第7話 連帯
ようやく交渉を始めようというときにまたも水を差すやつがいた。
なにを隠そうそれは俺だ。脱線というわけじゃないが知っておきたいからな。
そもそもどうやって俺が普通の人間じゃないと見破ったのかということを。
そこんとこは今後の行動するにあたって必ず頭にいれておきたい。
「あなたから特殊な……この地球の言語では表現できませんが、力が流れています」
「おいおい。勝手に漏れ出てるけど大丈夫なんですか? 責任者の牧之瀬さん」
「それは文音ちゃん関連のせい……だと思う」
自信なさげに答えた。
「オーラとかならいいけど。そういったものとは違いますね。それに送信だけでなく受信もしています」
かなり謎が多い機械らしいからな。開発者主任者のこいつも扱いにてこずるくらいの。といっても引き継いだものらしいので仕方ないけどな。
続けて委員長(仮)は、「しかし、この技術はかなり先のものですね。おそらく半世紀以上は先のものでしょう。下手すれば一世紀先までかかるっても不思議ではない代物です」
人類の技術を褒めているのか貶しているのか分からない言い方だ。
「未だに言葉で意思の疎通を図っている人類がこの技術を作るのは非常に危険です。私が集めた情報によりますとそのように進んだ科学技術を取り締まる機関はあるはずですが、なぜあなたがたは捕まらずに、監視の目もなくそれを行使できるのか謎です」
彼女の言ってることがどこまでが本当かわからないし、確かめる術も見当たらない。自分の目的を優位にするためのハッタリの可能性もある。
天恵は最初の強気の態度とは逆に黙々と聞いていた。
「色々あるの」と囁くように答えるだけだ。
「これ以上の詮索はやめましょう」
委員長(仮)はなにかを察したかのように本題へと戻る。
「もう一度確認します。私の目的は妹を生き返らせて故郷へと帰ること。あなたの目的は彼の中にあるマシンのアップデート。それでいいですよね?」
「それでいいわ。交渉成立よ」
手を差し伸べ握手を求める天恵。しかし、委員長(仮)はこれをあっさり無視。
俺のほうに手を差し伸べてきた。あっちだ。あっち。
「私はあなたと握手したいんです」
よくわからん。どうしたらいい? 俺は握手をした。なんだこの交渉がまとまったはずなのに居心地の悪さは。
普通ならダサッ! と天恵をイジるところだがこいつは孤独を好むといいつつ、人と接したいやつだからな、拒絶されると凹む。
燐が速攻で転校してきたときなんかはなんだかんだ嬉しそうに怒っていたやつだ。
厳密には人ではないとはいえ、こんな対応をされれば気落ちするだろう。下手したら研究が上手くいかなかったときよりもショックは大きいかもしれない。
現にちょっと涙目になってないか? ハンカチを差し出そうか迷っていると、委員長(仮)はそのまま話を進める。
「まず妹を見つけてもらいたいです」
やや焦り気味だ。タイムリミットでもあるのだろうか。そりゃそうかもしれん。俺らでさえ生きていても時間によって生命の生死が左右するのだ。死んでる状態ならなおさら早く見つけないと、そのまま永遠の別れなんてことなのかもしれない。
せき止めていた言葉を流し、「期限があるんです」
まだ少し、気持ちを切り替え切れていない天恵が「なるべく早く取りかかるつもりだけど、いつからいつまで?」と猶予を尋ねる。
「半年以内に見つけないと生き返らせることができません」
ちょっと前言撤回したい。結構な猶予がある。といってもこれも俺らの人類時間感覚だけれども。
「長いわね」
「いいえ。長くありません。あなたたちの作った機械のレベルではかなり時間がかかるでしょう」
ナチュラルのディスりはやめろ。俺はなんとも思わないが、こいつは自分の人生だけでなく母親の人生も費やしてる代物なんだ。落ち込んじまうだろうが。いや、落ち込みを通り越して、怒りに変わっているのかもしれないが。
「だから急ぎたいのです」
天恵が怒り悲しみなんかでぐちゃぐちゃになりそうだ。こいつプライドとか高いからな。下手したらこの話合いが次回に持ち越しになってしまうかもしれない。
なので俺なりに微力を尽くす。
「そんなにこいつの機械なんかじゃ力量不足か? 人類ではトップクラスの発明品と人物だと思うけど」
「厳しいです」ときっぱりと言いきった。
「こちらが言いたいのは知識不足ということではありません……そうですね……飛行機で例えましょうか。設計士と整備士はいます。特に整備士は優秀です」
この場合その役割は誰だそりゃ。
「あなたです。設計士の足りない部分をかなりカバーしています。不明な部分は多いですが」
不明な部分が気になるがここはスルーだ。
「しかし、パイロットがいないのです。それらを探すかもしくは養成しなければいけないのです」
「パイロットってなんだよ」
いつのまにか俺が交渉をしているようだった。
「頑張れ天恵。お前はいつかは機械を完成させて、母親を救えると俺は信じてるぞ。なんなら今は燐と文音ちゃんもセットでついてきてるんだ。自信を取り戻せ」
「今挙げたお二方はこの件に関して事情を知ったている人達です?」
「そうよ。そしてこの機械について知っている数少ない外部協力者達よ」
少しは、自信を取り戻したのか。天恵はなんとか答えた。
なるほどといった感じで委員長(仮)はあごに手を当てて、考えてあいたあと「さきほど言った通りあまり情報を入れるのは得策ではないかと」
「一人は医者よ。燐ってやつね。そいつはまぁ大丈夫でしょ」
「なるほど」
高校生の医師の部分はスルーだ。こういうときは常識がないと逆に話がスムーズで助かる。てか、燐をそんな危険に晒していいのか? まぁどうでもよさそうな顔をしているから平気なのか。
「もう一人はなぜ知らせるとお考えなのでしょうか?」
俺と天恵は顔を見合わせる。言っていいものなのか。彼女を研究してる側の俺らが言うのものなんだが、宇宙人に連れ去られてもっとひどい実験なんか……という考えがよぎる。探す協力はもとよりしていたが、口約束では、文音ちゃんの存在を宇宙人側に知らせないように、配慮してからだったはずだ。どのような策を講じるかは聞いてないが、天恵はそれをやるつもりだったのだろう。
俺らが迷っていると、「ああ。〇×☆~~」
委員長(仮)は何語かわからない単語を言った。それも誤った表現かもしれない。なにか呪文のようなものを高速詠唱した。
俺は天恵の顔を見る。
知ってる言語かどうかというアイコンタクトを天恵に送るが、天恵は立てていた手を横に振った。
「失礼。言語化できないような表現だったようです」
そんな通じない方言を口に出したみたいに言われても困る。そんな戸惑う俺らのことは気にせず辺りを見回す委員長(仮)。なんだキョロキョロ周りを気にして? なにかあるのか?
「いいえ。ただ、発言しても問題なさそうか確認しただけです」
天恵は首をかしげながら、「どういうこと?」
「さきほどの燐という人物ではない……文音さんという方が超能力者だということを口に出していいかの確認です。どうやら盗撮や盗聴のたぐいはこの部屋ではされてないかの確認です。問題ないようです」
俺らの隠しておきたかった秘密があっさりと見破られてしまった。
次回は7月11日(土)21時ごろ投稿予定です。




