れるなぁ。」


のんびりした声。


その隣ではリゼが花壇の花を見ている。


少しずつ笑顔が増えていた。


セリナはそんな妹を見て微笑む。


ガルドは少し離れた場所で黒剣を背負ったまま立っていた。


誰も話さない。


穏やかな時間だった。


その時。


空に一つの影が横切る。


ロックが目を細める。


「……またか。」


蒼い鱗。


大きくなった翼。


子ドラゴンだった。


以前よりも一回り成長した姿で、王都の上空を静かに旋回している。


しかし今回は降りてこない。


ただ。


一度だけガルドの方を見た。


そして。


北へ向かって飛び去っていく。


ガルドは黙ってその姿を見送る。


セリナが小さく呟いた。


「……急いでいるみたい。」


ロックも頷く。


「何かあったのかもな。」


誰にも理由は分からない。


だが。


竜もまた。


北へ向かっていた。


その先にある真実へ導くように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ