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廃カス課金プレイヤーがチート知識で神職『リミットブレイカー』になるまで  作者: なんくるないさ~
第一章 始まりの街編

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1-18 事故でも殺意があれば罪になる



「ご、ごめんなさいいいいいいぃぃぃっっっ!!!」


滝の裏に響き渡る絶叫。


長時間(スリーアワー)に及ぶ、おれの根気強い、そして極めて不毛な説得の末、ようやく彼女たちの誤解が解けたようだ。


……いや、本当に解けたのかこれ?



思い返すだけでも、あの後はもう阿鼻叫喚の地獄絵図だった。


おれが良かれと思って親切に介抱しようとするたび、【起こす】→【目が合う】→【叫ぶ】→【失神】の、恐怖の無限デスループが開催され。


泡娘が悲鳴を上げるたびに、地震娘のガタガタ震える震度とマグニチュードは観測史上最大を更新していき。


時間になったので、花びらを一緒に取りに行こうと誘ったら、「私達をどうするつもり!」と未知のUMAに遭遇したかのような戦慄な目で睨み泣き叫び。


あまりに話が通じないので、おれが両手を上げて「キケン、ナイ、ヘイキ。ホラ、オレ、トモダチ」と片言の宇宙人スタイルで声を掛けても、泡娘は白目を剥いて黒目を完全にロストし、地震娘の瞳は絶望で漆黒のブラックホールと化す始末。


最終的には、極限の恐怖で脳のバグが臨界点を突破したのか、「魂を捧げます女神様ぁぁ!」とか狂ったことを口走りながら、自ら死のうとする。


全力で止めようとしたら、「来ないでぇ! 私達は邪神の贄になんてならない!」と、これまた意味不明なカルト宗教の被害者みたいなセリフを叫ばれた。



理不尽だ! おれは100%の善意で動いている無実の一般人だぞ!(己の不審者ムーブを客観視せよ)



とりあえず今はもう、丑三つ時すら過ぎた深夜。


さすがにこのままパニック障害のキノコ(?)中毒患者を放置するわけにもいかない。


おれの拠点である天然洞窟の方がまだ結界的に安全なので、無理やり招き入れてゆっくり休んでもらうことにした。


おれはというと、ジェントルマンらしく外にある木の上にロープを張ってミノムシスタイルで寝たのだが……。


……うん。あの時速80キロの暴走毛玉トラックと6時間デッドヒートしたサバイバル2日目より、精神的にガチで疲れた。




―――そして、迎えた爽やかな朝。


おれが眠い目を擦りながら木を降り、拠点に戻ると、2人はすでに起きていた。


あれ?両目が赤い。寝てないのかな?


焚き火を起こして作ったお茶をおれにも渡してくれた。


お茶を手に取る時若干ビクってなるのはなんでなの?

誤解は解けたよね?


とりあえず、お茶をズズッと啜りながら、お互いに軽く自己紹介をすることにした。



泡娘の名前はテルミナ。

斥候(スカウト)職の☆3で、金髪ロングに鮮やかな赤色のカチューシャを付けた、気の強そうな(現在は怯えきっている)17歳。


地震娘の名前はルナ。

調教師(トレーナー)職の☆2で、綺麗な青色ボブカットが特徴の16歳。


2人で固定パーティーを組んでいるらしく、冒険者ギルドでのランクは『Fランク』とのこと。


この魔の森には、おれの予想通り【月見草】の花びらを採取するためにやってきたらしい。


戦闘力が低いため、普段は『気配察知』で徹底的にモンスターとの遭遇を避けながら、この高額クエストを3ヶ月に1回のペースで繰り返し、地道に安全な小遣い稼ぎをして生活しているそうだ。


昨日は不運にも採取することが(おれのせいで)出来なかったので、今日はこのまま森に残留し、今夜の開花で再トライする予定らしい。



なるほど、斥候(スカウト)の☆3か……


1つお願いしてみようかな。



斥候(スカウト)の転職条件は、『他の熟練度☆3以上の同職(スカウト)のプレイヤーに、実戦でその素質を認めてもらうこと』によって達成されるシステムだ。


本当はもっとお金を稼いで富豪になってから、ギルドの窓口を通して正規の手数料を払い、ベテランの斥候を雇って試験をお願いする予定だったのだが……。


目の前にちょうどいい合格判定員(☆3斥候(スカウト))がいるのなら、彼女たちのクエストをお手伝いするバーター取引として、ここで1度聞いてみるのが最速効率だ。


おれはおもむろに、前世のダークファンタジー映画の悪役のような、低くネットリとした暗黒ボイスで切り出した。


「―――ねぇ。……早く街に帰りたくない?」


「ひゃうっっ!?」と、テルミナが短い悲鳴を上げて飛び上がる。



おれは自分がスカウトに転職したいこと、合格するための技術は持っていること、おれの言う通りに試験をやってくれたら、今日中に街に帰してあげること、そして――おれの持つ『超チート課金版アイテムボックス』の時間停止機能を、分かりやすく説明し、何とか必死のプレゼンの末、了承を得ることに成功。


しかし、アイテムボックスの無限容量と時間停止の説明をしている時、泡娘が小さな声で「……時間停止の固有結界……? やっぱり……やっぱり邪神の恩恵受けているんだわ……」とかブツブツ呟いていた。

違うからね? これ合法的なリアルマネー課金だからね?



でも、彼女たちの話を聞いて驚いたな。


どうやらこっちの世界の住人のアイテムボックスには、時間停止を含めたあらゆる便利機能が一切備わっておらず、それどころか容量も「最小サイズ」がデフォらしい。


機能設定も、容量拡大も、前世ではすべて『追加課金要素』だったからなのか?


こっちの住人が、初期設定のまま不便に生きているという事は理解できた。



まぁ、いいや!


とりあえず肝心なのは、これで念願の斥候(スカウト)の転職条件が開くぞ!




―――それから、約2時間後。


拠点近くの原生林にて、泡娘によるおれのスカウト試験の準備が整ったみたいだ。


試験の内容はいたってシンプル。『森の中に仕掛けられた無数の罠(トラップ)をすべて掻い潜り、この広大なエリアのどこかに『気配遮断』で隠れている試験官(テルミナ)を見つけ出すこと』。


試験官である彼女は、斥候☆2のスキル『気配遮断』と、☆3のスキル『消臭(ステルスアロマ)』をフル展開して完全に自身の存在を環境に同化させている。


どんな些細な植物の揺れや、痕跡も見逃さないプロの観察眼がこちらには要求されるわけだ。



また、エリア内には侵入者を捕えるためのトラップが複数設置されており、これに1度でも引っ掛かって身体の自由を奪われてしまえば、その時点で一発アウトとなる。


―――さぁかくれんぼの始まりだ。



おれは彼女が潜んでいるであろう、静まり返った森の方角へ向けて、不敵な笑みを浮かべながら力強く1歩、足をデリケートに踏み出した。


その、まさに一瞬だった。


―――ビュゴォォォォォッッッ!!!


「ぬおっ!?」


突如として、おれの真横の視界から、鋭利に尖らせた極太の竹や木を、おぞましい過剰な質量でこれでもかと植え付けられた巨大な殺戮丸太が、凄まじい風切り音を立ててスイングしながら飛んできた。


おれは没入型VRで培ったフレーム単位の神速の反射神経で、脊髄反射的にその場にザッと深くしゃがみ込み、頭上数センチを通り過ぎる丸太をギリギリで躱した。


頭髪が数本持っていかれた気がする。


……あれ? ちょっと待って。これ、侵入者を『捕えるため』の拘束罠だよね?


どう見ても、当たった瞬間に人間がミンチになって肉片も残らないタイプの、ガチの殺害用トラップ(初見殺し)なんですけど。殺す気満々で来てない?


おれ、中々サイコパスで厳しい試験官に当たっちまったみたいだな。

やるじゃねえか。


おもしろい、その挑戦、受けて立つ!!

必ず見つけてやるぜ!


おれは廃人の魂に火がつき、さらに森の奥へと前進を開始した。



―――その後。


一度足を踏み入れば、肉を喰い破って絶対に外れないよう、先端に最悪の返しが施された鉄製の跳ね上がり式熊罠を、ステップワークで軽やかに躱し。


植物の蔓にカモフラージュされ、限りなく透明に近く不可視化された、ちょうど人間の喉の位置(即死判定ライン)に張られた、鋭利なピアノ線のトラップを、リンボーダンスのようなスライディングで潜り抜け。


「ふっ、1つの罠を避けて安心したプレイヤーの心理の隙を突く、2重トラップだな」と見破って回避した、その着地先の地面に、さらに緻密な計算で掘られていた3重、および4重の連鎖式底なし落とし穴(底には案の定、尖った竹槍付き)を空中ジャンプの軌道修正で強引に飛び抜け。


そこを通過した瞬間に、壁の暗渠から一斉に1,000本もの猛毒の針矢がマシーンガンの如く超高速連射される罠のトリガーを、手製の木刀の一振りでシステム的に物理破壊し――。


どこか、おれに対する「狂気じみた殺意と、底知れぬ執念」すら感じる数々の暗黒トラップ群を、おれは超一流のゲーミング技術で次々とパーフェクトに完全看破。


地面に残された、草木のわずかな踏み荒らし、折れた枝の角度といった『ほんの僅かな微細な痕跡』も見逃さず、泡娘の逃走ルートを冷徹に追跡していった。



―――見つけた。


原生林の奥の巨木の樹冠。


おれの視線が自分を完全に捉えたことに気づいた瞬間、泡娘の顔面が恐怖で崩壊した。


彼女はパニックになりながら、斥候☆3のアクティブスキル『シャドウステップ』を無駄に発動し、死に物狂いの形相で空中を跳ねて逃げ出しやがった。


いやいや、おかしいだろ。


この試験、見つけた時点で「はい合格!」で終わりのはずなのに、何故あんな本物のプレデターから逃げる獲物みたいな顔で、涙を流しながら死に物狂いで逃げ回るんだ。


まあ、おれのAGI補正の前に、逃げ切れる訳ないけどね!


おれは一瞬にして空中を駆けるテルミナの背後に肉薄し、その細い肩を、後ろからガシッと完璧にホールドした。


―――はい、捕まえた!


おれはふぅと息を吐くと、満面の笑みを浮かべた。


いやぁ、合格者の感想だけど、中々やるねぇー!

あんなわずか2時間足らずの短時間で、よくぞこれほどクオリティの高い殺戮トラップ陣を設置できたよ。


おれは彼女の健闘を称え、握手でも交わそうと、泡娘の肩をグイとこちらに向かせた。


その、まさに瞬間だった。


「ひ、ひぎぃぃゃあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっっっっ!!!!(過呼吸)」


おれと正面から視線が合わさった瞬間、泡娘は、まるで地獄の閻魔大王に魂を毟り取られる間際の亡者のような絶叫を上げ、その場に凄まじい勢いでスライディング土下座を敢行した。


大理石のような地面に額をガンガンと打ち付けながら、涙と鼻水で顔をグシャグシャに濡らしながら、凄まじいマシンガントークで生への懇願をおれに向かって開始した。



――――――ん?????(知らぬが仏)



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