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廃カス課金プレイヤーがチート知識で神職『リミットブレイカー』になるまで  作者: なんくるないさ~
第一章 始まりの街編

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1-19 人は結局、信じられるものしか信じない



おれは今、完全に魂が抜けて腰が抜けた、ピクリとも動かなくなった泡娘を荷物のように背負い、我がマイホームへと帰還していた。


洞窟の奥でガタガタと局地的な大地震を継続していた地震娘の前に、そっと死体のようにテルミナを転がして下ろしてやる。


すると、泡娘は涙と鼻水でグシャグシャになった顔を歪ませ、「ごめんね……ルナ、ごめんね……。私には無理だった、あの邪神の首を獲るなんて無理だったのぉ……!」としきりに意味不明な懺悔を口にしながら、相棒の腰にしがみついてワンワンと泣き崩れた。



何かおれの知らないところでとんでもなく深刻かつ複雑なサスペンスドラマが繰り広げられているようだが、まぁいい。


とりあえず帰り際に、あの過酷な殺戮かくれんぼ試験の「合格判定(土下座)」はきっちり貰えたのだ。


おれとしては文句なしの大満足である。


おれは2人が抱き合って震えているのを生温かい目で見守りながら、早速斥候(スカウト)へ転職した。


刹那、おれの肉体を淡い紫色の光そっと包み込む。


「ステータスオープン」


 アキヒロ


 HP : 110/110 MP : 10/10 SP : 130/130(+20)


 STR : 15 DEX : 13(+2) VIT : 11 AG I : 14(+2)

 

 INT : 1 MND : 1 LUK : 2(+1)


【職業】

 斥候☆1(0/10)


【職業履歴】

 剣士☆2(0/100) 、槍士☆2(0/100) 、戦士☆1(5/10)、

 武道家☆2(84/100)、盗賊☆1(0/10)、騎士☆1(3/10)


【スキル】

スラッシュ、回転切り、シングルスラスト、足払い、ラッシュ、正拳突き、回し蹴り、スティール、解錠、突撃、挑発、気配察知 NEW、罠感知 NEW


【所持金】

 550ゴールド



よし! 色々と世界の仕様に不安はあったが、無事に新ジョブの転職枠を解放することに成功した。


待望の便利パッシブ気配察知と罠感知を手に入れたぞ。


この2つのスキルさえあれば、明日からのグリーンキャタピラーの探索難易度は一気にヌルゲー化する。


さらに、次なる本命である剣士(フェンサー)の熟練度稼ぎを狙う際にも、敵の密集度を測るのに大いに役立つ。


こんな最高のタイミングで覚えられてマジでラッキーだ。



おれはさっそく、素晴らしい試験を課してくれた泡娘に熱い感謝の気持ちを伝えようと、一歩近づいた。


すると、相棒を庇うように立ち塞がった地震娘が、血の気が完全に引いた顔で「今は、ヒュー、今はどうか、ヒュー、御慈悲を……! 贄なら私がいくらでも、ヒュー、なりますから、テルミナにこれ以上の処罰を、ヒュー、施すのはおやめくださいッ!」と涙を流しながら、金切り声で離れるように懇願してきた。


おれは仕方なく、3メートルほど距離を取った遠くの方からとりあえず感謝を伝えておいた。


本当はさっさと月見草の花びらを渡して、おれ自身の「習活(習熟度上げ活動)」に戻りたかったのだが、こればかりは仕方がない。


彼女たちの、再発したキノコ(?)の毒が抜けて落ち着くのを待っている間、おれは暇つぶしとして、2人の目の前で腹筋と腕立て伏せの追加筋トレをストイックにこなして時間を潰すことにした。


涙目で泣き崩れている相棒を必死に抱き抱えながら、地震娘がこちらのマッスルな動きを「ヒッ……ヒッ……」と謎の過呼吸を起こしながら驚愕の眼付きで見つめていた。




――それから30分後。


ようやく落ち着きを取り戻したようなので、おれは約束通り、お礼を兼ねてアイテムボックスから【月見草の花びら】を少し多めに掴み出してプレゼントしてあげた。


何故か泡娘は、まるでお代官様から天下の宝刀でも賜るかのように、ガタガタと震える両手を畏まらせて恭しく受け取っていた。


彼女たちは、一刻も早く街に戻りたそうにしていたので、おれは親切心から、帰り際にそれぞれの職業の、次の熟練度までに必要な習コツを教えてあげた。


2人とも、誰が見ても分かるような、深い疑惑と戦慄の目を向けながら、深々とお辞儀をし、一目散に去っていった。



―――本当に、変わった妙なやつらだったな。(世界で一番お前が言うな)



さて、まだ太陽は高い位置にある。


ここからがおれの本番、楽しい楽しいレベリング活動(習活)の時間だ。



―――では、さっそく。


新スキル『気配察知』を発動させる。


おれが脳内で意識のトリガーを引いた瞬間、頭の奥からブワァァッッ!! と円周の形でおれの周囲の全情報が脳内にダイレクトに流れ込んできた。


地形の起伏、木々の葉の揺れ、そして何より『現在動いているすべての物体の姿形と座標』が、3次元の立体レーダーとして脳内に表される。


この気配察知というスキル、集中力を高めれば高めるほどより遠くの深層まで探ることができる。


……が、当然その分、脳に一気に流れ込んでくる情報量がエゲつないことになるため、肉体の処理限界(キャパシティ)を超えると、強烈な頭痛や吐き気、眩暈に襲われ、最悪の場合は脳内出血を起こしてリアルに命を落とす危険性すらある諸刃の剣だ。


この世界の一般的な達人クラスであっても、安全に扱える索敵範囲はせいぜい「5キロメートル圏内」だろう。



しかし、おれは、前世でこの気配察知を使った、頭のイカれた運営が用意した、鬼のような最難関ミッションを達成させている。


あの地獄をクリアするために、おれはそれこそ脳の血管が何本かブチ切れるほど死に物狂いでこの感覚を研ぎ澄まし、限界を超えた脳内並列処理技術をマスターしている。


―――現在の、おれの索敵限界範囲は……【8.62キロメートル】か。


INTがまだゴミのような初期値『1』の状態でこれなら、まぁ、許容範囲かな。


じゃあ、検証も終わったし、ランニングを兼ねてゴブ村に行きつつ、道中でグリーンキャタピラーを探しますか。




―――キシャーッッッ!!!


原生林の奥地。おれはさっそくレーダーで感知したお目当てのグリーンキャタピラーを発見し、そのぬるぬるした緑色の巨躯の上で、絶賛ロデオタイムを満喫していた。


いやぁ、気配察知の索敵能力のおかげで、騎士(ナイト)の課題が捗る、捗る!

効率が昨日とは段違いだ。


ぴったり5分が経過した瞬間、おれはイモムシの背中から地面へ飛び降り、少し距離を取ってから転職の指輪で武道家(グラップラー)へ転職し、哀れなイモムシ君には、そのままおれのキックオンリーコンボの贅沢な贄(サッカーボール)となってもらった。


よし、この調子なら、騎士☆1のノルマも今日中に余裕で終わらせられそうだな


おれは周囲の索敵を都度行いつつ、時速20キロの超高速ランニングを再開した。




1時間ほど森を爆走し、ゴブリン村の周辺エリアへと到着。


おれは足を止め、再び気配察知のレーダーを周囲に展開して『はぐれゴブリン』のポップ数を探る。


……周囲に分散しているはぐれゴブリンは、全部で18匹か。



ここまでの道中で、すでにグリーンキャタピラーを4匹ほどサッカーボールにして屠っている。


現在の経験値変換ボーナスを計算に組み込むと、あと11匹のゴブリンをコンボで仕留めれば、武道家の熟練度を☆3へと上げられる計算だ。



さあ………ゲリラで各個撃破(ワンバイワン)タイムだ。



おれはレーダーに映る最も近いゴブリンの背後へと、完全に気配を消して回り込んだ。


ゴブリンがこちらに気付く前に、まずその膝の裏へ容赦ないローキックを叩き込んで地面へ倒す。


「グギャア!?」


こちらに気付いたゴブリンが何か鳴いているが、おれは間髪入れず、地面に這いつくばったゴブリンの両アキレス腱を、おれの強靭な踵でガツンッ! と正確無比に踏み抜いた。


これにより、ゴブリンはシステム的に自立して立つことが完全に不可能(移動不可のデバフ状態)となる。


あとは、無防備に転がるゴブリンの顔面に向けて、左右の高速キックを数発お見舞いし、仕上げとしてスキルの回し蹴りをクリーンヒットさせてフィニッシュ!


「ギャスッ……!」


何も出来ないまま、哀れなゴブリンはおれの高効率なレベリングの糧となってもらった。



この作業を、移動するたびに斥候(スカウト)(レーダー索敵) → 武道家(グラップラー)(ゲリラ暗殺)へと転職の指輪で切り替えながら、機械的なスピードでハイペースに繰り返していく。


結果、わずか5分という圧倒的な時短スピードで、おれは武道家(グラップラー)の習熟度を完全に稼ぎきった。


おれは即座に指輪のダイヤルを回すように念じる。淡い光がおれの全身を包み込んだ。


「ステータス、オープン」


 アキヒロ


 HP : 110/110 MP : 10/10 SP : 107/140(+10)


 STR : 17(+2) DEX : 14(+1) VIT : 11

 

 AG I : 16(+2) INT : 1 MND : 1 LUK : 2


【職業】

 武道家☆3(0/500) UP、


【職業履歴】

 剣士☆2(0/100) 、槍士☆2(0/100) 、戦士☆1(5/10)、盗賊☆1(0/10)、騎士☆1(7/10)、斥候☆1(0/10)


【スキル】

スラッシュ、回転切り、シングルスラスト、足払い、ラッシュ、正拳突き、回し蹴り、チャクラ NEW 、スティール、解錠、突撃、挑発、気配察知、罠感知


【所持金】

 550ゴールド



2つ目の大本命課題、【武道家☆3】へのランクアップ完了だ!


おれは誰もいないゴブリン村の入り口近くの草むらで、会心のガッツポーズを決めた。



新しく覚えたスキル【チャクラ】。


これは、自身の貴重なMPを消費して自己回復を行う武道家専用のアビリティなのだが、一般的な『回復魔法』とはシステム上の性質が決定的に異なる。


発動の際、その場でどっしりと胡坐(あぐら)をかいて「瞑想(精神集中)」をしなければ使用できないという隙だらけの制限がある分、その瞑想時間が長ければ長いほど回復量が跳ね上がり、最大までチャージすれば【総HPの50%】というバケモノ染みた数値を一気に全快させることができる超一級のヒーリングスキルなのだ。



これを使って、街に戻った時に教会で特定の特殊クエストをこなせば、回復士(ヒーラー)への転職条件が完全に解放される。


サバイバル4日目にして、予定していたすべてのノルマは見事に達成された。



となれば、残りの余った時間は、可能な限り他の職業の熟練度をさらに限界までゴリゴリと底上げしていくのみだ。



おれはニヤリと、最高に邪悪で最高にハイな「トップ廃人の笑み」を顔面に浮かべ、アイテムボックスから手製の木刀(攻撃力ほぼゼロの棒切れ)をジャキッと引き抜き、剣士(フェンサー)に転職する。



―――さぁて、まずはゴブ村で大蹂躙(ジェノサイド)だ……!



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