第12話 空気のために
重大発表の前に俺の腹の虫が鳴った。その情けない振動は静かな部屋ではやたら大きく響く
「はぁ~あのさぁ源太郎君。人がせっかく重大発表するって時になんで邪魔するのかな」
マジでムカつくなこいつ。普段の俺なら素直に謝るのだが、めちゃくちゃむかつくので簡単に頭を下げたくない。
「しょうがないよ。もう12時近いし」
基本真っ白な部屋で目立つ黒い二本の針が恋人のように口づけを交わす寸前だった。
「どうする? 適当な店で済ます? なんならおごるけど」
中々にいい提案だった。文音ちゃんの意見はあとで尊重するとして、とりあえず案に乗っかろうとしたとき邪魔が入った。
「ダメ」
「んでだよ」
「さっさと今後の方針について話したい」
「でも、ここで飲食はさすがに許可できない」
「んぐぐ」、と唸る天恵。
正論だし、本人もわかっているから反論できないようだ。冷機を吐き出すエアコンの動作音だけが、気まずい沈黙を埋めるのが気まずくなったので唸っているだけのようだ。
「なら、スーパーで軽く買い物して俺が作るよ」
「ほんと?」
「あぁ確か焼きそばの麺が残ってたはずだ。具材なんかがあればすぐにできる」
「やったー!」と喜ぶ燐は問題なさそうだ。なので文音ちゃんに尋ねる。
「文音ちゃんは庶民的な食べ物は大丈夫か?」
「毒でも盛るんですか? あと自分はそんな比べないでください。たまに言われるんですけどあまりいい気分ではありません」
おっとそれは失敬。これは素直に謝っておかねばな。
「ごめんな。さすがにあんな豪華な家に住んでる家のお嬢様だからさ。あんまりそういった食べ物になれてないかと思って」
言い過ぎたと反省したのか、シュンとした表情で「そんなに気にしていただかなくても結構です。あくまで例えですので」
「おう。食べられないものがあったら、言ってくれ」
「わかりました。あとさっきはすいません……でした……その事故的とはいえ、酷い目に遭わせてしまって……」
頭を会釈ほどの角度を下げて謝罪する。
「謝れて偉い」
すぐに謝れないとかいうやつは自分が小六のときのこと思い出してみろ。振り返ればクソガキだったはずのことが多いだろう。俺みたいに思い出せないやつは論外だ。
「あたしはピーマン嫌い」
んなことは教えてなくていいんだよ。あと間接的にお前に教えてんだよクソガキ。今回は入れないけど食わず嫌いすんな。
燐は元気よく、「私はなんでも食べれる!」と宣言する。
「知ってる。逆に食べれないものが知りたい」
全員の顔を見回すが、異論はなさそうだ。
ってなわけで昼飯の食材調達と今後の方針発表のために、俺達はどこか息苦しかった病院をあとにした。




