初めての対面
風が気持ち良い。ここで一生寝てたい。
「わぁー!見てみて!この子じゃない?」
「カストル、ポルックス、近すぎ。少し離れて。」
この声は、ルーチェと、あとは誰だろう。
少年が二人かな。
ぼんやりとした意識の中、私はゆっくりと起き上がった。
目を擦りながら開けると、森の中で会った時の姿で二人の少年の頭の上に手を乗せてるルーチェが立っていた。
「ルーチェ?久しぶり。その子たちは?」
「僕はカストル!こっちは弟のポルックスだよ!星の双子って呼ばれてるんだー!」
銀髪の少年が元気よく自己紹介をしてくれた。
星の双子ってたしか、私のことを歓迎してくれたあの子たちか。
「兄さん、ルナさんが困ってるよ。」
冷静な瞳で兄を見つめる金髪の少年、この子がポルックスか。
やっぱり、私はここでは『ルナ』って呼ばれるんだ。
「自己紹介は終わり!あまり時間がないんだから、早くいきましょう!私たちの庭へ!」
ルーチェに引っ張られ、私は奥に進んだ。
『茶会の始まりよ!』
ルーチェが片手をあげると、突然目の前に扉があらわれた。
古びた木製の青い扉。
「私は先に行くから。その後にカストルたちとこっちにきてね。」
ルーチェはそれだけ教えてくれると、扉の中に入ってしまった。
パタン。と、扉が閉まると、私たち三人は数秒間何も言わずにその場で立ち止まった。
ど、どうしよう。
「ルッ、ルナさん、多分ルーチェ様は私の後についてこいと言っているのだと思う!早く扉を開けて行こう!」
まだ会って数分だけど、これだけはわかる。
ポルックスは空気を読むのが得意みたい。
「うん!」
「三人共ー!早くきてー!」
ルーチェの声が扉の向こうから聞こえ、私たちは頷き合って、ルーチェの後を追った。
「いらっしゃい、ルナ。ここにいる人たちは、あの『サーバー』にいる者たちよ。」
足を踏み入れ、2人の手を繋ぎながら目を開けると、知らない人や動物たちがみんな私のことを見ていた。
さーばー?
聞いたことのない単語だなぁ。
パパたちは知ってるのかな。
「…そのうちわかるはずよ。せっかくの歓迎会だから、楽しみましょう。1人ずつ、挨拶してね。」
皆にルーチェが伝えると、全員が手を挙げ、歓声を上げた。
満足したような顔で後ろを向き、ルーチェは私の肩に手を置き、囁いた。
彼女の手から光が漏れ、体がポカポカとあったかくなる。
「ここに来てからの初めての加護は私から。みんないい子達だから、仲良くしてね。」
可愛らしい笑顔で、前と同じくルーチェは光となって消えてしまった。
「二番目と三番目は僕たちから。パーティ、楽しんでね。」
2人が私の手を持つと、次は星が空に浮かび上がった。
「「後で確認してね。」」
バイバイ。と、手を振ってくれると、彼らは空高く飛び上がった。
…どうしよう。1人になっちゃった。
少し心寂しくなり、俯いていると、見たことのない数の真っ白い毛並みのウサギが近づいてきてくれた。
『だいじょうぶ?』『ルナ様元気ない。』『僕たちの毛並みもふもふ!』『元気出して?』
ウサギたちの声が聞こえる。
これが双子たちがくれた加護なのかな。
そっとうさぎを持ち上げて撫でてみると、確かに毛並みがもふもふだった。
そうだよね。私は一人ではないんだから。
「ありがとう。」
うさぎを下ろすと、金色の毛並みのウサギが近寄ってきた。
『ルナ様。お初にお目にかかります。私は月兎族の長、イナバと申します。』
礼儀正しい兎は、一瞬にして人間に変身した。
王室の人間と同じ金髪。でも、少し違うなあ。
「王室の人間に似ているでしょう?私は民の王とは血のつながりはないわ。私の金色の髪は光の女神様から受け継いだものなのです。」
確かにルーチェに似てるかも。
王室の金髪よりも光り輝く彼女の髪が風に靡く。
「後ろでたくさんの人たちが待っているみたいですね。私からの加護を授けます。内容は…秘密です。」
イナバの後ろでおっとりとしていた兎が、私の肩に飛び乗った。
『手を出して。神様からの贈り物。』
優しい声が聞こえ、言われた通りに手を少し前に出すと、空から細く綺麗な輪っかが落ちてきた。
奇跡的に掌の上に乗ったネックレスは、不思議な力で自動的に私の首につけられた。
イナバの瞳のように輝く黄金の宝石の真ん中に、見覚えのある文字が刻まれた。
この世界では使わないけど、とても懐かしい言語。
『この言葉を思い出す日まで、持っておいてあげてください。私からあげれるものはこれだけです。』
優しいイナバの声が聞こえると、彼女は気がついたら消えてしまっていた。
みんな、どこに行っているんだろう。
疲れ果てて、私は椅子の上に座った。
次にお話しする人が歩いてきた瞬間、視界が暗くなり、私の体は後ろに倒れていった。




