先輩と寝たい
「先輩ー!一日ぶりですね!」
ドアを開けると後輩が抱きついてきた。
昨日はお嬢様の家からそのまま学校に行って、学校では関わらないのでほぼ一日ぶりということになる。
結局お嬢様とココアを飲みながら2時から4時まで話し込んでしまって寝不足だ。
だからあまり抱きつかないでほしい。
「うるさいんですけど」
身長が後輩の方が高いため、僕は抱きつかれた状態だと結構上を見て話さないといけないというのがムカつく所だ。
ふわふわは抱きつくのをやめ、自分のリュックサックを持った。
「すいません、その代わりに荷物運ぶんで許してください!」
なんかこいつテンション高くね?
え?自分の気の所為?
自分の部屋に荷物を置いて戻ってきた、後輩に直接聞いてみた。
「なんか大丈夫?」
よく見るとくまもある。
「昨日ちゃんと寝た?」
「なんですか?心配してくれてるんですか?」
こう言って自分の隣に座った。
自分はもう知っている。
こういう冗談をいってくるときまっすぐした目で答えるのがベストだって。
「そう、心配してんの」
目を見て応えようとしたけど、何故か目線はスマホの方にいってしまった。
言おうと思って、喋ろうとするとなんか照れてしまうのかもしれない。
それは嫌だな。
「ありがとうございます、、、」
少し空気がシーンとなった後に後輩が口を開いた。
「先輩、今週の日曜日って部活ありますか?」
音声だけだとほんの少しだけ声が震えているように聞こえる。
「ないよ、どっか行く?」
眠くて脳がなにも考えられないのか、それなりの相づちしか打てない。
「行きたいです」
いつもの音声と違って真剣な声をしている。
なんだ真剣な声って。
「どこ行く?」
なにか行きたい場所があるのかと思い質問をする。
「遊園地がいいです」
「わかったー、じゃあ遊園地に1時集合で」
そう言って寝るために部屋に戻ろうとすると後輩が「朝からじゃ駄目ですか?」と言った。
今は特に予定はなかったが自分の中で予定が入る、予定だから「ごめん、昼からじゃないとだめかも」と言って後輩の意見を却下する。
「わかりましたー」
後輩はほっぺを膨らませる。
「なにすねてんの?w」
膨らんだほっぺの片方をつんつんする。
このまま部屋に行ってもいいと思ったがいつの間にか服の裾を掴んでいて、今こいつ置いていくのは流石に可愛そうだ。
すねている後輩が妙にかわいくて頭をなでてしまう。
でも、こうしている間にもどんどん眠くなっていく。
いつ逃げようと考えている間に急に後輩がそういえば!みたいな表情をして口を開き始めた。
「先輩、今日私と一緒に寝てください」
「え、やだ」
また不満そうな顔になった。
急に何でそんなことを言ってきたのだろう?
頭の中で思い当たる節を探すと1つだけあった。
昨日そういえばお嬢様と寝たことになるのか。
「わかった、わかった。じゃあ自分のこと照れさせることができたらいいよ」
眠すぎていつもなら言わないようなことを平気な顔していってしまった。
言ったことに対して後悔は残ったが別に大丈夫かと思った。
だって後輩に自分のことを照れさせることはできないと思ったからだ。
この考えに根拠はない。
ただいつもまとってる後輩の雰囲気的に人を照れさせることは向いていない。
すなわち自分はこいつを舐めている。
後輩はしばらく考えて、持っていた裾を放し、こっちを目を合わして向いた。
自分はは目をそらさずに口パクで「どーすんの?」と言ってみる。
その瞬間自分がつけっぱなしにしていたチョーカーと首の間に人差し指を挿し後輩の方向にグッと引っ張った。
「っん」
何が起こったかわからなくて思わず声を出してしまう。
顔をが近くて、心拍数が上がってしまう。
3秒ぐらい見つめ合う形になってそこでようやく何が起こったか理解できて、目を逸らす。
「照れました?」
ムカつくような声質をしているということは多分今ニヤニヤしてるんだろうなと想像する。
そしてその想像した顔にイラつきを覚える。
「してない、、」
早く指を抜いてほしい。
少し息が苦しくて、心拍数がどんどん上がっている。
「それならこっち向いてくださいよ」
もう横顔だが顔が赤いのを見られている。
だったら今さら後輩の方を見ようが見まいが何も変わらない。
頭ではわかっている、わかっているが今は絶対にこいつの目を見て話すことはできない。
「いやだ」
眠気なんでなくなった。
胸が苦しくて早く放してほしくて。
「先輩、一緒に寝ましょ?」
それだけ言ってやっと後輩は指を抜く。
「お風呂入ってくますね」
その場から立ち去っていった。
後輩がいなくなっていっても心拍数を抑えることにいっぱい、いっぱいで。
「さいあく」
自然と口からこの言葉が出てきた。
キスしたのにこんなに照れてる自分にうんざりする。
気持ちを落ち着かせようと一旦部屋に戻り、タブレットの電源を入れた。
検索項目にピアスとだけ検索する。
色々画像が出てきたがパッとするものがなくて指をスライドさせる。
そんなときにスマホの着信がなる。
ピロロ、ピロロ。
誰からだろうと名前を見ると菜奈と表示されている。
「どうしたー?」
普通の声で電話に出る。
いつもよりはなにか声に違和感があると思うが相手は彩花じゃない、流石に気づかないでしょ。
[いや、今週の日曜日なら部活がないから、今日の昼に言ってたアクセサリー買いに行くやつ、行けるんだけど、どう?]
「いや部活ないって言うけど、最近行ってる?w」
[全然行ってなーい]
菜奈は陸上部の凄腕らしい、凄腕というか凄足?なんて言えばいいんだ?
1年の頃は毎日のように行っていたが2年生になってから急に行かなくなった。
いかない理由を一回だけ聞いたことがあったけど、その時いい感じにはぐらかされてそれ以来聞いていない。
なにか言いたくない理由があるんだったら無理に聞くのも良くない。
「え?何?大会だけは出るの?」
[そうなんだよー、これぐらいは出ないと流石に退部しないといけなくなっちゃうかなって思って]
「いいじゃん、頑張ってね!」
[もちろん]
ひとしきり会話が終わったみたいな雰囲気だったので、通話を終わらせるボタンに手をかけると[違う!]と音声が鳴った。
[だから、マイチーは行けるって?聞いてるの!]
「午前中なら行けるw」
[行ったね?]
「行ったw」
[じゃあ白野崎駅に9時集合ね?]
「はーい、おやすみ菜奈!」
最後にそう言って通話を切る。
菜奈の声のおかげで心拍数が普通に戻った。
ありがとう菜奈。
グーッと伸びをして机に上半身を乗せる。
眠い。
もう寝ちゃおうかと考えているとドアからコンコンと音がなった。
さいあく。
先輩のドアを軽くノックすると先輩が嫌そうな声で「はーい」と言った
ドアを開けて机に上半身を乗せている先輩をみるとずるいなと思う。
可愛くて、小さくて、やっぱり可愛い。
「早く寝るぞ」
そう言って体を起こし、先輩はベッドの上に寝っ転がる。
「おじゃましまーす」と言って私も先輩の隣に寝る。
電気を消して、スマホのアラームを設定して目を瞑る。
先輩とは普通の距離しか離れていないはずがすごく離れているような気がする。
なにか話そうか迷ったが、私ももう十分眠たいので意識を手放した。
朝まだアラームが鳴っていないのに起きてしまった。
いつもと寝る寝具が違うとこうなるのか。
というかなんか体全体が重いえ?何これこんなに違いが出るもんなの?
ゆっくり目を開けると先輩にバッグハグの形で抱きしめられていた。
「はぁ?」
照れているような声質になってしまったのは気の所為ってことにして取り敢えずここから抜け出そうとする。
上を向くと先輩の顔が見える。
先輩のほうが身長小さいのに、、。
体を揺らすと少し力を強くされる。
この人本当に起きてないんだろうな。
「先輩、ちょっと離してもらえませんか?」
「うる、、しゃい、、、」
滑舌回ってない。
え?かわいいんだけど。
吐息が耳にかかってくすぐったさを感じる。
なにも考えないようにして、もう寝ようと思う。
もう一回目をつぶって意識を落とすことに集中したが絶対に無理。
好きな人に抱きしめられる状態で寝れる人なんているわけないでしょ。
まだ顔は赤くないと思う。
ゆっくりと腕を振りほどいてベッドから出ることに成功した。
「先輩、朝ご飯作ってきますね」
少しだけ先輩の頭を撫でてキッチンの方へ向かおうと先輩の頭に触れるのを辞めると、先輩が薄く目を開けこっちを向いた。
「いっちゃうの?」
眠そうな目、表情でこっちを見つめる。
始めてみた先輩の表情で胸が痛くなる。
一切仮面を被っていない先輩が見れた気がして少し嬉しく思う。
「今日のご飯は玉子焼きなんで楽しみにしててください」
もう一回軽く先輩の頭を撫でて部屋を出る。
その後ご飯を食べに来た先輩はいつもの冷たい先輩だった。
「またみたいです」
わざと先輩の方をまっすぐ向いてニコニコした顔机に肘をつきながら呟いた。
先輩は何も覚えていないのか「何が?」と返してくれた。
やっぱりかーわい。




