17 媚薬のせい
「終わった……?」
クリスティーナは泣きそうな顔で問う。
「ああ」
アレクシスは表情を消して返事をする。
「どうだ? 聖女にはなれたか?」
クリスティーナは目を瞑り、自分の身体の血の流れに集中する。何か温かな力がぽかぽかと込み上げる感覚がした。
「たぶん」
今までと違う感じがする。
「アレク……あなた……?」
アレクシスは手巾をすぐそばの水桶に浸して絞る。そしてそれをクリスティーナに渡してやった。
「早くランスロットのところへ行った方が良いんじゃないのか?」
「う、うん……でも……」
クリスティーナは受け取った手巾で身体を拭いて、チラチラとアレクシスのことを見る。
「早く行け……それとももう一度するか?」
アレクシスがわざとらしくニヤリと笑って見せる。
「行ってくるわ」
クリスティーナは眉根を寄せてすぐに服を着てアレクシスの天幕を出た。
一人残されたアレクシスはふう、と大きなため息を吐いた。
◇
アレクシスとの情交は甘かった。
クリスティーナは快感を感じるとそれが嫌で自身のことを「はしたない」と表現し、泣きそうになった。だが、アレクシスは決してそれを笑ったり揶揄ったりはしなかった。
「はしたなくない。これはランスロットを助けるためだけのものだ。快楽も、興奮も、お前の感情じゃない。媚薬の効果のせいだ。お前はランスロットのために聖女になろうとしているだけだ」
「…………」
欲しい言葉をくれるアレクシス。
「クリスティーナ。私はお前が好きだ。愛している。姫のくせに剣を持つ姿も、賢く前向きで、男のフリして戦おうとする姿も、好きな男のためにここまで出来るその心意気も、お前の全てを好ましく思っている」
アレクシスの口から初めて聞く「好きだ。愛している」という台詞。複雑な思いでその言葉を聞く。
「今から私はお前を愛するが、お前は私に応えようなどとしなくていい。ずっと目を瞑ってランスロットを思い浮かべていろ」
「うん……」
クリスティーナはギュッと目を瞑る。そしてアレクシスの優しさを理解した。
一方、アレクシスはランスロットから奪ってやりたい凶暴な気持ちと、クリスティーナに優しい愛情を持って接したい気持ちの狭間で揺れていた。
表情には出さないが、アレクシスにしては珍しく余裕がない。それでもクリスティーナには精一杯甘く優しく丁寧に接した。
だが、クリスティーナはランスロットを思って涙し、嗚咽を漏らし「ランス……」と呟いた。
「っ……!」
クリスティーナが小さくランスロットを呼ぶ声が聞こえ、アレクシスの胸がズキンと痛む。
そんなもの覚悟の上じゃないか。アレクシスはグッと奥歯を噛み締める。
クリスティーナがランスロットを好きなことを知っていて抱くことを決めたんだろう。
アレクシスは胸の痛みに言い聞かせる。
そして一瞬目を閉じてから「すまない」と呟いた。
「クリスティーナ……! 愛してる…………」
アレクシスは愛を告げ、クリスティーナの純潔を奪った。
クリスティーナはずっと目を瞑ってランスロットを思っていた。だが、結局クリスティーナは目を開けてしまう。
ゆっくりと絡み合うアレクシスとの視線。
自分を抱くのはランスロットではなく…………
「アレク……」
思わず名前を呼べば、アレクシスは愛おしいといわんばかりの視線を向けて、クリスティーナに口づけた。
これは全部媚薬のせい……
そう言い訳をして、クリスティーナはアレクシスの口づけを受け入れた。
◇
クリスティーナはアレクシスの天幕を出て、ランスロットのもとへ急いだ。
――今、助けるわ……ランス……!
ごめんなさい。
できるだけ毎日頑張りたいのですが、書く方が追いついていなくて、明日の更新が難しいかもしれません。
書け次第投稿しますね。
お読みいただきありがとうございました。




