2話 ダボハゼ
「どっからどうみても人間だろ。角や触手が生えてるわけじゃあるまいし、見りゃわかるだろ」
「見た目ではないです。精神的部分で感じ取れるのです」
「第六感ってやつか?」
「いいえ。磁力とは別の。この星の言葉では表現しづらい言葉です。別の惑星から来た私だからわかるのです」
じゃあ第七感てやつか。なんか天恵がそんなことを言っていた気がするな。最近人間に磁覚っていって磁力を感知する感覚が備わってると。
「お前は宇宙人じゃないだろ。それに俺も違う。極々普通の人間だ」
我ながら嘘が上手くなったと思う。
まぁ真っ赤な嘘とは言えないが、薄いピンク色くらいの嘘ではある。
そう丁度委員長の唇くらいのって……。
「うわっ! なんでこんな近づいてきたんだ!?」
数秒目を閉じている間に俺と委員長の顔と顔の距離が急接近していた。拳一個分の距離があるかないかくらいのその距離はさらに縮まろうとしていたが、すんでのところでなんとか両手押しのけることに成功した。
もう少し、対応が遅ければどうなっていたことやら。あまり想像したくない。
ともかくどう考えてもおかしいわけで、彼女に提案する。
「委員長病院へ行こう。俺が付き添うから」
「いいでしょう。それで信じてもらえるなら従いましょう」
どのような行動するかの判断にとても迷った。天恵が探している宇宙人の可能性もあるからだ。しかしだ。天恵から連絡は特にないし、学校も休んでおり、当分家にもくるなと言われている。もしもなにかあったらまず燐に相談しろと言われた。そして、燐に相談することも考えたが、委員長が、「極力彼女には知らせないでください」と言われた。
「わかった。とりあえず病院というかクリニックでもいい。診てもらおう」
「はい。交渉は成立したようですね。では、あなたの条件を実行したら、私がさっき言ったことを信じると約束できますか?」
「あぁ信じるよ」
適当に相槌をうち了承し、この話し合いはお開きとなった。
◇◇◇
委員長の宇宙人発言から三日後。あの相談の翌日にメンタルクリニックに受診し、今日検査結果が知らせることとなっている。
なんで、時間がかかったのかは今日教えてもらうことになっている。
というわけで駅で委員長と合流。その間なにか会話をしようかとも考えたが、もしかしたら難病かもしれないという不安が突如襲う。
ちょっと考え無しに踏み込み過ぎたか? 癌とかそういった病気ではないと思うが、心配になってきた。体調が悪くなり、こっちが病に侵されそうだった。一応頭のいい三人が言う宇宙人擬態の線も捨てておかずに、周りの連中や彼女の両親を知る人物にもそれとなく聞いてみたが、変わったところはなかったようで擬態の可能性は低そうだ。
文音ちゃんに協力を仰ぐといった選択肢もあったが、彼女はどうやら中学受験をするようで、今日はその面談らしい。なので確証が持てない限り頼むのは忍びないし、そんな時間もかからないらしいので、最悪これがすぐ終わったら俺個人で頼めばいいだろう。などと色々な思考を巡らせていたせいか、通常なら行う確認を怠ってしまい、ある問題が発生した。というよりもある人物と遭遇したといったほうが正しいのかもしれない。そのクリニックになんと朱宮燐がいたのだ。
なんでいるんだよ! お前絶対この手の病気とは対極の存在だろうが。
いや、もしかしたらあいつも気に病むようなことがあるのかもしれない。他人から見たらどんな悩みを抱えているのかなんてわからないからな。
幸いまだこちらには気づいてはいないようだ。尾行するかのように身を隠し、様子を伺う。
一体どんな会話をするのだろうかと耳を立てる。
「じゃあまた漫画読んで待たせてもらいます」
お前はなにしに来てんだよ! 苦笑い気味の受付女性に断りをいれると、あいつは漫画を読み始めた。ここはそういう場所じゃないだろ。
「先週はここまで読んだから、次はここからか」と常連のように漫画を手に取り、パイプ椅子に腰かけ漫画を読み始めた。
ここが病院で委員長がいない状況ならば一言言いに行くところだった。
ただその怒りの感情がスッと冷める。ちょい熱めの風呂から絶対零度くらいのふり幅であったため、身体の感覚が変になった気がした。なぜそこまで急激に怒りの感情が消えたのかというと、隣の委員長が鬼のようにオーラを纏っているかのごとく怒りの感情を露わにしていたからだ。顔だけみれば表情が少し、歪んでいる程度のものに見えるが、近くにいると分かる。これはかなり怒っていると。
「ちょっと注意をしてきます。別のクラスとはいえ、同じ学校の生徒なので」
「待てっ! 待ってくれ」
俺には肩を掴み、委員長を引き留める。
ただでさえ、不安定なこの精神状態の彼女が怒鳴るような説教するようならば、騒ぎがおおきくなり、こちらこの心療内科の患者になりかねん。
「今回は俺の顔を立てて、許してくれないか? あとあいつをここから引き離す」
お堅い委員長に通用するはずがない。
ダメ元で提案してみる。と同時に、もしもダメだった場合の解決策も並行して思考する。まずい。全然いい案が浮かばない。
それどころか一緒に説教しに行きたいところだ。
「あ、あのいいです……任せます」
俺と似たように、怒りが引いているように見えた。ただ、反比例するかのように彼女の体温が高まってくのがわかる。どちらかというと最初は冷たかったはずの体温が衣服越しでも熱く感じられるほど急上昇しているのが、感じ取れる。
なんだろうか。また俺の中にある謎の機械が異常を起こしたのか? 前には文音ちゃんの件もあるのであり得る話だ。
「あの……肩から手を離してもらっていいですか?」
「おっと。悪い。ずっと置きっぱなしだったな」
委員長を引き止めようとしていた置いた手を彼女の肩に置きっぱなしにしてしまっていた。
「全然いいです。早く彼女をこの病院から遠ざけてくれますか?」
「あぁわかった」
誰かに見られてないよな? という不安が過るが、一旦忘れて、俺は燐に誰もいない我が家に早急に出向くように携帯で伝えた。興味を引く、材料に少し、悩んだが我が家の愛犬に会いたいなんてことを話してたから、それをエサに家へくるように誘ってみた。
すると、我が家の愛犬と同じように嬉しそうにクリニックから出てきた。そして、駅の方向へと向かう背中を確認し終えたところで、入れ替わるように俺達はゆっくりとクリニックへと入っていった。




