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廃カス課金プレイヤーがチート知識で神職『リミットブレイカー』になるまで  作者: なんくるないさ~
第二章 アルカノ魔法国編

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2-8 とりあえず今日も息を吸って吐いている



「ふざけるのもたいがいにして! こんな激流に身を投げるなんて、そんなこと出来る訳ないでしょ!正気なの!?」


「時短だ、時短。この裏ワザを使えば、たったの30分で本来かかるはずの5日分もの行軍を短縮出来るんだ」


「バカ言わないで! 結局死んだら、短縮5日じゃなくて、短縮0日(ゲームオーバー)になるわよぉぉ!!」


ギャーギャーとヒステリックに騒ぎ立てる泡娘を完全に無視し、おれは赤顔娘にロープを渡し、お互いの腰を縛り合って連結していくよう指示を出した。


しかし、どれだけきつく縛ろうとしても、地震娘が恐怖のあまり凄まじい超高速振動(バイブレーション)を放ち続けているせいで、結び目が一瞬でほどけてしまう。


赤顔娘は、涙目で必死に拝むように掌を合わせたまま震える地震娘を結ぶのに、とてつもない苦労を強いられていた。


結局、物理的な限界を感じたのか、地震娘(バイブレーター)を前後にガッチリと挟み込む形で、3人を1つの肉の塊のような状態に固定。


彼女たちの脇の下を通してロープを強固に縛り上げることで決着をつけた。


赤顔娘の背中に全力で抱き付く形で地震娘が密着し、その地震娘の背中のさらに背後から、全力で抱き付く形で泡娘がひっついている。


ものすごい絵面だが、まぁこの方が衝撃のデバフを分散できるし安全かもしれない。


もうおれに何を言っても無理だと完全に諦めたのか、スタコラシスターズの2人は急に静かになり、ただただ相手の身体に必死にしがみついてぎゅっと目を瞑っていた。



よし、じゃあそろそろデスライドの出発進行といくか。


おれは最後に、3人を繋いだロープの先端をおれの革鎧の頑丈なバックルへと括り付けた。


おれはゴウゴウと地鳴りを上げて流れる激流の川のフチへと進み、隣に立つアイシャに向かって「行くぞ」と目で合図を送る。


すると、おれの意図をどう勘違いしたのか、アイシャはおれの背中へと後ろから「ぎゅっ!!」と凄まじい力で抱き付いてきた。


……いや、そういう意味ではなかったんだが……。


まぁいいか、この密着スタイルの方がカバーしやすいか。


「舌を噛まないように気をつけろよ! ―――突入するぞ!」


おれ達は一斉に、濁流の渦巻く川の中へと身を飛び込ませた。




直後に待っていたのは、当然ながらテーマパークの優雅なウォータースライダーなどでは断じてなく、業務用洗濯機とミキサーを悪魔合体させたかのような、超絶怒濤の『即死級デスライド』だった。


左へ、右へ、上下へ。容赦ない水の奔流は、もの凄い質量でおれ達の身体を激しく揺さぶって行く。


おれ達をひとまとめにしたロープが、激しい水圧でギチギチと悲鳴を上げていた。


水流の合間を縫って、たまにこの激流を住処にする凶暴な魚のモンスターが牙を剥いて襲いかかってくるが、おれは進路を見据えつつ、片手で新調した鉄剣を振るってそれらの突進を最小限の軌道で「受け流し」ていき、流される勢いのままひたすら先へと進んで行く。



途中で、おれの背中に密着している赤顔娘の隙間から、後ろの連中の生存ログを確認する。


「おい! 生きてるか!?」


おれの怒鳴り声に対し、最後尾の泡娘から「死んで、ないなら……まだ、生きてるぅぅぅ!!」と、濁水を飲み込みながら必死の返事が返ってきた。


さらに、地震娘から発せられるマグニチュード14クラスの凄まじい地鳴りのような振動が、おれへとダイレクトに伝わってきているため、地震娘がまだ心臓を動かしていることは身をもって痛いほど感じられた。


おれの背中からは、ぴったりと張り付いている赤顔娘の口元から、激流の爆音に混ざって「……ワタヒ、今、最高に幸せでフ……」とかいうトチ狂った呟きが聞こえてきたが、もちろん100%無視だ。




そうして、激流に揉まれること約30分。


突如として、前方を流れる川の先端(水平線)が、視界の先で唐突に消え去るのが見えた。


目の前に広がったのは、闇の奥深くへと垂直にドロップする、落差100メートルの圧倒的な大滝。


「―――全員、滝が来るぞ!! 最大級の衝撃に備えろ!!」


おれが声を張り上げた瞬間。


「いやぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁーーーーっっっ!!!!」というテルミナのこの世の終わりを告げるような悲鳴と、ルナの恐怖が限界突破したことによるマグニチュード24の破壊的なバイブレーションと、そしておれの背中からの「このまま、あなたと共に逝けるなら、もう死んでもいい……」とかいう戯れ言を同時に聞きながら、おれ達の身体は一気に空中へと放り出された。


次の瞬間、肉体から完全に重力が消失。


おれ達の身体はふわりと宙に浮き上がり、おれの脳内CPUの処理速度が高まりすぎたせいか、世界のすべての景色が、スローモーションへと切り替わった。


眼下の暗闇の遥か遠くで、白く煮え立ちながら咆哮を上げている、まともに生身で激突すれば100%即死確定の凶悪な滝壺。



おれは落下しながら、アイテムボックスの空間を瞬時に解放し、先端に特製の超重量級グラップリングフックを括り付けた頑強なロープを引っ張り出すと、目で見ることすら困難な空中サーカスのなか、滝の真横の岩壁から鋭く突き出た『一本の巨大な岩棚』へと向かって、力一杯に投げ込んだ。


ガチンッッ!!!


フックが狙い通りに岩棚のフチへと完璧に噛み合った、その直後。


100メートルの自由落下によって膨れ上がったおれ達4人分の凄まじい位置エネルギーが、ロープの一点へと一気に加わった。


キィィィィィィィンッッ!!! と耳を切り裂くような凄まじい摩擦音が地下空洞に響き渡り、ロープが千切れる寸前の限界値まで一瞬で張り詰める。


その落下の慣性と、ロープが引き戻そうとする張力が、システム的な計算通りに絶妙なタイミングでカチリと噛み合い、おれ達の身体は、死の滝壺へと激突するわずか数メートル手前の空間で、グインッ!と直角に近い起動を描いて方向転換を果たしたのだ。


おれ達は巨大な振り子の球体と化し、空中をダイナミックにスイングし、そのままの勢いを利用して、滝の奔流の『裏側』に隠された巨大な横穴の空洞へと、文字通り3人まとめて弾丸のようにブチ込まれたのだった。



ドサササァッッ!!!


「――おーい。全員、生きてるか?」


おれは革鎧についたロープを解きながら、床の苔の上に死屍累々となって転がっている姦娘たちに声をかけた。


泡娘が泥にまみれた顔を拭きもせず、完全に虚ろな目で呟く。

「……もし、わたしが今死んでいるなら、そのまま死なせて。……この恐怖を二度と思い出したたくないの……」


おれの目の前で床に膝を突いていた赤顔娘が、上気した顔で熱烈な瞳をおれへと向けて両手を握りしめ、ほざく。

「私は、これからもあなたと共に、これからもどこまでも生涯を生き抜いて行きますわ……!」


おれが最も心配していた地震娘はというと。

「イキテルッテナンダロ。イキテルッテナニ。オレハココデ、ウマレカワッタノダ……」

恐怖のあまり脳の防衛システムが完全にバグを起こしてしまったらしく、あれほど激しかった振動をピタリと止め、顔面にはまるで般若のような無表情の笑顔が不気味に張り付いたまま、カタカタとロボットのような音声で謎の呪文を唱え続けていた。


よし。……まぁ、全員無事みたいだな。




「ここは……一体どこになるのですか……?」


立ち上がって衣服を整えた赤顔娘が、不思議そうに周囲の暗い岩肌を見回した。


「ここは、さっきの落差100メートルの大滝の真裏に隠された、特殊な部屋だ。ここには外から一切モンスターが進入して来られない設定になっているから、この広大なダンジョン内における『完全安全地帯(セーフゾーン)』みたいな場所だな」


そして、この暗い一本道の通路を抜けたまさにその奥に、おれがわざわざ彼女たちを気絶寸前まで追い込んでまで連れてきた、今回のレベリングの『最大の本命』が鎮座しているのだ。



おれ達はロープをアイテムボックスへ回収し、地震娘がなんとか自分の足で自立してヨロヨロと歩けるようになるのを待ってから、その隠し部屋の細い通路を奥へと進んでいった。


暗い通路を50メートルほど突き進むと、突如として目の前がパァッと開け、少し広めの幻想的なドーム状の空間へと出た。


その部屋の中央には、大理石で造られた古代の遺跡のような巨大な水受けが設置されており、そこから溢れ出る水は、まるで蛍の光のように淡く、美しいエメラルドグリーンの輝きを放っている。


その神秘的な光が冷たい岩壁に反射し、部屋全体を幻想的な癒しの色彩で満たしていた。



「ここは、いったい何なのですか……? この、美しく発光している水槽のような建造物は……?」


赤顔娘がその圧倒的な神聖さに息を呑み、トポトポと静かに湧き出る光る水を見つめて尋ねてきた。


おれは彼女たちの驚愕の顔を振り返りながら、廃人の絶対的な最適解を込めて不敵に応えた。



「―――あれが、最大のバグ技スポット。常時発動型の【回復の泉】さ」



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