第6話 超常現象を超える異常現象
私用により早く投稿しました。
俺は動じないつもりだったし、その自信は大いにあった。
しかし、俺は驚愕という言葉を通り越して頭が真っ白になっていた。もしかしたら同時に内面的な部分だけでなく、頭髪の一部が白髪に、なんてことがあっても不思議ではない。
ったく。今でさえ、それなりに若白髪で悩んでいるのにこれ以上増えたら困る。
おっと。どうやらまだ余裕は残っているらしい。リアルでパニックってるときは身体はオートモードになってるからな。
「やっぱりこうなると思った。驚かないっていってたわりには、物凄く驚いてるじゃない。いつも見てるはずでしょ」
天恵が続いて委員長(仮)の部屋に入ってくる。
あぁ俺はお前と違って身だしなみに気を付けてるから毎日みてるよ。
委員長の部屋はいわくつきの部屋のようだった。
お札の代わりに貼られているものが、俺の写真だということだ。さらにどうやって撮ったのかわからない写真もいくつかあればそりゃ怖いに決まってる。背後ならわかるが、ドローンでも使ったのか空中で撮られた写真なんかもあるぞ。下手したら超常現象よりも怖いかもしれない。
「あ、あんた肩甲骨の辺りのほくろから毛が生えてる。今度抜いてあげようか?」
「んなことすんな。刺激したらダメだろ! あと俺は幸運をもたらすって信じてるから抜くな」
声は怒りつつもこいつのイジりに毛ほどくらいの感謝はしてやろう。このイジりがなっきゃ俺は口は動かせても、足が動かずに未だ棒立ちだったかもしれん。
「なにキョロキョロとソワソワ繰り返してんの女子の部屋はじめてじゃないでしょ」
ここが仮に俺の部屋だったとしても落ち着かないだろう。他人の部屋なら尚更だ。発狂してない俺のことを褒めて欲しいくらいだ。
「ただの絵じゃないですか」
遅れて部屋の持ち主(?)が何の気もなく言い放つ。正確には写真や画像なのだが、ツッコんでいたら気が狂いそうなので、さっさと終わらせよう。
「この写真はお前が貼ったのか? もし、貼ったのなら理由は俺を監視し、殺すためとかか?」
ド直球の質問を相手の胸元めがけてぶつける。彼女はその質問を躱すようなことはせず真正面から受け止めて投げ返す。
「私じゃありませんし、監視でもないです。ましてや殺すなんてことはしません。どうして百年も経てば自然消滅する存在に手を加える必要があるのですか?」
なにげ恐ろしいことを言われた。そうなると犯人はーー
「委員長がずっと前から貼ってたからよ」
名探偵と化したく天恵が言う。
容疑者は二人。うち一人が否定し、名探偵が調査したようなので推理は的中しているだろう。
「なんでまた……」
「委員長があんたのこと好きだからでしょ」
愛が重すぎる。あまりの重さに耐えきれずうなだれる。好意は素直に嬉しい。モテたい全盛期の男子高校生だ。交流もそれなりにあり美人の委員長に行為を向けられて、うれしくないはずはない。
けどな、こんな独特な愛情を持った女子は遠慮したい。
「聞きたいことは星の数ほどあるが、あと回しだ。どうやればお前は星に返すことができるんだ」
俺は了承も得ずにテーブルの座布団に座った。面接なら不合格だろうが、気にしてる場合ではない。
天恵もぐるりと室内を見回した後座った。
もしかすると俺達がここに来て話し合うことを想定していたのかもしれない。座布団が一つ余っているのが気になるが。
「別に私はあなたたちと違って定住している惑星はありません。あなたたちが想像しやすい存在としては遊牧民が違いと思います」
あえてわかりやすい表現し、イメージは掴めたが、どうも共感しきれん。海でさえ危険と感じる人類からしてみればそんな場所を遊牧なんて言葉おいそれとつかえない。一番近い天体の月にいくのでさえ、国家規模のプロジェクトなのだから。それに妹が生き返るっていってたしな。人は生き返らん。だから必死になるのだ。こいつや前の俺みたいに。
「なによ?」
「なんでもねーよ」
どうしてお前はこいつに辿りついたんだ。
「あんたの機械に不具合が生じてて、どうも原因がわからなかったのよ。それを色々調査してたら謎の信号が発信されて彼女に辿り着いたってわけ」
じゃあなにか最初からお前は知ってたわけか。
「断定はできなかったけど何人か見当はつけてたわ。で、絞り込んでいって彼女が宇宙人と関わりがあるかもしれないという確証をもったから接触しようと思ってたらまさか精神科にいくとはおもわなかったから様子を見て、落ち着いてみたいだから接触したわけ」
ほとんどお見通しってわけか。なら話は早い。さっさとこいつを遊牧民に戻そう。
「はい。その件をついて話したくあなたに相談をもちかけました。私達を元の場所に帰るのを手伝ってほしいのとーー」
「待った!」
有能弁護士を気取って天恵は待ったをかけた。
「答弁はすみやかにな」
なにを企んでやがる。そもそも頼まれているのは俺なんだが。そんなことは意に介さずに委員長(仮)のほうへと向き直って、「条件があるわ。まさかタダであんたを元の状態に返せなんて言わないわよね?」
こいつ宇宙人相手に恐喝というか取引というか交渉のようなことをしようとしているらしい。怖がりな俺じゃなくてもわかるほど怖いことを実行するとは怖い物知らずだこと。
わずかに黙考したあと委員長は、「いいでしょう。なら、五千億円までなら現金を差し上げましょう」
「おお。結構すごいな。五千円だってよ。新しいゲーム買おうぜ。あのシューティングゲーム」
「現実逃避してないの!!」
だってさ。一介の男子高校生にはピンとこない数字だぞ。
「そんなものよりももっと欲しいものがあるわ。それができないなら交渉の席に座るつもりはないわ」
五千億円をそんなもの呼ばわりする奴なんては資本主義経済に身を置くやつでこいつくらいだろう。それか物々交換の世界で生きてるやつくらいだろう。こいつにとっては金はあくまでも道具に過ぎないだろうからな。
あともう偉そうに座ってるやつがなにを言ってるんだか。
「もっと欲しいものがあるわ。それら提供できるなら交渉の場に座ることを考えてあげる」
宇宙人に対して悪魔的な笑みで交渉を持ちかける。このたとえは彼女に話したら通じるのだろうか。目を凝らして反応を確かめる。
「この惑星の住人は資本という鎖で繋がれた奴隷のような存在だと、思ってましたがあなたは違うようですね」
酷い言い草だが、俺の貧困な知識、発想、思想、語彙力というどんぐりの背比べをしている四天王ではどうやっても上手い返答ができそうもないので天恵に任せよう。
解決はなんだかんだこいつだからな。俺の機械もこいつなしでは上手く扱えないので選択権はこいつにあるわけだしな。意見を述べる権利は主張するくらいだ。
「なにがお望みでしょうか?」
「そうね。精神の時空移動が可能かどうか」
「それならなんとか助言というか手助けはできるかと」
「じゃあそれで」
またとんでもない議題をあっさり回答して終わらせやがった。けど、こいつら二人が組めばできそうなのが怖い。
「それよりもまず私達のほうを先にどうにかして欲しいのですが」
「私達?」
突然の複数人称に眉をひそめる天恵。
「あれれ知らないの? 牧之瀬さん? 彼女には妹がいることを?」
「知ってるわ。けど、あれ多分死んだはずでしょ? てかあんたは煽るな!」
こいつ俺より委員長(仮)との接触が遅かったくせにそんな情報まで掴んでたのかよ。
「生き返らせることは可能です」
「だとよ。そんなことも知らなかったのかよ」
「知らないわよ。てかあんたは知ってたわけ?」
「知ってた」
とても悔しい表情をしている。しかし、ここは黙っておこう。委員長(仮)帰還作戦と妹蘇生プロジェクトは初耳だということを。
カラかいの情のなかに細かな苛立ちを混ぜたように、
「あぁもしかしてこの人が何人かいるうちの元カノ? 流石にそこまでは調べてないけど、ありえそう。あんたこういう女子好きそうだもんね」
ちげーよ。たしかに可愛いし、交流なんかもあったからコクられれば即オッケーだったけど、普通じゃないことがわかったので、仮に愛の告白なんかされても残念ながら彼女の気持ちには答えられそうにない。
それどころかお友達でいることすらもやんわり断るかもしれない。
今は俺の恋愛事情はどうでもいい。無論お前のもだ。
天恵がなにやらブツブツ言っているが無視だ。無視。委員長(仮)に話を進めてくれるように両手のひらみせて促す。
次回は7月4日(土)21時に投稿予定です。




