冬の花火大会
「起きろー」
体を軽く揺らされて目を開けると可愛らしい女の子が目の前にいた。
よく見ると先輩だった。
起きて先輩が目の前にいた事なんてなかったから最高の気分だ。
つい口元が緩んでしまうと先輩が軽蔑したような目で「何ニヤニヤしてんの?」と言われた。
そんな先輩の顔を見てもっと口元が緩んでしまう。
別にそういう趣味はないんだけどな。
先輩が手を引いてくれて一緒にバスを降りる。
「まだ眠かったりする?」
優しい目でこっちを見てくる。
かわいい、、。
今日それしか思ってない。
「大丈夫です、ありがとうございます」
そうは答えたがまだ他所の眠気は残ってる。
先輩と繋いでいない方の手で目を擦る。
意識がまだはっきりしない。
繋いでる手を見ると恋人繋ぎではなかったけど小さい手が私の手を包み込むようにつないでくれてる。
はっきりしないながら先輩が繋いでくれてる強さよりもっと強く繋いで少し先輩の前に出て言う。
「行きますよ!先輩」
先輩の手を引いて走り出す。
髪が崩れるかもしれないけど今はそんなの関係ない。
「お前道知らねえだろ!!!」
そう叫びながら先輩も私と一緒に走った。
「ちょっと遠回りしちゃったじゃないですか〜?」
席取りは特に問題なくできた。
それはよかった、それは良かったけど
「誰せいだろうね?」
体力ない癖に無理やり走らさせたため、まだ息が荒い。
息を吸うたびに肩が動いてる。
「大丈夫ですか?w」
そんな自分を見て少しバカにしたような顔で見てくるこいつにイラつきを覚える。
「あー、まじ全部お前のせい」
イラつき隠さずに叫ぶように言う。
「あつい、、」
走ったり、叫んだりして体温が上がったようだ。
髪を下ろしてるせいで首に熱が貯まった。
髪と首の間に腕を差し込み、髪を持ち上げる。
そんな自分を見て後輩は隣から自分の後ろに移動して、自分が持ち上げていた髪をその高さのまま持った。
「先輩、くし持ってます?」
少しバッグの中を探るとすぐに見つけることができた。
「はい」
素直に渡すと後輩は自分の長い髪を解き始めた。
「先輩、、髪サラサラしてますね」
女子は意識している相手に髪を触られるドキドキするという。
それが今まさに起こっている。
くしや手で髪を解かされるだけで何段階も顔が赤くなる。
こいつが後ろにいてよかったと心の底から喜んだ。
どんな髪型にしてくれるのかなと心臓をドキドキさせながら待っていると後ろから手が伸びてきた。
「ゴムください」
「はい」
早くこの状態を終わらせたくてすぐにゴムを差し出す。
「ありがとうございまーす」
後輩はゴムを受け取って慣れた手つきで結んでいく。
こいつ自体は髪が短いくせに誰で覚えたんだろう。
少しモヤモヤが広がったが「できましたよ!」っと笑顔でスマホのカメラを向けてくるこいつに不満持った顔を見せないように直し、ホーズを決めた。
まぁポーズって言ってもただのピースなんだけどね。
取った写真を見てニヤついている後輩を見てまた引く。
「見して」
後輩のスマホに手を伸ばすとすんなり見してくれた。
「お団子?」
「そうなんですよ〜、めっちゃ可愛くないですか?」
「まぁ自分のビジュがいいのは確定だしね」
「今日も絶対的自信ですね!」
「引いた?w」
少し笑いながら聞いてみた。
「そんな事で引いてたら一緒にいませんよ」
自分の顔に合わせるように笑顔を作った。
後輩はもう一度自分のとなりに座り直した。
「てか、いつ始まるんですか?」
「もうちょい、、、だと思うよ」
時間を確認すると20時前だった。
来るかなって思って上を見る。
するとちょうどよく、ドンッと花火が打ち上がった。
成長していくうちに好きな物、嫌いなものがはっきりしなくなるという。
でもはっきり言える花火は好きだ。
簡単に言うとキレイだから。
彩花みたいな厨二病構文で好きな理由を考えると偽りがないから。
まぁ花火が好きっていうのははっきりしてるけどなんで好きか、何が好きかはうまく言葉にできない。
花火を横目にふと後輩の方を見る。
「消えちゃいそう」
光に照らされる後輩の顔は触れたら消えちゃいそうな、空気のような、雫のような、そんな顔をしていた。
興味本位で後輩の頬にそっと触れる。
そんな自分に気づいて、頬を触ってる手をぎゅっと握って「どうしたんですか?」といつもの優しい笑顔でこっちを向く。
「さっきの顔のほうが好きなんですけど」
少し口を尖らせて言う。
「いつもこの顔ですよ!」
後輩は両手を自身の頬にあてて、表情を強調してくる。
いや、ただのぶりっ子かもしれない。
でもそんな後輩を見て少し笑ってしまう。
笑った自分を見て後輩も笑いながらポーズをやめた。
自分は後輩のこっち側の髪の毛を耳にかけた。
後輩の耳には自分があげたピアスがついている。
本当は顔見て言うつもりだったんだけど、さっき寝てるときに言ったやつで結構ダメージがきて、顔見て言う精神力はもう残ってない。
だから後輩の耳元で言った。
「お誕生日おめでとう」
後輩の顔から離れて下を向く。
顔見なくても照れんじゃん。
そんな自分にうんざりしながら自分は目線を後輩の方に向けた。
後輩は自分が喋った方の耳を抑えながら顔を真っ赤にして驚いた顔でこっちを向いてた。
自分より何倍も照れてる後輩を見るとなんか落ち着いてきた。
しかも余裕も生まれてきたため、なにか仕掛けてやろうとも思ってきた。
ニヤニヤして余裕ぶった顔で話しかける。
「なに?照れてんの?w」
「だまれ、、、」
思ったよりもガチで照れていて驚いた。
その驚きを隠すように恥ずかしがってる後輩に寄っかかる。
「後輩が一番可愛いよ」
これはなにか狙いがあるとかそういう訳ではなく、自然に口から出た言葉だった。
でもこの言葉が一番聞いたようでさっきよりも顔も耳も赤くして俯いた。
そんな後輩を見てさっきよりも更にかわいいなと思ってしまった。
そのまま寄っかかりながら空を見る、関係を終わらしたくないなと思いながら。




