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廃カス課金プレイヤーがチート知識で神職『リミットブレイカー』になるまで  作者: なんくるないさ~
第一章 始まりの街編

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1-7 この世界で初めての戦闘



「ですから! 私はただ、先ほどそこの冒険者ギルドで正式に登録を済ませてきたばかりの、新米冒険者でしてね!? 不法侵入でもスパイでもないんですよ!!」


衛兵詰所の冷たい空気の中、おれは必死の形相で、出来立てホヤホヤのギルドカードを門番たちの鼻先に突きつけていた。


さっき作ったばかりのカードに刻まれた『Hランク:アキヒロ』の文字と、ギルドの魔力刻印を見た門番たちは、ようやく「チッ、本当にただの身元不詳の新人かよ……」と忌々しそうに腕の力を緩めてくれた。


「ったく、紛らわしい真似しやがって! 入街記録がないってことは、裏の市場の搬入口からでも迷い込んだんか?どっちにしろ、次は絶対にないからな!」


お説教という名の長々とした尋問を終え、なんとか見逃してもらったおれは、文字通り這う失意のまま東正門をくぐり抜けた。


……まあ、結果オーライだ。名誉はこれ以上ないほどに粉砕されたが、釈放されたのだから問題ない。




おれは街から真っ直ぐに伸びている、のどかな田舎風の街道をひたすら歩き始めた。


今からおれが向かおうとしているのは、この地域に存在する通称・最弱の初心者迷宮(ダンジョン)だ。


この世界において、唯一の『Hランクダンジョン』として指定されており、ここ以外のすべての迷宮は、最低でもFランク以上の難易度となる。


出現するモンスターは弱く、ボスらしいボスもおらず、さらに言えばドロップするお宝にも何の旨味もない。


普通の冒険者にとっては、わざわざ足を運ぶ価値すら見出せない、絵に描いたような不人気スポットだ。


「しかし、だからこそおれにとっては、最高の聖地(パラダイス)なんだよなぁ」


不人気ゆえにライバルの冒険者が全くおらず、他人の目を気にせずに動ける。


それが、次の職業である【盗賊(シーフ)】の転職条件を満たすのに、最も適しているのだ。



しかも、あのダンジョンには、全プレイヤーが喉から手が出るほど欲しがる『ある重要な初期アイテム』が隠されている。


おれはまずそれを是が非でも最初に入手しておきたかった。


それが、今回この迷宮を最初の目的地に選んだ一番の理由だ。




さて。

いくら安全と言われる街道を進むからといっても、ここはゲームの画面ではなく本物の異世界。


100%モンスターが出ないという保証はどこにもない。


森の近くを通る街道なんかには、たまーに好戦的な野生動物や魔物が飛び出してくることもある。


そして、おれは今、その危険な森のエリアにあえて自ら足を踏み入れようとしていた。


武器は、さっき雑貨屋で買った果物ナイフが1本きり。


こんな安物を振り回してガチの戦闘なんてしたら、間違いなく刃がポッキリ折れるか、耐久値が尽きてスクラップになっちまう。



そこで、満を持して使用武器が『己の拳』である、【武道家(グラップラー)】の出番というわけだ。


神殿での4連続重課金により、おれの初期パラメータは一般人の数倍に跳ね上がっている。


こんな最序盤の森に出てくる程度の雑魚モンスター相手に、苦戦する要素など万に一つもない。


おれはスッと表情を引き締め、全方位の気配を警戒しながら、鬱蒼と生い茂る森の中を、道なき道を進んでいった。




しばらく木々の間を突き進んでいると、少し開けた草むらの遠く方で、何かがモゾモゾと動いているのが見えた。


おれは足音を殺し、警戒心を極限まで上げてじりじりと近付いていく。


大木の陰から少し離れたところでそっと観察すると、そこにいたのは、頭部に立派な一本角を生やした、小犬ほどの大きさのウサギ――【ホーンラビット】だった。


さぁて、記念すべき、この世界での「初めての戦闘(ファーストバトル)」だ。


おれは深く息を吐き出し、気持ちを落ち着かせ、気合いを入れ直した。



――ガサッ。


おれはあえて物音を立ててホーンラビットの前へ姿を現し、前世で幾度となく操作した空手のような基本の構えを取る。


ホーンラビットはこちらの存在に即座に気付き、耳をピンと立てて威嚇するように警戒してきた。


強靭な後ろ足に、ぐっと力が込もっているのが見て取れる。


ホーンラビットの基本攻撃パターンは、その鋭い頭の角を使った「直線的な突進」のみだ。


正面の射線上にさえ入らなければ、恐れることは何もない。


おれは円を描くように、すり足の独特なステップで、ホーンラビットの横側(サイドポジション)へと回り込めるように移動を開始した。


じりじりとした睨み合いに痺れを切らしたのか、ホーンラビットがキィッと鋭い鳴き声を上げ、地面を蹴って突進してきた。


おれは素早く小さく円を描いて体をかわし、直線的に突進してくるホーンラビットの真横へと滑り込む。と同時に、左右のパンチを同時に叩き込む。


パパンッ、と肉を叩く音が響く。


だが、これはまだ威力を極限までセーブした、軽く当てただけのパンチだ。


ウサギは少しよろけたものの、すぐに体勢を立て直し、怒り狂ったように再びおれ目がけて突進を仕掛けてきた。


おれは再び横側へとステップで避けると、今度は左足を鋭く振り上げ、ウサギの脇腹を蹴り上げる。


これもまた、威力はあまり乗せていない。


弾かれたウサギは着地し、またしても判で押したように同じ直線突進の行動を取る。


3度目の突進。同じようにサイドへ避けて、今度は右足でのミドルキック。


4度目の突進。今度は、突進のすれ違いざまに、こちらの頭部を軽くぶつける頭突き。


よし……! お膳立て(フラグ)は完璧に整った。


またしても同じように直線的な行動を開始しようとしたホーンラビットに対し、おれは今度は避けるのではなく、自らその懐へと素早く接近し、瞬時に深く腰を落とした。


武道家(グラップラー)の真骨頂――初期スキル【正拳突き】を発動する。


―――ドカンッ!


凄まじい衝撃音と共に、ホーンラビットの体が信じられないスピードで吹き飛んでいき、ウサギはその勢いのまま後ろの大木へと激突した後、ベシャリと地面に倒れ伏し、二度と動かなくなった。


ふぅ……。

うん、まあ、初期ステータスでおれのボーナス込みなら、こんなもんかな。



さてさて、お楽しみのシステム的な結果はどうだったかな、と。


「ステータス、オープン」


 アキヒロ


 HP : 50/50 MP : 10/10 SP : 55/60

 

 STR : 9 DEX : 6 VIT : 5 AG I : 4

 

 INT : 1 MND : 1 LUK : 1


【職業】

 武道家☆1(1/10)


【職業履歴】

 剣士☆1(0/10)、槍士☆1(0/10)、戦士☆1(0/10)


【スキル】

 スラッシュ、シングルスラスト、ラッシュ、正拳突き


【所持金】

 50ゴールド



「よしッ!! 狙い通り、きっちり職業習熟度が『1』上がってるぞ!」


これこそ、3つ目のレベリング方法――『習熟度稼ぎのコツ』だ。


武道家(グラップラー)の熟練度を☆2へと上げるためのコツ、それは、【左右の手、左右の足、そして頭の計5箇所でそれぞれ一度ずつ攻撃をヒットさせた後、最終スキルである『正拳突き』でトドメを刺すこと】だ。


この一連のコンボシーケンスを成功させると、モンスターから得られる通常の1%変換とは別に、ボーナスとして職業習熟度が『確定で+1』されるという仕様なのだ!


これなら、あの面倒くさいスライム500匹討伐なんてやらなくても、このコンボをたった10回成功させるだけで、一瞬で熟練度☆2へとランクアップできる。


さて、さて。この調子なら、目的のダンジョンに着くまでにどれだけ熟練度を上げられるかなぁ。


おれはニヤニヤと締まりのない笑みを浮かべ、再び拳を力強く握りしめた。


「さぁ! 経験値ども、どっからでもかかってこいや!!」


おれが全盛期のトップ廃人のノリで、高らかに勝利の煽り文句を叫んだ、その瞬間だった。



―――ガサガサガサガサッッ!!!


周囲の茂みが一斉に激しく揺れ、おれが今しがた戦闘を繰り広げていた小さな広場へと、文字通り四方八方から、合計10匹ほどのホーンラビットたちが狂暴な声を上げて飛び出してきた。


その真っ赤な瞳のすべてが、明確な怒りを宿しておれをロックオンしている。


全員が後ろ足に信じられないほどの力を込め、おれの心臓目がけて一本角の照準を合わせていた。



あ、あれぇぇ~。

や、やだなぁぁ~。

も、もしかしてご家族の方でしたかねぇぇぇん?

(裏返った声)



―――おれは脱兎の如く逃げ出した。



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