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26 結婚できない理由

今朝、第1、2、20、21話を改稿しました。

改稿版はより不快な感じに仕上がっていますが、終盤の展開をより効果的に見せるためこのようにさせていただきました。

ただ、改稿部分は読まずとも、後のお話は繋がっていきますので、そのまま読み進めていただいても問題ありません。

どうぞよろしくお願いいたします。

 クリスティーナはジョアンとケイトを呼び出し、彼らに護衛を頼んで、こっそりと王都で公演中だというジョバンニの許へと訪れた。


「わぁ! お姫様じゃないか! わざわざ俺に会いに来てくれたんか?」


 舞台を終えたジョバンニを裏口から呼び出してもらうと、クリスティーナの顔を見たジョバンニはすぐに飛んできた。


「ずっと、このお使いの人たちしか寄越してくんないから、もう会えねぇかと思ってたよ」

「ジョバンニ? あなた、私が依頼したお芝居と演目の内容変えたでしょう?」

「あ……」


 ジョバンニはしまったという顔をした。

 ジョバンニはクリスティーナの指示通り、聖女と英雄のお芝居で聖女は悪魔を倒した後、聖女の力を失ったという話を作った。

 だがその後、英雄は聖女と結婚し国の王になったと勝手に話を付け加えた。


「いやー、だってさ、芝居面白かっただろ? ほら、流行りのラブロマンスを入れないとウケないんだよ」

「頼んでおいて申し訳ないけど見てないわ……」

「はあっ!? 見てねぇの!?」

「ごめん……今すごく忙しいの……」


 文句を言いに来たはずなのに何故かクリスティーナが謝る羽目になった。


「わかった! めっちゃ良い話になってるから、台本だけでも持ってって読んでくれ!」


 ジョバンニはクリスティーナに台本を渡す。


「ありがとう……。って、そうじゃなくて! 話の最後を変えて欲しいのよ! あの、英雄と聖女が結婚というところ!」

「ええっ……!? い、いやだよ。実際にあった話だから民衆にウケてるってのもあるけど、それ以上にみんな英雄と聖女のその後に期待してんだよ! さらに続編の公演が決まって、もう舞台のオーナーから前金までもらっちまってるから、今さらやめらんねぇよ!」


 その話を聞きクリスティーナは「ええっ、そんなぁ……」と嘆く。

 お金までもらっているとなると、今さら演目を変えればきっとジョバンニの旅一座の評判が悪くなる。


「仕方ない……。こっちはこっちで何とかするわ……」

「あわわ……もしかして、お姫様、本当に英雄のにーちゃんと……?」


 クリスティーナはジョバンニをきつく睨む。


「そうなりそうで困ってるからここまで来たのよ! 私とランスは結婚するわけにはいかないのよ」

「あちゃー……! ごめんよ、お姫様……」

「もういいわ。こちらこそ、ごめんなさい。聖女の力が無くなったってことはちゃんと噂として広まっていたわ。あなたたちのお陰よ。ありがとう」

「ははっ、次こそはちゃんとするから、また何かあれば言ってくれ」


 ジョバンニは苦笑いをしてぽりぽりと頬をかく。


「次こそは、ね……! 突然ごめんなさいね。これ、もらって行くわ」


 クリスティーナはジョバンニの書いた台本をもらって城に帰った。



     ◇



 次の会議でランスロットは国王になることを拒否し、クリスティーナが必死に説得をするという場面が見られてアレクシスは不思議に思った。


 そしてランスロットだけを別室に呼んで話を聞く。


「なぜお前は王になることを引き受けない。平民出身の辺境伯家次男のままではクリスティーナと一緒になることはできないのだろう? クリスティーナが欲しくないのか? いらないのなら私がもらうぞ?」


 そう言われてランスロットはアレクシスを強く睨む。


「欲しいですよ! 誰よりも姫様のことを手に入れたいと思っている。でも……俺が王家の血を引いていることを公表すれば俺と姫様は結婚できない……!」


 ランスロットは強く拳を握りしめる。


「は? なんで結婚できないなんてことになる?」


 アレクシスはランスロットの言うことが理解できずに目を丸くする。


「王家は六親等以内の結婚を認めないという法がこの国にはあるんです」

「なんだその法は?」


 アレクシスは怪訝な顔をする。


「意味がわからないと思いますよね。俺もそう思っていました。でも今ならわかる。きっと王家から聖女を産まれにくくするものなんです」


 聖女の血が流れている王家が近親婚を繰り返せばどんどんと血が濃くなり、聖女が産まれやすくなる。

 聖女は国を豊かにするが、他国からも狙われやすく、歴代の王は自分の娘を守るため、聖女を産まれにくくするために法を作った。

 ランスロットとクリスティーナは従兄妹で四親等に当たるためいくら結婚したいと思っていてもこの法に触れる。


「この国は我が子を大事にする国なんだな……」


 何故かアレクシスはその話を聞いて小さく呟き遠い目をした。だが、すぐにランスロットに厳しい目を向ける。


「それで? お前のクリスティーナに対する想いというのは、お利口さんにお前のじーさんたちの言いつけを守っていられる程度の想いなのか?」

「そんなわけ──」

「じゃあ、することは決まってる。アイテール帝国は賛同すると言っただろう?」


 アレクシスは緩く笑って、ランスロットは苦い顔をする。


「あなたは……あなたはそれでいいんですか?」


 アレクシスだってクリスティーナが欲しいと言っていた。ランスロットは何度もそういう場面を目撃しており、クリスティーナの心はアレクシスにあるのでは、とずっとハラハラしていた。


「私は、クリスティーナの涙はもう見たくないからな」


 クリスティーナは聖女になるためにアレクシスに抱かれたが、そのときランスロットを想って涙し、嗚咽を漏らし、アレクシスに抱かれながらも「ランス」と小さく呟いていた。

 そのとき胸の痛みを感じたのは確かだが、クリスティーナはそれ以上に辛かったのだろうと思う。彼女にこれ以上辛い思いをして欲しくない。


 クリスティーナがランスロットを選ぶのなら自分は身を引こう。クリスティーナには幸せになってもらいたい。



     ◇



 そしてランスロットは次の会議で国王になることを決断した。


「ありがとう、ランス! 私、精一杯サポートするから、一緒に頑張りましょう!!」


 クリスティーナに両手をがっちり握られて、かわいい笑顔を向けられキュンとした。

 いやいや、決して邪な想いだけで王になることを決めたわけではない。


 ずっと国を支えてきたクリスティーナの負担を引き受けたかった。そして今度こそ何があっても完璧にクリスティーナを守りたい。

 クリスティーナが大切に守ってきたこの国を今度は自分が引き受け守っていく。ランスロットに期待の眼差しを向けてくれる国民のためにも。


 そしてアレクシスは国王になるランスロットの妃にはクリスティーナを据えるべきだと発言した。


「法なら改正すればよい。宗主国に倣って属国も同じような法に改正することなどよくあることだ。それに二人の結婚の件はルーナ王家の問題だけで国民に影響の出るものでもない」


 聖女の力を持っているクリスティーナを国の重要ポストに就いて欲しいと思う貴族は多く、女王にならないのであれば、王妃という立場でも良い、とアレクシスに賛同する者は多かった。


 それに対し、クリスティーナは曖昧な表情で「そんなこと、急いで決めなくてもいいじゃない」と返事をして、法改正は保留となった。



     ◇



 それから数日後のことだった。

 ランスロットが急にクリスティーナの執務室に訪れた。


「みんな下がってくれ」


 ランスロットは部屋にいた従者や侍女たちに部屋から出るよう指示をした。

 クリスティーナはランスロットの手にある古い文献を見てギクリとした。


「姫様……。姫様はどうやって聖女の力を手に入れたんですか?」


 ランスロットは険しい表情をしている。


「それは……お前には関係のないことよ……」


 真っ直ぐにクリスティーナを見つめるランスロットから目を逸らす。


「関係のないこと……?」


 クリスティーナの言葉にランスロットの形の良い眉が片方だけピクリと動く。


「俺と結婚したいと言ってくれたのに……関係のないことなんですか?」

「だって、どんなに私がお前を想っていても、私たちは従兄妹だからどうせ結婚できない」

「それは! 法改正をすればいいって……! アイテール皇帝も後押しをしてくれている」


 反論するランスロットにクリスティーナは黙ってしまう。


「姫様の気持ちがわかりません。俺のことを好きだって言ってくれたのに、いざ結婚できそうな状況になると結論を先延ばしにしようとする」

「…………」


 ランスロットはクリスティーナから視線を外す。そして、躊躇いながら小さく疑問を口にする。


「アイテール皇帝に抱かれたから……?」


 !


 ランスロットの発言にクリスティーナの胸がドキリと跳ねるが、クリスティーナは口を開かない。


 ランスロットが手に持っていた古い文献を執務机の上にバンッと叩きつける。


「歴代の王が引き継ぐ鍵で開く書庫にあったものです。ここに一般には知られていない聖女にまつわる記述があった」


 その内容はクリスティーナも知っている。クリスティーナは王女だから同じ文献を父王から渡され読んだことがある。


「聖女になるには、男性から愛される必要があると……処女(おとめ)のままでは聖女として覚醒することはない、と……!」


 とうとうランスロットに知られてしまった。クリスティーナは俯いて目を瞑り小さく震えた。


「アイテール皇帝が……好きなんですか……?」


 クリスティーナは一呼吸置いて言葉を発する。


「好きじゃないわ」


 ゆっくりと目を開いてランスロットを見る。


「じゃあ何で!? ま、まさか……! 無理矢理……!?」


 疑わしいのはランスロットがリクウールという一時的に身体を昏睡状態にさせられる毒に侵されたあの一夜。

 もしかして自分が守ってあげられなかったときにクリスティーナはアレクシスに無理矢理襲われてしまったのか。


 ランスロットは顔を青くした。


「違う!! アレクはそんな人じゃない!!」


 クリスティーナは必死に否定をし、アレクシスを庇うような言い方にランスロットの瞳は揺れる。


「じゃあ、なぜ……」


 それは言えない。

 ランスロットを助けるためにこの身をアレクシスに捧げたと聞いたらランスロットは絶対に怒る。

 怒られたくないというわけじゃない。ランスロットは自分の身体など、どうでも良いからそんなことして欲しくなかったと言うのが想像できる。

 クリスティーナは自分がランスロットに大切にされていることを良く知っている。ランスロットはクリスティーナを守りたがっている。

 それなのに自分のせいでクリスティーナが純潔を失ったと知ると悔やみそうで嫌だった。


「やっぱり、言えないのか……」


 ランスロットが顔をくしゃりと歪ませる。


 するとそこでコンコンと執務室にノック音が響く。


「クリスティーナ殿下、アイテール皇帝陛下が明日自国に戻るそうで挨拶がしたいとおっしゃっています」

「す、すぐいくわ!」


 女官の声が聞こえて、クリスティーナは逃げるように部屋を出ようと扉へ向かう。


 !?


 するとランスロットに腕をグイッと引っ張られた。


「アイテール皇帝には渡さない」

「んっ……!?」


 クリスティーナは驚きに目を見開く。ランスロットにきつく腕を掴まれ、顔は急接近する。そしてその唇はクリスティーナのそれとピタリと重なった。

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