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夢見る天才少女と夢を知られた少年  作者: 引田 籠
第二章

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第14話 意味不明なルート

 「宇宙人を探す?」


 声が重なった瞬間、部屋の空気がぴたりと止まった。三人のセリフがまるでリハーサルしたかのように一致して、わずかに沈黙が落ちる。 心は読めないが、発した言葉通り同じ心持ちのようなのは少し意外だった。(りん)も予想外で初耳のようだからだ。そして、一人ない胸を張るやつがこの空気の蚊帳(かや)蚊帳(かや)(そと)にいた。その牧之瀬天恵(まきのせめぐみ)がホワイトボードをぺちぺちと叩く。

 一方、天恵はまるで意に介さずといった様子で、ホワイトボードの前に立ち、にこやかに板面をぺちぺちと叩いている。その音が妙に部屋に響いた。


 「そう。これがあたしが考えてる機械完成への現在の道」


 ――いつできたんだそんな道。突貫工事が過ぎる。

 ホワイトボードには、雑多な線と文字、そして何かの数式がごちゃごちゃに書かれている。それはまるで夢の中で書いた落書きのようだったが、もしかしてそれがその道順番じゃあるまいな?


 「むちゃくちゃだし、意味がわからん。燐もそう思うよな?」 


 「うん。私が考えてたのとちょっと違う」


 ほぼ意見一致はちょっと嫌だが、このことに関しては安心できた。


 「ちなみに燐はどんな案を考えてたんだ? やはり、前にこの機械製作に携わっていた人物たちなんかを集めて開発していくとかか?」


 天恵が呆れたように、横から口を挟む。


 「それができたら、解散なんかしてない」


 知らねーよバカ。俺はバカなんだから燐。頭のいいお前がさっさと答えろ。


 「未来人に聞く」


 「それも考えたけど現状厳しそうね。もう少し機械が完成したら、ありえるかもしれない」


 「データの送信方法があるということですか?」


 「おぼろげだけどね。あの謎の金属を取り出せばできるかもしれない」


 「あー確かに。調べて見る価値はあるかもね。あのときも話したけど」


 お前ら馬鹿だろ。馬鹿すぎる。しかし、まさか文音ちゃんもそっち側とは。そもそも俺が知らないところで話が進んでいる気がする。そういえばなんか俺をのけ者にしてこのままだと進まんので話を元の線路へと戻す。


 「未来人が無理なら宇宙人を探すってのはよくないがまぁそれでいい……それが機械完成とどう関係があるんだ」


 「やっぱりこのままじゃ機械完成流石に時間がかかりすぎるのよね。けど、今回の出来事で文音(ふみね)ちゃんっていう嬉しい誤算を計算にいれてもね」


 それはさすがに知ってる。バカで記憶力悪い俺でもな。でだ、確か夢を録画してたのは、ある実験も兼ねていたはず。頭のいい人材の発掘及びこちらの夢をみさせてどう適切な回答ができるかの、実験だったけな。


 「そうそれよ。要は天才のあたしでも解けない部分の問題を解いてもらおうという作戦計画! これは変わらないわ」 


 ものすごい他力本願なやり方だ。しかし、その選択をできるのはすごいと思う。どうしても自分でなんとかしたがるからな。そして、これを行っているのにはもう一つ理由があることを俺は知っている。


 「でも、これには一つ問題があってね。この夢を見たことを忘れさせる方法がないの」


 情報(じょうほう)漏洩対策(ろうえいたいさく)(?)みたいなもんか。この問に対する解を知るのは俺らだけにしとかないと、よそに持っていかれちまうってわけか。といってもこっちから押し付けておいて、そんなことするなんてたまったもんじゃないかもしれないけどな。


 「バレなきゃいいの。バレなきゃ」


 そういうことを言うやつは最後にはバレるだよな。言霊(ことだま)ってのを知らんのか、信じてないのかわからんが、俺は知ってるし、信じてるから口に言葉にしない。


 「そして、最終的には夢を見ている者同士の共有をしたいと思ってる……でしたよね?」


 文音ちゃんが補完してくれたが、そう本来の目的はこれなのだ。そして、母親の夢の中、つまり心を覗くことーーらしい。それができれば天恵の母親を助けることになるらしい。よくわからんがそうらしい。ここまではいいとだろう。みんな共有しているっぽい。しかし、問題は宇宙人に頼るということだ。

 誰以前の問題にWhy?とHow?の部分すら解けない。そもそもWhereの箇所すら不明だ。


 「前にもいったかもしれないけど、可能性があるのよ」


 「宇宙人に協力が仰ぐあてがか?」


 「宇宙人。というのは仮の存在だけど明らかな宇宙由来の異質な存在よ。その存在がもしかしたら、帰れないのかもしれない」


 俺はチベットスナギツネのような細い目をしながら、「今度ばかりは本当なんだろうな?」 


 また俺とお前が機械を使った場所なんかの聖地巡りみたいな感じにならんだろうな。


 「その確認は済んでる。文音ちゃんによると不思議な感覚は微弱ながら、続いているようね」


 文音ちゃんが優雅に紅茶を飲みながら頷く。


 「微量ながらも異常な電波もキャッチもあったね。この程度の電磁波なら害を及ぼさないけど、医者として気にはなるかな。」


俺はなんも感じないが。


 「向こうが気付いた可能性もあったけど、文音ちゃんに会ってからなんにも接触がないところを見るとどうやらあちらは気づいてないようね」


 「それかなんらかの準備をしているか」


 「このまま街の外に出るなんてことはないのか?」 


 「ある。だからこそ急ぎたい」


 「単体かどうかもわからないけど、見た目とか判明してないのか? そのほうが探しやすいし、なんなら俺の伝手なんかを使って捜索してもいいぞ」


 宇宙人ならかなり目立つはずだ。なので、必然的に場所が絞ると結構探しやすいはず。


 「はぁ~あんたはやっぱりバカね……」


 出来の悪い我が子をみるような眼はやめろ。次回定期考査後でも親から視線を受ける予定なのだから。


 「人型かどうかわかりません。固定観念はないほうがいいでしょう」


 「あとは人間、動物、虫なんかに擬態(ぎたい)してる可能性もあるよね。移動した経路形跡は多少わかってもこれだけ姿が見えてないと」


 おいおいまるで手がかりなしの状態じゃねーかよ


 「探す圏内は街中と少ないがやることが、捜索対象絞り込み事態が難しすぎる。サハラ砂漠で砂金を見つけるよりも難しいだろこれ」


 「もっとよ。あたしが考えるにね。宇宙人は情報生命体よ」


 天恵の目が真剣になる。立ち上がって、部屋の中央に歩み出る。その動きはどこか芝居がかっていた。

 小難し脚本の舞台なようなので観客の俺はとりあえずお気を引き締めて茶を一口飲み、落ち着ついて情報整理の準備を整えておく。


 「あたしの予想だと、そうねあんたに伝わりやすい表現だと、データ生命体かしら」


 いちいち茶々(ちゃちゃ)をいれてたら進まないのでこのまま静聴(せいちょう)することに徹する。


 「情報だけの生命体。つまりはあたしたちのような姿形を持たない存在」


 「ようは……魂だけの存在ってことか?」


 珍しく的を射た返答がきたのか驚きつつ天恵は「うん。そうねそんな感じ」と俺の意見を肯定した。


 自分で聞いておいてなんだが、やめてくれよ。個人的にオカルト関連だけはうんざりなんだ。


 「それだとオカルトチックだよ。うーん私達の脳内全部をデータ化した存在かな」


 予想だけどと燐が修正する。

 それの説明をさらに補足するかのように天恵が、「そんな感じね。あたしたちは肉体を持っているがゆえに、どうしても物理的制限が生まれてくる。けど、精神だけの存在ならその制限がかなり緩くなる。それに精神的要は電気の存在だから情報処理速度なんかがあたし達人類と比較にならないくらいの速さになる可能性もある。そいつがいい情報をもってなくてもかなりいい研究対象になるわ」


 オタク特有の早口解説が終わったところで俺はようやく口を開く。


 「じゃあなにか? 雲を掴むようじゃなくて雷でも捕まえるつもりか」


 「その辺は安心しなさい。ちゃんと対策は考えてるから。ある程度の行動パターンなんかは把握しているから」


 燐が「どんなの?」と俺が用意したクッキーを頬張りながら、問いかける。正直助かる。専門的知識というか詭弁みたいなもので煙にまかれてるような時があるからな。それに比べたら、俺が持ってきたクッキーなんて安い……いやまて食いすぎだ。俺は自分と文音ちゃんの分を確保し、個包装ビニールを開けて、食べたそうにしていたものを文音ちゃんに手渡す。

 

 「これでいい?」と確認をし、彼女が受け取るのを確認したあと、「こっちが優位に立てる材料みたいなのはあるのか?」交渉は対等でないと成立するどころか、えらい目に遭うだけだぞ。


 「たいしたことはないわ! 宇宙人って言っても、あいつら? 単体か複数かはおいておくとして、現状はただの『はぐれデータ』よ。あたしの頭脳と、文音ちゃんの超能力、そして燐の医学的知見があれば、首根っこを掴むのは難しくないわ。……というか、あいつらの方が助けを求めてる可能性だってあるんだから!」


 「頑張ってくれたまえ」


 俺はいつものように他人事のように話す。いつもの展開ならあんたも手伝いなさいという反応があると思いきや、「うん。頑張るわ」予想外の反応に拍子抜けしてズッコけそうになる。


 今回は俺の役目は不要そうか? 


 「わからないけど、当分あんたの出番はなさそうね。こっちで粗方進められそう。なーに? 自分がハブられて寂しいの?」 


 メスガキムーブをかましてきやがった。


 「別に、俺はお前と違ってやることが多い。適当にバイトなり、遊びなりで待つさ」


 それがこの件に関してはベターそうだ。それに万が一、宇宙人(仮)が本当に存在し、交渉なんてことになればいいが、脅迫みたいなことになり、星間外交問題に発展した場合その争いに巻き込まれたくないんでね。


 「それは自由だし、縛るつもりはないけどちょっとは勉強しなさいよ。あんたこのまえの小テスト酷かったでしょ」


 とりあえず俺は仕事をするそぶりを見せるだけの政治家のように「善処する」と宣言しておいた。


 「あのね。すぐにあんたの出番はないみたいなこと言ったけど、見つけて話ついたら、出番はあるかもしれないことはわかってる? 補習になったら、予定が狂うかもしれないでしょ」


 意図なんかは違えど、母親みたいなことを言うやつだ。それなりに頑張るさ。最悪燐とか暇そうだし、勉強教えてくれねーかな。というアイデアを思い付いたところで、急に燐が「決めた!」と緊急出動する救助隊員のように突如立ち上がった。

 びっくりしなかったのはだいぶこいつの行動に対する耐性ができたからのようだ。


 「急患でも出たか?」という余裕あるボケツッコミができるくらいにはな。


 「私も天恵や源太郎と同じ学校に転入するってことを決めたの! どう過ごそうか悩んでたけどこれでいいや。なによりすぐに話ができたほうがいいでしょ?」


 俺と天恵は顔を見合わせた。友達の天恵が予想できなかったのだ俺が驚かないわけがない。平然としているのはこの中で一番交流が長く、血のつながりのある文音ちゃんくらいなもんだ。彼女はクッキーを愛くるしい小動物のように可愛くクッキーを食べている。


 正気を取り戻したのか天恵が、「そんなの携帯とかあれば充分でしょ!」

天恵が言う通り情報通信が発達した現代において、連絡に不便さを感じることは少ないだろう。 

 つまり結論をいうとこいつが同じ学校には来てほしくないということだ。嫌いとかじゃなくていいモルモットを見るめるよこの視線などが原因だ。天恵と違った純粋無垢(イノセント・)な狂気(マッドネス) の波動を俺は浴びている気がする。

 それともうキャラが濃い奴はクラスの連中でお腹一杯なんだよ。


 「なにかとすぐ連携というか動けたほうがいいでしょ?」


 専門家であり、親族である文音ちゃんに助けを求めるアイコンタクトを求める。一瞬目を逸らされたあと、「こうなったらなにがなんでも押し通すので無理です」


 文音ちゃんが意思の強そうなのはわかる。そして、燐とは血のつながりがある。決めつけはよくないが意思の強そうな彼女がいうのだから転校をやめさせるのは難しそうだ。


 「うう……でも、せっかく医師免許取ったのにそれを活かすつもりはないの? あんたのお父さんのところで働くんじゃないの?」


 天恵が食い下がる。


 「それなんだけど、お父さんから医者は夜勤以外足りてるからって断られてて……」


 遠回しに断られたな。腕がよくて、かつ見た目もいいのに、断られるのは素人視点からみてもおかしい。病院の内情なんかは知らんが夜勤ができないのなら、昼勤務を夜勤に回せばすみそうだからな。こいつ自身に問題がありそうだ


 「もうちょっと患者さんの気持ちを理解しないさいってさ

他の病院で働くのも考えたけど、もうちょっと待ったほうがいいって強く止められた」


 やっぱりな。いきなり患者の意見を聞かずに手術をしたがるやつなざリアルじゃお前くらいだろうよ。


 「だからってうちの学校に転入してきてなにを学ぶんだ?うちの学校は特進はまだしも、普通科はお前にとっては幼稚園生レベルの授業だぞ」


 言って悲しくなるが事実だ。そして、成績が中間層を激しく上下運動しているやつがこんなこと言ってたら、成績上位陣にブチぎれられそうだ。天恵を除いてだが。


 「そんなことはないと思うよ。ざっと目を通してみたけど、高校の特進であたしの小四レベルだったから」


 「じゃあ私にとっては小学六年生レベルくらいかな?」 


 悪意もなくただただ淡々と事実を並べているだけなのだろうが、ショックはさらに大きくなった。俺が必死こいて勉強している意味なんなんだろうか。


 「それに勉強するだけが、勉強じゃないよ。友達作って集団生活をするのもいい勉強だよ。特に私は同年代の友達が少ないから」


 こっちをみろ。こっちを。お前だよ。お前。こいつは全年代関係なく友達がいないぞ。


 「うっるさいわねっ! 関係ないでしょうがっ!」 


 「こいつも怒ってることだし、よく考えてみたらどうだ?」 


 「怒ってることと関係ないでしょうが!」


 天恵の大声での反論を聞き流し、燐に言葉に耳を傾ける。


 「うーんわかった。考えてみる」


 こんな感じの内容で本日は解散となった。

 当分の出番はないらしいしな。夏休み前から準備を始めて動きだすみたいな感じだろうよ。

などと勝手に猶予があると独断していた。

 がしかし、朱宮燐(あけみやりん)高鈴文音(たかすずふみね)と会ってから急速に色々と動き出した気がする。

 それが俺だけでないことに気づくのはかなり先になるがな。

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