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廃カス課金プレイヤーがチート知識で神職『リミットブレイカー』になるまで  作者: なんくるないさ~
第一章 始まりの街編

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1-6 誰にだってどうしようも出来ない事がある



――まあ、悩んだところで仕方がない。



このリアル異世界の住人がどれほどポンコツな知識で生きていようが、おれがやるべきロードマップは結局、何一つとして変わらないのだから。


おれはギルドの重い扉を背中で押し開けて外に出ると、次なる目的地である街の「雑貨店」の方へと足を向けた。



雑貨店の場所は、念の為にギルドを出る前に受付のお姉さんへ聞きに行った。

そこで何故か一悶着があったのだが、名誉の為にも内容は伏せさせて頂こう。

腫れた瞼に優しい風が心地いい。




さて、次にやるべきことは決まっている。


初期段階における最重要課題――それは、まだ解放していない「残りの各基本職の転職条件をすべて満たすこと」と、それと並行して行う「各職業の熟練度上げ」だ。


おれは歩きながら、脳内データベースに刻まれた「基本職の各☆毎の習得に必要な習熟度」の数値を再確認した。


熟練度☆1 → ☆2  必要習熟度 10

熟練度☆2 → ☆3  必要習熟度 100

熟練度☆3 → ☆4  必要習熟度 500

熟練度☆4 → ☆5  必要習熟度 1000

熟練度☆5 → ☆6  必要習熟度 5000

熟練度☆6 → ☆7  必要習熟度 10000

熟練度☆7 → ☆8  必要習熟度 50000

熟練度☆8 → ☆9  必要習熟度 100000

熟練度☆9 → ☆10  必要習熟度 1000000



この途方もない習熟度を稼ぎ、ランクを上げる方法は大きく分けて3種類存在する。


1つ目は、『モンスターを討伐することによる経験値の変換』。


これが一番の王道であり、この世界の誰もがやっている方法なのだが……いかんせん、職業習熟度への変換率がたったの『1%』しかないというクソ仕様なのだ。


仮に、そのへんの草むらにいる経験値『2』の最弱スライムを狩って稼ごうとした場合、☆2にあげるための僅か10の習熟度を得るだけでも、計算上【500匹】も屠らなければならない。


これがもし、最高ランクである☆10の「100万」をスライムだけで稼ぐとなれば……なんと【2億匹】という、レベルのスライムを絶滅させる必要がある。


もはや勇者ではなくただのスライム天敵おじさんだ。



2つ目は、『各職業に用意された専用クエスト』をクリアすること。


これはいわゆるイベント報酬で、一度にドカンとまとまった習熟度が稼げる。


しかし、当然ながらその分内容がめちゃくちゃ面倒臭いし、なにより長期間にわたって肉体と時間を拘束される。


「どこぞの馬鹿なお姫様を賊から助け出せ」だとか、「最前線の砦を命懸けで奪還しろ」だとか、「数千匹の魔物が押し寄せる大暴走(スタンピード)を最前線で制圧しろ」だとか……。


もちろん、タイパ(タイムパフォーマンス)を最優先するおれのような効率厨が、そんな非効率な国家事業に付き合っていられるわけがない。



そこで、3つ目の方法の出番となる。


このゲームには、各職業の各☆毎に個別に設定されている、隠された『習熟度稼ぎのコツ』が存在するのだ。


おれは当然、全職業におけるその「コツ」のすべてを完全に暗記している。これを使って、安全かつ爆速でレベルを上げていく算段だ。


まあ、ステータスの数値すら見えていないこの世界の人々にとっては、これは「コツ」なんて生温かいレベルのものではなく、もはや国家機密だの『神の秘伝』だのといった大騒ぎになってしまうのだろうが……。


基本職のノーマルクラス(☆2〜☆4)程度であれば、そこまで理不尽に難しいコツではない。


ただ、「知っていなければ絶対に実践できない」という、初見殺しの知識の壁があるだけなのだ。



ただし、星の数を「エキスパートランク(☆8以上)」へと上限突破させるためには、単に熟練度の数値を達成するだけでなく、運営の悪意が詰まった『超激ムズ固有クエスト』のクリアがシステム上、必須となっている。


おそらく、これこそがこのリアル異世界で「☆7(セブンスター)が全人類の最高到達点」と囁かれている最大の由縁だろう。


例えば、前衛職の基本である【戦士(ファイター)】を☆8にするための上限突破クエスト『命の戦火』。


これは、「システム的に致死量の猛毒を強制注入された状態」からスタートし、肉体が完全に毒で崩壊してドロドロに溶け落ちる前に特定の迷宮試練をクリアするか、あるいは自力でその肉体の限界(リミッター)を強引に突破して「常時自己再生」の境地に達しなければならない、という本物の狂気クエストだ。


ゲーム画面の向こう側なら「あー、またデスペナ(死亡ペナルティ)かよクソゲー」で済むが、たった一度死んだらそれでおしまいの本物の現実(ここ)では、リスクが大きすぎて誰も挑戦すらしないのは当然かもしれない。


基本職のランクアップクエストですらこの地獄絵図なのだ。


上級職の、例えば【暗殺者】や【大賢者】の星を☆8に上げるクエストなど、想像するだけで寒気がする。



それに比べれば、上級職への『転職クエスト』そのものは、まだ人道的だ。


さっきギルドで名前が上がっていた、世界最強のSランク冒険者ホーネット氏の職業【大賢者(ハイセージ)】。


これへの転職条件は、「魔法国立の大図書館にあるすべての魔法書、および歴史関連の文献を完全読破すること」となっている。


つまり、死に物狂いで時間をかけて本を読み漁りさえすればいつかは確実に達成できるため、少なくとも命を脅かされるような肉体的危険は一切ないのだ。




しかし、おれは当然、この最高難度の鬼畜クエストを、すべて完全クリアするつもりだ。


何せ、そのためにすべき効率的な攻略法を、おれは脳髄の随まで熟知している。


必ずなってやるさ。


この世界で初めての、☆8(エキスパートランク)に。


そして、真の最強である☆10(マスターランク)に!


そして!!

必ず!!

受付のお姉さんを見返すんだ!!!




大通りでフンスと鼻息を荒くしながらそんな野望を滾らせているうちに、いつの間にか目的の雑貨店へと辿り着いていた。


年季の入った木製の扉を押し開けて中に入ると、薄暗い店内には所狭しと多種多様な冒険用具や日用品が陳列されていた。


雑多ではあるが、棚の細部にまでしっかりと手が行き届いており、埃一つない丁寧な印象を受ける。



ここからしばらくは、腰を据えて街から離れることになる。


おれは店内を隅から隅まで歩き回り、サバイバルに必要な「一番安い携帯食料10日分」と、各種ロープや松明といった必須道具を次々とカゴへ放り込んでいった。


そして最後に、次の職業――【盗賊(シーフ)】へと転職するための必要アイテムとなる、「ただの果物ナイフ」もここで一緒に購入する。


本当は武器屋へ行って、ちゃんとした鋼鉄製のダガーが欲しかったのだが、何分おれには今、お金が全くない。


背に腹は変えられないのだ。


まあ、安物の果物ナイフであっても、システム上は「短剣」のカテゴリとしてちゃんと判定されるため、実用上の問題は一切ない。



「……お会計、締めて1,950ゴールドになります」


店主の言葉に、おれはゴソゴソと財布を漁って硬貨を支払った。


……うん。神殿への重課金とお布施のせいで、おれの手持ちはもう本格的に破産寸前(デッドライン)だ。


あれ、なんだか妙に膝と足の先がガクガクと震えてらぁ。

貧乏って怖い。



だが、これでいい。


次に進むための材料と、チートスタートダッシュを決めるための舞台装置はすべてこの手に揃った。



―――さぁて、じゃあ、お楽しみの「初ダンジョン」へ向かいますか!




なお、そのあと街を出るために向かった東正門にて、守衛の門番たちと白熱した一悶着があったことについては……おれの今後の名誉のためにも、その詳細な内容はすべて伏せさせて頂こう。


「街への入場履歴が一切ない、どこの馬の骨とも知れん不審者」が、いきなり街の『内部側』から堂々と出ていこうとしたのだ。


門番の視点に立ってみれば、完全に密入国したテロリストかスパイの類である。


こちらが何をどうやって必死に弁明しようとも、いくらそれが神に誓って真実(異世界転生してきました)であったとしても……まともな理性を備えた門番たちが、そんな電波な言い訳を信じてくれるわけがなかった。


「……あれ……おかしいな……。異世界の青い空が……涙で歪んで、よく見えないや……」


おれは両脇をガッシリと屈強な門番に抱えられ、本日2回目となる「お馴染みのあの場所(衛兵詰所)」へと引きずられていきながら、ただただ遠くなる自由な青空を見つめていた。



おれの本格的な冒険者ライフが始まるのは、どうやらもう少し先になりそうだった。




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