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無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第5章 残響の先へ

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第104話 封鎖された記録

刻印が光った。


ほんの一瞬。


だが、その場にいた全員が確かに見た。


静寂が落ちる。


ロックが口を開いた。


「今の……見間違いじゃねえよな?」


セリナも頷く。


「ええ」


「確かに反応した」


ライルは困惑した表情で壁を見つめていた。


「こんな場所があったなんて……」


王都騎士団も把握していない場所。


それだけでも異常だった。


ガルドは壁に手を当てたまま動かない。


黒剣も静かだった。


だが、何かがある。


それだけは確信できた。


セリナが壁を観察する。


刻印は古い。


だが風化が少ない。


まるで意図的に隠されていたようだった。


「これ……」


指でなぞる。


「エルフの術式じゃない」


「聖教会とも違う」


ライルが眉をひそめる。


「王都の魔導技術でもありません」


「少なくとも僕は見たことがない」


ロックが肩をすくめた。


「つまり全部違うってことか」


誰も否定できない。


リゼは壁を見つめていた。


不安そうな表情。


小さく震えている。


セリナが隣に立つ。


「大丈夫?」


リゼは少しだけ頷いた。


「……同じだった」


「施設の中と」


セリナの目が細くなる。


やはり結社。


少なくとも繋がりはある。


だが結社の施設にしては違和感があった。


地下施設はもっと無機質だった。


この刻印は古い。


もっと昔から存在しているように見える。


まるで。


結社が作ったのではなく。


利用しているかのように。


その時だった。


カチリ。


小さな音。


全員が振り返る。


音は壁の奥から聞こえた。


ロックが剣に手を掛ける。


「今の聞いたか?」


ライルも頷く。


次の瞬間。


壁の一部が僅かに沈み込んだ。


石が動く。


重い音。


長い年月閉ざされていた何かが開く音だった。


セリナが目を見開く。


「隠し扉……」


壁の奥に細い通路が現れる。


暗闇。


冷たい空気が流れ出てきた。


ライルの顔色が変わる。


「王都の地図にこんな場所はありません」


当然だろう。


存在自体が隠されていたのだから。


ロックが覗き込む。


「入るしかないな」


セリナも異論はなかった。


ここまで来て引き返す理由がない。


だが。


ライルだけが少し迷う。


「本来なら応援を呼ぶべきです」


正論だった。


未知の施設。


騎士団案件。


勝手に進むべきではない。


だが。


ガルドは既に通路へ足を踏み入れていた。


ロックが苦笑する。


「決まったな」


セリナもため息をつく。


「そうね」


ライルは額を押さえた。


「隊長殿はいつもこうなんですか?」


「だいたい」


「だいたいだな」


ロックとセリナの答えが重なった。


ライルは諦めたように息を吐く。


「……行きましょう」


通路は短かった。


数十歩。


やがて小部屋へ辿り着く。


意外なほど小さい空間だった。


研究施設ではない。


礼拝堂でもない。


記録保管庫。


そんな印象を受ける。


石棚が並んでいる。


古びた書物。


封印された箱。


埃は積もっているが、荒らされた形跡はない。


ロックが辺りを見回す。


「誰もいねえな」


セリナは石棚へ近づいた。


並ぶ書物を確認する。


そして。


一冊を手に取った瞬間。


表情が変わった。


「これ……」


ライルも横から覗き込む。


本の表紙。


そこには古い紋章が刻まれていた。


王都騎士団。


だが現行のものではない。


数百年前の紋章だった。


「そんな……」


ライルの声が震える。


さらにページを開く。


中には名前が並んでいた。


記録。


報告書。


任務記録。


そして。


最後のページ。


そこに書かれていた名前を見た瞬間。


ライルが息を呑む。


セリナも目を見開く。


ロックは首を傾げる。


「なんだ?」


ライルがかすれた声で呟いた。


「レオン……」


静寂。


ガルドもその名を見つめる。


レオン・ヴァルハイト。


かつての英雄。


歴史から消された男。


その記録が。


今、自分たちの目の前にあった。


だが。


それ以上に異常だったのは。


その記録の最後に残されていた一文だった。


『黒き剣を継ぐ者へ』


誰かが。


未来へ向けて残した言葉だった。

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