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夢見る天才少女と夢を知られた少年  作者: 引田 籠
第二章

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第10話 不純的なつながり

 またも俺は病院を訪れていた。正直気が滅入る。働いている人たちには悪いがどうも消毒用アルコール類の匂いが好かん。

 ただ、今回は少しだけ気が楽だった。“人体じっ……”という嫌な記憶は脇に置こう。今回は、同じ立場の仲間がいるから気が楽なのかもしれない。 いや、単に検査が早く終わったからだろう。以前はもっと時間がかかっていた電極みたいな検査も、今回はすでに二人分終わっている。残すは文音ちゃんの問診だけだ。



 「今までできたことは?」 


 「えっとその……近づくと簡単に相手の気持ちがわかったことです」


 「それは錯覚とかじゃなくて?」 


 「はい」


 「それは当時やってみたらそうだった。私の考えてることを複雑な感情じゃなければずばずば的中させた」


 ここまで来て疑うわけじゃないが、表情とかで読まれたんじゃないか。親戚でそれなりに顔見知りならわかったりするだろう。


 「録画した自分の表情を分析したけど、変化は見られなかった。だから目線、表情、声色なんかで読んだとは思えない。分厚い木の板を隔てた会話でも心を読まれたから」


 ドア越しだが、証人のように燐が当時の状況を語っていく。


 「分厚い鉛なんかでは?」 


 「ほとんど読まれなかった」


 やはりといった表情で天恵(めぐみ)は、「磁覚(じかく)を遮断されるような物質なんかがあるとダメそうね。そこは仮説通りね」


 文音(ふみね)ちゃんはガイガーカウンターかなにか。


 「それは映像? 音声? どっち?」


 「両方です。感覚的なものではないので、どちらともいえませんが」


 「映像は鮮明? それと音声はどんな音声? 自分の? それともその相手の声とか? もしくは人工音声みたいな無機質な音?」 


 燐が仲介のおかげもあってか最初は事情聴取のように重かった会話の空気が、打ち解けかけてきたお見合いのくらいには明るくなってきた。内容自体は変わらず硬いのだが。

 そうなると段々俺の隣にいる検査時間短縮の大きな原動力である燐が仲人のように見えてくる。なんでこいつはこんな嬉しそうなんだ?


 「そりゃ嬉しいよ。友達の少ない二人が仲良くなったんだから」



 この二人は友達になれるのか?

天恵と文音ちゃんは性格がなんとなく似てそうだからこそ仲良くなるのが難しそうなタイプだと予想する。


 「大体のことはわかったわ」


 「当人同士とはいえ、勝手にお見合いを終了してもらっては困る」


 「お見合いなんかしてないっつーの」


 唇を重ね合った関係だろ。と言いたいところだが、天恵はまだしも、文音ちゃんが可哀そうなのであとで天恵と二人っきりにのときにイジろう。


 そういえば、なんで文音ちゃんの居場所がピンポイントでわかったんだ? 当時は深く考えずに動いてたけど、今思えば妙だ。


 「おおまかな特定はあんたもわかってるけど、映像での特定。そっからは磁覚(じかく)なんかを使っての細かい場所の特定。仕組みはレーダーのようなもんねそれら応用して特定に至った」


 さっぱりわからん。わかったのは俺が次学年でも文系に進む決心が固くなったことだけだ。

そこは今はどうでもいいか。問題はなぜ文音ちゃんが俺らのことを特定できたのかだ。


 「そこよ。そこ。現段階ではそんなことできないはずだと思ってた。今でもそう。完成された機械を二つ作ることができれば話は別だけど」


 なんかひっかかる言い方だ。一つ作ればできるんじゃないのか? 


 「それがね。源太郎(げんたろう)の機械はこんな感じになってるの」


 燐自身が紙に描いたような図を広げた。何度か見た覚えがある図のようなものがあった。たしか俺の脳内に設置された機械を拡大したものだったはず。シナプスだかニューロンだか忘れたが、それらに丸い粒がくっついていた。だが、以前みたときと違う部分がある。


 「この機械についてる機械はなんだ新しい部品かなにかか? それとも細菌やなんかじゃないよな?」 


 これ以上勝手にいじられるのは勘弁だ。天恵は医者じゃないし、燐に至ってはまだ断定できないが、天恵以上に倫理観があるのかどうかも怪しい。


 「わからない」


 「わからないってどういうことだよ」


 「まず言っておくと有害じゃないことは確か」


 なんでそんなことが断言できるんだ。


 「正確な時期は断定できなかったけど、機械がそういう判定してくれた。これは確かな情報少なくとも数年前から体内に入った金属物質」


 天恵に代わって燐が代弁する。


 「はぁ? なんだそりゃ何回も検査したんじゃないのか?」 


 「したはず。けど、今までこんな物質体内のどこにも検出されなかったし、そもそも何年も入ってるのに見つからなかった」


 「どんな金属なんだ?」 


 「金だということはわかってる。けど、少し変わってるの……」


 通貨は? とふざけようとしたが、真面目な空気だったので飲み込み、「ゴールドってことか」



 幸い俺にはアレルギーはない。しかし、そんなものをいれられて本当に害はないのだろうか。


 「ごく微量で問題ない。脳のしかも機械にいくなんてことはない。なによりもこの金がおかしい」


 おかしいってどういう意味だ。


 「金と同じ構成で電気を通しやすいはずなのに通さないときがある」


 「んだそりゃ」


 金が電気を通すなんてのは俺でも知ってる。


 「けど、ある一定の電気信号だけがその金属を通れる。そして、機械に干渉(かんしょう)する」


 どんな信号だよ。俺なんてモールス信号(しんごう)すら分からない立場なんでな。

複雑な交通信号ですら迷うくらいなんだから、もっと分かりやすい説明を求む。


 「百聞(ひゃくぶん)一見(いっけん)にしかず。それを今から確かめる実験をするわ。おそらくそれが文音ちゃんがあたしたちを特定したときになんらかの作用を生んだ可能性が高い要因の一つだから」


 大きなため息とともに、実験内容を問いかける


 「なにすりゃいい?」


 「なんか知らないけど。あんた文音ちゃんと仲良くなったんでしょ?」 


 「まぁそれなりにはな」


 音楽、舞台、小説なんかで話がそれなりに盛り上がった。それなりだったのは彼女にとって俺が異性で年上だからという理由だけではなく、彼女自身のコミュニケーション能力によるものだろう。もしくは超能力者という特殊な力のせいなのかもしれない。そうじゃなきゃもうちょい盛り上がれたと個人的には思ってる。


「じゃあ今から説明するからその通りにやってみてちょうだい」


 そういって、天恵は俺達のいる部屋の扉を開けて入り、俺に耳打ちをし、実験内容に関してやってほしいことを伝えた。


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