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15 毒

ごめんなさい!

4/26に投稿した第15話が納得できなくて4/27大幅改稿いたしました。

4/26に投稿したお話をお読みくださった皆さま申し訳ございません。

今後のお話はこちらの改稿版の方で進めさせていただきます。

「ランスロット、バルミュ王国からの援軍で大将にバルミュ王国第四王子のセドリック王子が出るという情報を得た」

「俺は大将であるセドリック王子を討てば良いんですね」


 アレクシスはバルミュ王国からの援軍を迎え討つ直前にランスロットを呼び出した。


「いや、バルミュ王国の者には黒真珠の指輪をどうやって盗み出したのか聞き出す必要がある」

「黒真珠の指輪をゼクト公爵に渡したのはバルミュ王国の人間だったのか……!」

「ああ。ちょうど良いから、ここで捕らえて捕虜にしてバルミュ王国から色々と聞き出そう」

「わかりました。生け捕りにしろということですね」


 アレクシスはにやりと笑って頷いた。


「バルミュ王国の人間はルーナ王国には良い顔をしていたみたいだが、結構小狡い手を使ってくる。セドリック王子はお飾りの大将だから強くはないが油断はするなよ」

「わかりました」



 バルミュ王国軍とは国境付近で戦が始まった。

 やはりバルミュ王国軍の兵の数はあまり多くなく、帝国軍の半分程度だった。

 ルーナ王国軍と合わせてようやく帝国軍を上回る数だったので、ギリギリの兵力しか出さなかったのだろう。


 圧倒的な兵力差にバルミュ王国軍はすぐに撤退を決めた。


「ランスロット! 王子が逃げるぞ!」


 後方で敵を討っていたアレクシスが声を上げる。


「逃すか!」


 ランスロットが馬でセドリックを追いかけた。


「ぐはっ……!」


 ランスロットがすごい速さでセドリックの前へ回って、護衛と思われる男を斬り、セドリックの隣で護衛の男が落馬した。


「ちっ……!」


 セドリックは反対方向へ逃げようとした。が……


「残念だったな……。もう逃げ道はないぞ」


 アレクシスが自軍の兵を引き連れてセドリックを取り囲んでいた。


「くそ……! これまでか……」


 セドリックは馬を降り、剣を捨てて両手を上げた。


「やけに諦めがいいな。捕縛しろ」


 アレクシスが捕縛を指示すると「俺が」とランスロットが馬を降りて前へ出た。


「うわっ……!」


 ランスロットが近づくと武器を捨てたと思われたセドリックが袖口に隠し持っていたナイフを手に持って振り回し、ランスロットは飛び避けた。

 そのままの勢いでセドリックはアレクシスに向かってナイフを振り上げた。


「抵抗しても無駄だ!」

「ぐっ……!」


 だが、アレクシスはナイフに当たらないよう、セドリックの腕を捻り上げ、カランとナイフが地面に落ちる。

 そしてアレクシスと共に来ていた兵士がセドリックを縛り上げた。


「大丈夫か?」


 王子の振り回したナイフはランスロットの腕を掠めて、ランスロットは腕を押さえていた。


「擦り傷です」

「なら良いが……。敵兵は撤退している。本陣へ戻るぞ!」

「はい」


 アレクシスとランスロットはクリスティーナの待つ本陣へ向かって馬で駆け出した。



     ◇



「バルミュ王国からの援軍は撤退した。我が軍の勝利だ」


 偵察部隊がルーナ王国軍と戦った跡地を確認したが、やはり多くの兵士が戦闘不能状態で、なんとか撤退できた兵士もしばらくは戦うことの出来ない状態であるという。


 ――ごめんなさい……


 クリスティーナはその話を聞いて兵士であろうと自国民をそんな目に合わせたことを心の中で謝罪した。




 帝国軍は再びルーナ王国の王都に向かって進軍し、その日の野営地は向かうときだった。


「うっ……」


 馬に乗っていたランスロットが苦しそうにしておりクリスティーナは気になった。


「ランス? 顔色が悪いけど大丈夫?」

「平気です……」


 そう応えるランスロットの顔は真っ青でとても平気そうには見えない。


「疲れが出たのかしら? もう野営地に着くはずだから着いたらしっかり休んで……」

「心配かけて、すみません……」


 なんとかそう返事をしたが、身体がどうもおかしい。やたらと脂汗が出てきて、眩暈もするし、視界がぼやける。


 必死に身体を支えて馬に乗り、野営地に着いて馬を降りたとき、足元がふらついて膝をついた。


「ランス?!」


 突然、前のめりに膝をついて脂汗をポタポタ流すランスロットに驚いてクリスティーナは駆け寄った。


「どうした?」


 異変に気付きアレクシスもやってきた。


「ランスが……!」


 おかしい。息がしづらいし、胸が苦しい。とてもじゃないが身体を起こしてはいられない。


「ううっ……」


 ランスロットはそのままバタリと地面に倒れ込んだ。


「ランス!!!」


 一体何が起こったのかわからない。倒れたランスロットは胸を押さえて苦しんでいる。


「おいっ! 救護班!!」


 アレクシスは倒れてしまったランスロットを抱えて何度も「しっかりしろ」と声をかける。

 アレクシスの指示で急いで救護用のテントが建てられ、ランスロットは救護用の簡易な寝台に寝かされた。


「ねぇ、ランスはどうしちゃったの!?」


 苦しそうにもがくランスロットを見ているアレクシスに問い詰める。

 顔は真っ青で、汗もすごい。普通の状態とは思えない。


「まさかっ……!」


 王子のナイフによって切られているランスロットの軍服の腕の部分をビリッと引きちぎって、擦り傷だと言っていた腕を確認した。


「毒か……!」


 普通は赤く線が入る程度のナイフで出来た傷口が紫色になっていて、周りの皮膚は黒く変色している。


「毒!?」

「おそらくセドリック王子の持っていたナイフに塗られていたんだろう……。救護班! なんの毒かわかるか!?」


 救護班の者が腕を診る。


「この毒の回りの速さからいくと猛毒のようですが……毒の特定までは……。ですが、早く解毒しないと……」


 命が危ない。

 だが、解毒剤を用意するには毒の種類が何かわからなければそれが出来ない。


 バルミュ王国の第四王子は捕虜として捕縛したと聞いている。今夜は同じ野営地で過ごし、明日には帝国へ護送する予定だ。


 クリスティーナは捕縛されているセドリックのところへ急いだ。


「クライヴ様? どうしました」


 拘束した王子を見張る兵士が聞く。


「ちょっとどいて!」


 軍師扱いをされているクリスティーナは兵士たちより立場が上だ。すぐに兵士たちは前を退いた。


 クリスティーナは懐から短剣を取り出し、セドリックへ向けたため、セドリックは顔を青くして、グッと目を瞑った。

 だが、クリスティーナがセドリックを傷つけることはなく、すごい速さでセドリックに噛ませてあった布の猿轡を切り外した。

 セドリックは短剣を見た瞬間、切られる覚悟をしていたため、猿轡を外され驚いた顔をしていた。


 クリスティーナは両手足を拘束されているセドリックの胸ぐらを掴んで顔を近づける。


「ランスロットを斬ったナイフ、なんの毒を塗っていたの!?」

「…………」


 セドリックは口を閉ざしたままニヤリと笑う。


「答えなさい!」


 クリスティーナは胸ぐらを掴んだままセドリックの首に短剣を突きつける。


「…………」


 それでもセドリックは口を閉ざしたままだった。


「脅しなんかじゃないわよ!」

「ひぃっ……!」


 クリスティーナは短剣を持った手にグッと力を入れ、セドリックの首に短剣の先がめり込んで、セドリックは首の痛みに恐怖を感じた。


「早く答えて……!」

「ううっ……」


 クリスティーナがセドリックの首にさらに短剣をめり込ませて、セドリックの首から血がだらだらと垂れてきて、セドリックは慌てた。


「答える! 答えるからやめてくれ!!」


 クリスティーナは手の力を抜いた。


「あの毒はなんの毒なの!?」

「ルドシアンだ……」

「っ……!」


 セドリックが小さく呟き、クリスティーナは大きく目を見開いて息を呑む。


 ルドシアンは特殊な環境下で育つ植物で、その蜜が猛毒になるのだが、解毒剤が存在しないことで有名だ。


 クリスティーナはすぐにその場から駆け出しランスロットのもとへ向かった。


 すぐそばに来ていたアレクシスはセドリックの見張りの兵に指示を出す。


「ルーナ王国の革命軍にルドシアンが渡っていたら厄介だ。入手ルートと流出ルートを吐かせておけ」


 兵士は「はっ!」と返事をした。




「ランス! ランス!! お願い、死なないで!」


 クリスティーナは横たわるランスロットに声をかける。ランスロットは胸を押さえて苦しんでいて、とても返事をできそうな状況ではない。


「毒の種類はルドシアンだ」

「ルドシアン……! そんな……」


 アレクシスが救護班に伝えると救護班も苦い顔をした。


「助かる方法は?」


 アレクシスは答えを知っているが一応聞く。


「ありません……」


 救護班の一人が俯いて応える。

 アレクシスは拳を握りしめ顔を歪める。



 苦しんでいたランスロットが少しづつ静かになる。


「ランス……! ランス……!?」


 しっかりと目を瞑って顔がどんどん白くなっていく。唇は真っ青だ。


「ルドシアンの毒は強力です。おそらく保って一日でしょう……」


 救護班の者はランスロットは助からないと言っている。


「そんな!! いや! いやよ、ランス!! 死なないで!!」


 クリスティーナは横たわるランスロットに突っ伏して涙を流す。


 解毒剤が存在しないものはどうしようもない。アレクシスは「くそっ……」と小さく呟き、諦めたように救護班のテントを出る。




 クリスティーナは父を失った。

 今度はランスロットまで失うのか。


 父を失ってからここまでランスロットがいたから生きてこられた。

 ずっと、ずっと、ランスロットが支えてくれた。


 ──俺は姫さんの騎士だから!


 ランスロットはそう言ったが、クリスティーナにとっては自分の騎士なんかではなく大切な人だ。

 いつの間にか姫と護衛騎士という括りを超えた、大切な存在になっていた。


 ──姫様……! ローヴァン大公とゼクト公爵を討って、王城を陥落し、国を取り戻すことが出来たら、聞いて欲しい話があります。


「まだ……なんの話か……聞いてないわよ……!」


 クリスティーナは白い顔で眠るランスロットを眺めながらぼろぼろと大粒の涙を流した。

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