ピアスとデート
「本当にこの服装で良かったのかな」
お嬢様はかわいい系って言ったけどかわいい系って何?
今は一人で遊園地の前で待っているような状態だ。
服装は、上は長袖のYシャツとネクタイ、下は膝上の黒いスカートに膝まで届くくらいの長い靴下だ。
いつもと違って制服感が出ないようにブレザーは着てない。
足が寒くてさっきから少しだけ震えている。
寒さ対策に来てきたのが太ももの高さまであるテーラーベストと呼ばれるようなものだ。
真っ黒でふわふわしていて肌に直接当たる部分がくすぐったい。
お嬢の家の鏡で確認したときは「かっこよくて、かわいいって最強じゃない?」と自信満々にポーズを決めていたほどだったのにいざ来てみると迷いが出てくる。
大丈夫だよね?お嬢様も「可愛いですからちゃんと返してくださいね」て言ってたし。
落ち着くために深呼吸をしていると遠くの方から先輩が走ってやってきた。
少しだけ口を尖らせながら「遅いですよー」と言うと先輩は息切れを起こしたみたいで私のまえで何回も息を吸い直した。
「ごめん、じゃあ行こっか」
息を整えて私に手を差し出してくる。
「え?」
「は?」
「手、繋がないん?」
「え、あ、じゃあ」
そう言って先輩の手を取る。
付き合ってもないのにこんな事してくれる先輩をどうしてもかっこいいと思ってしまう。
歩いている時に先輩の格好を見てみると上は私と同じようなYシャツで下は黒くて膝下まであるワイドパンツ、長めの黒いコートを着ている、しっかりといつもと違うのは髪型で、先輩は僕が大好きなポニーテールに三つ編みをしたやつだ、なんて言うんだろうなーこれ。
名前がわからなくてもひまはこの髪型が大好きだ。
少しドキドキしているのは寒いから。
絶対にそうだ。
今日も自分の気持ちに目を逸らす。
普通に握っていた先輩の手を一度ほどく。
すると先輩が振り返り、やっとこっちを向いてくれた。
「私、可愛いですか?」
いつもどうりの笑顔で聞く。
すると目を逸らして先輩は「かわいいよ」と答えてくれた。
どうやら心の底から言ってくれているらしい。
よかった、「好きな人から言われる可愛いは私が言われたい言葉ランキング第2位に入るんですよ!」と先輩に教えてあげる。
「今日は最高のデートにしましょうね!」
指を開いて先輩に手を向ける。
先輩はしばらくその手のひらを見つめた。
流石にかと思って手を引っ込めようとすると先輩が私の気持ちを感じ取ってくれたのか手を絡めてくれた。
「流石、私が見込んだ女ですね!」
先輩は照れ隠しなのか「はいはい」と言ってそのまま歩き出す。
私は今とっても幸せです。
恋人繋ぎを求めてくるとは思わなかったな。
まぁ確かに先に手を繋ぐみたいな空気を作ったのは自分なのになんか自分のほうがドキドキしてそうで嫌だ。
そんな何かを祓うようにいつもよりも少し早く歩いた。
いざ遊園地につくと何に乗ろうか困る。
色々あるが午後からだったので全部は乗れそうにない。
「どれからいk」
質問しようと横を向くと後輩は横ではなく前にいて、手を繋いだまま走り出した。
「ちょ、ちょ、ちょ!」
ちょっと待てと言いたいのに言うタイミングさえも与えてくれない。
「どこ行くの?」
「ないしょです!」
走ったままこっちを向いてウィンクをし、また前を向いて走る。
まばらに自分らのことを見てくる人達がいる。
まぁ高校生が恋人繋ぎをして走ってたらそうなるのも当然か。
そんなことを考えていると目的の場所についたっぽい。
そこにはデカデカと「おばけの家」と書いてあった。
多分これ、いや多分というか確実にそうだ。
「おばけ屋敷はいんの?」
「もちろんです」
空いている方の手で後輩は胸をポンと叩く。
こいつ性格的に怖いの無理だと思ってた。
ほらだって明るいキャラって怖いの無理みたいな人多いじゃん。
「後、ここなら手、放さなくていいですし」
笑顔でこっちを向いて言う後輩を見て少し口元が緩んでしまう。
「行きましょ」
「はいはい」
ここ歩くタイプなんだ。
入ってから周りを見渡すといい具合に怖いように装飾されてる。
「結構怖いね」
周りを見ながら後輩に話しかけると「そ、そうですね」と震えた声が返ってくる。
え?と思い後輩の顔を見ると顔色が悪くなって怯えているような表情をしている。
「大丈夫?出る?」
最初の方に怖くてギブアップする人ように非常口が設置されている。
「大丈夫です!」
食い気味でそう言われたので「わかった」とだけ答えて、早めに出たほうが嬉しいのかと思い速歩きをする。
「先輩、もっとゆっくり歩きませんか?」
「ごめん」
それだけ答えてさっきよりも全然ゆっくり歩く。
意図的に後輩の顔を見ずに聞く。
「怖いん?」
「怖くないです」
速攻で返事をされ、本当に怖いんだと理解する。
前にスマホで見たことがある気がする。
怖いときは温かいものと密着するといいと。
てか、お化け屋敷はいったのって自分と密着したいからじゃなかったの?
そう頭の中で考えたがよくよく思うとすっごい自意識過剰だなと思い取り消しをする。
でも手を繋ぐだけで、何もしてこないのは本当におかしい。
横目でふわふわを見ると自分のことなんかよりお化けに意識が向いているらしい。
「くっつけばいいのに」
小声でいったおかげで後輩は声に気づかず怯えた顔をしながら前に進んでいる。
何を思った、何を考えたのか、自分でもわからないでも今自分がした行動は理解できてる。
今自分は後輩と繋いでた手を放し後輩の腕にくっつく形にして掴んだ。
学校習った、体の動きは全部自分の脳が命令を出しているらしい。
絶対うそ。
「どうしました?先輩」
暗いからわからないけど後輩が照れているときの声質に聞こえた。
映画とかで泣きそうな時に隣の人が先に泣いたら冷めちゃうみたいな今そんな現象が起こってしまい僕の顔が赤くなるのを防ぐことができた。
「いくか」
後輩の腕を引っ張って前に進んでく。
進んでいる最中にお化けが叫んだりしていたが自分が無視して後輩のことを引っ張るので後輩もあまり怖がらなくなり普通の人より早くお化け屋敷を出る頃ができた。
「あ~怖かった!」
叫ぶように大きな声で言った後輩を見て「何ではいったん?」と質問する。
「先輩にくっつけるかなって思って」
自意識過剰な考えがあってたことに恥ずかしさもあるが少し笑いがこみ上げてくる。
「次どこ行く?w」
「次はあっちいきたいです!」
次は自然に恋人つなぎをして歩き始める。
もうよるの8時。
後30分でアトラクションが閉まる時間だ。
「もうコーヒーカップも乗りましたし、メリーゴーランドも乗ったので帰りますか?」
水入りのペットボトル口に当てて飲んでいたのですぐには言葉を返すことができない。
「まって最後乗りたいやつある!」
そういって自分と後輩は最後の乗り物の方に歩いて行く。
元々いた場所から近かったためすぐについた。
「観覧車ですかー」
後輩はそう言いながらてっぺんを見る。
「高くないですか?」
「あ~なんか最大で45mとかだっけ?」
「え、、、まじすか」
声で嫌がっていることはわかったがそれでも自分は後輩の手を引いて無理やり観覧車に乗り込んだ。
「ちなみに聞きたいんだけど高いとこ無理だったりしないよね?」
ライトに照らせれた景色を見ながらいう。
雰囲気作りのためなのか観覧車の中は小さいライトが上から吊るされてる。
まぁ少し薄暗く感じるけど。
「全然大丈夫です!」
手を前に出して横に降ってる後輩を見る。
体重のあれで傾いてしまうからなのか自分らは向かい合って座っている感じだ。
自分は外、後輩は少し下を向いて、喋らない時間が増える。
「一時停止します」
急にそうアナウンスがされた。
そういえば思い出した。
自分はバッグから一つ尖っているものを取り出した。
「なんですか?それ」
「えっと、なんだっけ?ピアッサーってやつだったはず」
箱が以外にも硬くて開けるのに苦戦していると後輩が「貸してください」といいたげに手を差し出してきた。
「これはですね、隅からグッて開けるんですよ」
そっから少し箱がいびつな形になったが開けて中身を渡してくれた。
「じゃあ、耳出して」
後輩は自分が持っている物を見てびっくりしたような嫌そうな顔をして言った。
「私が開けるんですか!?」
「当たり前、はい耳」
後輩の耳を掴んでこっち側に引っ張った。
「痛いんですけど」
後輩はできるだけ痛みを減らすためか椅子から降りて観覧車の床に座る。
「こっからもっと痛くなるから頑張って」
嫌そうな顔を無視してピアッサー耳にをセットする。
「本当に、、開けますか、、?」
少しウルッとしたような上目遣いで聞いてきた。
「ピアス開けたいんじゃなかったけ?」
「開けたいですよ、そりゃ、でも今じゃないっていうか、、、」
「はーい、いくよ」
やる瞬間に後輩の顔を見ると唇を噛んで本当に怯えたているような顔をしていた。
「やっぱりやめよっか」
こんな顔をしているのに無理に開けるほどじゃない。
買ったものは彩花にでもあげればいい。
そう思いピアッサーを下げようとすると、ピアッサーを持っている腕を力強く掴まれた。
「やってください!」
涙目になっていて、鋭い目つきをしていた。
「いや、でもお前も嫌がってたじゃん」
「それでも。先輩にやってもらえるなら本坊です」
「わ、わかった」
そういうとやっと腕を放してくれて、後輩は決意を固めるかのように自身の膝の上でグーを作った。
目をギュッとつぶって待機しているこいつを見ると何か可哀想に思えてきた。
自分がね、無理やりやらされてる自分がね。
何も言わずに後輩が作っているグーの上に手を重ねる。
後輩がそれに気づいて片目を薄く開けた瞬間にパチっとピアッサーを使った。
「あ ゙っ」
痛そうな声を出した。
「じゃあ、もう一発」
「ちょっm」
今開けた場所から斜めにはなるが一直線上のところにパチっともう一発ためらわずに押す。
「ゔっ」
ピアッサーを耳から抜くとすぐに自分が重ねてない方の手で後輩が耳を軽く覆った。
「痛いんですけど」
少し睨みつけるような目をして自分のことを見た。
お前がやれって言ったんですけど。
「お待たせてしました、再開します」
観覧車の中でさっきと同じようにまたアナウンスがなり動き出す。
あと少しで完成だったのに、、。
惜しむ気持ちを持ちながら、僕はピアッサーを箱にしまいバッグの中から新品のピアスを取り出した。
「はいはいごめんね。じゃあ手、どかして」
後輩は覆ってた手を下げ、自分は片手で耳を抑えてピアスをつけた。
「はい、完成」
そう言って素直に笑う先輩を見て、少しドキドキしてしまう。
ドキドキを抑えるために先輩から目を逸らし、先輩がつけてくれたピアスを手で触れる。
「これ、どうしたんですか?」
「買ってきた」
「わざわざですか?」
「もち」
真顔でピースを作る先輩を見て少し笑ってしまう。
ピアスがほしいっていうの多分だけどお嬢がお泊りの時にでも伝えたんかな。
それにしてもこれ結構高かったんだろうな。
ひまが今触っているピアスはインダストリアルと呼ばれる2箇所開けないとつかないピアスだ。
デザイン的には一瞬見ただけだったけど、全体的に白くて矢みたいな形をしてたはず。
先輩にしてはセンスがいいから人に聞いたりしてわざわざ選んでくれたんだろうな。
これは失礼か。
もうすぐ頂上につく。
ちょうどいいかなと思ったから先輩の頬に手を添える。
先輩は驚いたような顔をして、それでもくすぐったそうな、恥ずかしそうなそんな声で「なに?」と聞いてきた。
頂上につくのと同時に呟いた。
「好きです、先輩!」
そういうといつもなら目を逸らす先輩も今回は目を逸らさず少し赤い顔を誤魔化すように睨みながら返してくれた。
「あっそ」
少し顔を先輩に近づける。
「は!?えっちょっま!」
先輩はさっきの私のようにギュッと目をつぶって固まった。
さっきの私と違うのは顔の色とかかな。
キスされるとでも思ってんのかな。
可愛いな。
私は先輩の前髪をどかしておでこに触れる程度のキスをする。
「まだ死ねないのに」
ふと口から出た言葉だった。
顔が近かったからか、先輩にも聞こえていたみたいで「え?」と先輩は小さい声を漏らした。
私はその「え?」をかき消すように勢いよく立ち上がって窓の外の見えるか見えないかのギリギリのところを指さす。
「あれ、なんですかね?」
先輩は3秒ぐらいこっちを見つめていたが私が指さしている方向を見て言葉を返してくれる。
もうピアスだって克服できたんだ。
高いところなんて、もうなんとも思わない。
「なんだあれ」
先輩にはまだ先輩が好きな理由も死にたい理由も何も言ってない。
そんな私にここまで一緒にいてくれる先輩はやっぱり人より優しんいんだと思う。
いつか先輩に愛想つかされないようにこれからも頑張っていこう。
「可愛いですね」
頭を撫でながら先輩の方を目だけ向いて言う。
「なんで死にt」
「ダメです、まだダメです」
さっきまで聞かないでいてくれてたのに、まぁ照れ隠しだよね。
うんうん。
先輩の方をしっかり見るとムッと不満そうな顔をしていたので、撫でるの次は頭をポンポンとして「私と付き合ってくれたら今すぐにでも教えますよ!」と冗談ぽく言う。
「嫌だね」
ポンポンしている手を抑えながら少し笑顔で言う先輩はライトの光に当てられてとてもキレイだった。




