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廃カス課金プレイヤーがチート知識で神職『リミットブレイカー』になるまで  作者: なんくるないさ~
第二章 アルカノ魔法国編

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2-27 時に、想像を絶する治療行為もある



図書館へ到着した後、おれはリターナへ少しだけここで待つよつに伝え、ゲートを使って回復の泉まで飛んだ。


4桁のMPが大幅に減っていた為、まずはここで回復させた後、おれはダンジョン外の草原へもう1度飛んだ。



―――さて、と。


おれはタメ息をつきながら、【神代の荊冠】の隔離空間を解除した。


「……もご、もごごごごごごっ(あの泥棒猫の生皮を剥いで旦那様のお掃除を――っ)!」


次元の裂け目から吐き出された瞬間、なおも爪から火花を散らして鎖を引っ掻きながら暴れる嫉妬獣。


そしてその足元には、暗闇の中で嫉妬獣の暴力を一心に受けたのであろう、骨の髄まで揉みくちゃにされたスタコラシスターズが転がっていた。


かつてあれほど美しかった2人の娘達は、もはや原形を留めておらず、完全に泥塗れのボロ雑巾のようにぐったりと白目を剥いていた。


命の灯火が消えかけている。



やはりあいつらじゃ無理だったか………仕方ない。


おれは暴れ狂う嫉妬獣の目をまっすぐに見据え、冷徹なトーンで告げた。


「アイシャ。これ以上暴れておれのチャートを邪魔するなら、お前をパーティ追放にする。もちろん、一生お留守番だ」


その瞬間、全身から立ち上っていたドス黒いオーラが一瞬で霧散し、嫉妬獣の動きがピタリと止まった。


そして、恐怖に顔を青ざめさせながら、借りてきた猫のように「スンッ……」と直立不動になり、この世の終わりを告げられたかのような悲壮な顔をこちらに向け、号泣した。


申し訳ありません、と何度も謝る彼女の目から止めどなく溢れる大粒の涙に、おれの心は少し痛む。


同行拒否。これこそが、彼女にとって死よりも恐ろしい最大最悪のデバフだった。


だからあんまりこの方法を使いたくなかったんだよ……だが、仕方ない。これ以上は本当に死人が出てくる。


もうすでに2人犠牲者が出てるかも……。


おい。生きてるか?


「…………………ッパミョ…………ォプュ……」

「テラテラテラテラテラテラテラテラテラテラ」


………手遅れだったようだ。精神的に。




「―――これ全部目を通せ」


おれは無事に身体を回復した姦娘達を連れて図書室へ戻り、近くの書架から引っこ抜いてきた『召喚術の基礎知識』から『異界との精神同調論』に至るまで、転職条件に必要な召喚に関する魔導書を125冊、目の前にドサドサと目の前に積み上げた。


賢者(セージ)に転職する為、1人1人ゲートでここに連れて来ては、実に25829冊の本を読破したこいつらには、たったの125冊など秒で終わるだろう。


おれはアイテムボックスからチート栞を手渡し、まず嫉妬獣から作業へ入らせる。


おれはその間にスタコラシスターズのメンタルケアだ。


地獄の3ヶ月半を過ごして来たこいつらでも、あの女子会は耐えられなかったみたいだ。


泡娘は語尾に「でちゅ」と付け、涙とよだれを流し、目は一切笑わないまま、ただ焦点の合わない瞳で虚空を見つめ、壊れたおもちゃのように笑い声を上げ続けていた。

精神がもっとも安全だった幼少期まで強制退行し、自分の年齢や状況を忘れ、見えない「お母さん」を探して床を這い回っている。


地震娘は「落ちている見えないゴミを拾ってポケットに入れる」「何もない空間をお辞儀しながら往復する」など、カチカチと狂った時計のように、正確なテンポで無意味な行動を無限に繰り返していた。

突然見えない客に対して「いらっしゃいませ!」と最高の笑顔で接客を始めるその姿は恐怖以外ない。


2人とも、極限の恐怖から精神を守るため、今置かれている状況とは180度違う「超絶のどかな日常」を脳内で捏造する状態に陥っていた。


おれは2人の頭をそれぞれ掴み、最上級雷雲魔法の【星震の超高圧電磁界(プラズマカタストロフ)】と、失伝魔法の【永遠なる再生の福音(ロストエデン)】を彼女達の脳内へ交互に掛けまくる。


所轄電気ショック療法だ。

アバババという悲鳴と共に、穴という穴からナニかが吹き出してはいるが……。

あ、クリーンも掛けておこうね。

えっ?リターナも?

あ、うん。

えっ?生きてる………と思う。………多分。




「よし、条件達成だ。召喚部屋へ行くぞ」


無事に本を読み終えたおれ達は、学園の地下にある冷たい石造りの召喚部屋へと移動した。


学園の地下深くにあるその場所は、学園のきらびやかな喧騒が一切届かない、静謐と冷気が支配する絶対の聖域だった。


長い螺旋階段を降り切ったおれ達の前に現れたのは、天井高が十数メートルにも及ぶ、総大理石造りのドーム型神殿――『召喚の間』である。


一歩足を踏み入れると、肌を刺すような高濃度のマナが全身を包み込み、空気が結晶化しているかのように重く、吸い込むだけで肺の奥がジリジリと熱くなる。


部屋の周囲を囲む巨大な円柱には、古代の魔術師たちが生涯を賭けて刻み込んだとされる、失われた神聖ルーン文字がびっしりと並び、それらが呼吸を合わせるかのように、淡い群青色の光を周期的に脈動させていた。


そして何より圧倒的なのは、部屋の中央、冷徹な黒曜石の床一面に刻まれた巨大な儀式魔方陣だった。


幾重もの真円と、世界の理を規定する幾何学模様と、その溝には、液体化した純魔力が音もなくサラサラと流れており、外縁に配置された十二基の銀製魔導灯が、揺らめく蒼白い炎で神秘の文様を妖しく浮かび上がらせている。



ここで行うのは、召喚士(サモナー)へのもう1つの転職条件でもある、『ランダム契約儀式』だ。


無事に転職が出来たら、この魔方陣から召還獣が召還されるという仕組みだ。


プレイヤーの熟練度や、運の数値によって、引き当てられる召喚獣はランダムで決定される、いわゆる公式のガチャ仕様だな。


おれ達はまだ召還士(サモナー)にもなってない状態なので、出てくる召還獣などレア度が低いものばかりだろう。


しかし、高レア召還獣に当たる可能性も0では無い。


SSランク召還獣に当たる可能性も、あるにはある。


0.008%だが…………。



「リタの、未来視でも、何が当たるのか、分からない。アキヒロ、何を引き当てるか、楽しみ」


リターナが棒読みのまま深緑の瞳を輝かせる。


ふっ。じゃあ見せてやろうじゃないか。


このおれの、廃人として過ごして来た人生を掛けて、必ず引いてやるぜ。


おれは魔方陣の手前にある石板まで歩き、その石板に掌を乗せ、石板を通じて魔法陣に魔力を流し込むと、眩い白銀の光が弾けた。


おれがわざわざ魔術師職と賢者職を上げまくった莫大なマナが渦巻き、青白い炎があちらこちらで発生している。


その豪華絢爛なエフェクトを眺めながら、おれの期待値はどんどんと膨らんでいく。


感嘆の声を上げている姦娘達とリターナの、輝く羨望の眼差しを受けながら、魔方陣の上に神話級の怪物が現れる。


―――かと思いきや、光が収まった後にポフンと情けない音を出して現れたのは……


「ヌン?」


体長15センチほどの、ごく普通の、どこにでもいる茶色いナマズだった。しかもちょっと太っている。


息が出来ないのであろう。もうすでに死に掛けていた。


ステータスを確認する。

【名前:ナマズ(通常種) 特殊能力:特になし】



「……しょぼ、い」


リターナが容赦のない棒読みで現実を突きつけてきた。


おれの現LUKは認識しているが、こんな底辺はさすがに無いんじゃないか?

前世から知っていたが、おれのリアルラックはいつも底辺を這いずり回っている。

基本ステータスが高くても、ガチャの神様には見放されているらしい。

クソッタレが!!



「次、アイシャ、やれ」


「はい」


お留守番を恐れてすっかり大人しくなったケイコが魔法陣に立つ。


彼女が静かに祈りを捧げると、桃色の可愛らしい光が広がった。


現れたのは、くりくりとした大きな瞳をもつ、手のひらサイズのモコモコしたポムポムネズミだった。


「きゅ〜?」


「あら……可愛らしい。これでお膝の上が寂しくありませんね」


「うん、戦力外のかわいい動物系だな。次、テルミナ」


おれに脳内シェイクされた後遺症がまだ残っているのか、ふらふらとした足取りで石板へ向かい、その手をかざす。


魔力を通すと、一転して激しい風が吹き荒れ、魔法陣から一条の鋭い光が天井を貫いた。


光が収まると、そこには美しい碧色の羽をもつ、凛としたウィンドホークの召喚獣が羽ばたいていた。


「やったぁ!何か 役に立ちそうなのが出たよ!」


テルミナが嬉しそうに声を弾ませる。


初期召喚としては十分にレアな、俊敏特化の優秀な個体だ。


LUKの数値がまぁまぁ高いんだろう。



「よし、ラスト。ルナ、サクッと終わらせろ」


こくりと頷き、チョコチョコと石板へ歩みより、石板の端にちょんと指を触れた。


その瞬間。


―――学園の地下全体が、ドッッッカッッ、と底鳴りのような不気味な地響きを立てて揺れた。


そして、魔法陣から溢れ出してきたのは、光ではなかった。


光をも吸い尽くすような、完全なる『透明な無の質量』。


リターナの長い耳がビクゥッ!と跳ね上がり、その瞳が本日2度目の恐怖に大きく見開かれる。


「……うそ。星の導き、バグった……? 確率、ゼロ、の領域……」


眩い光が部屋全体を激しく揺らす。


―――そして、光が晴れた魔法陣の中央。


そこにいたのは、わずか直径10センチほどの、ぷるぷるとした小さな無色のスライムだった。



おれはそれを見た瞬間、一切の思考が停止した。


………………………まじか!!???



急いで自分の目の前にあるその奇跡の場面に対し、答え合わせをするように、【生物鑑定】のスキルを発動した。


【個体名:原初無垢(エターナルグルトニー)スライム】


【特殊能力:【無限捕食】【概念吸収】【万物同化】――あらゆる魔法、物理、世界の理すらも全てを吸収し、自らのステータスへと変換する最上級の神話級生命体】



…………………はははっ。ははっ。


こいつ、SSSランクの0.00000003%を引きやがった――――――。



「………かわいい……」


当のルナは、おれのリアクションそっち除けで、人畜無害そうな最上級スライムを指でつついている。


「……リタの未来視、正しかった。やっぱり、あなたたち、全員バケモノ」



たった今判明した。


地震娘は、LUK特化キャラだ―――。



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