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廃カス課金プレイヤーがチート知識で神職『リミットブレイカー』になるまで  作者: なんくるないさ~
第一章 始まりの街編

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1-13 雪山以外ではあまり聞かないよね



―――シュッシュッシュッシュッ、シュッシュッシュッシュッ。


「……よし。こんなもんか」


おれは隠れ家となる天然洞窟の片隅で、一心不乱に木片を削り続けていた。


さきほど無事にサバイバルの拠点製作(ただロープと枯れ葉を敷いただけの寝床)を終え、戦士のノルマである腹筋・背筋・腕立て・スクワットの筋トレ各200回を音速で消化。


その後、狩人(アーチャー)用の簡易的な弓矢をクラフトし、今は剣士(フェンサー)用の「ただの木刀」をせっせとビルドしているところだ。


攻撃力は文字通りのほぼゼロ(ていうかただの棒切れ)だが、この世界のクソ真面目なシステム仕様上、木刀であっても『剣』として判定され、装備することが可能になる。


これで明日からは、剣士の熟練度も同時並行でガリガリと上げていくことができるわけだ。


おれは木刀のグリップにツタを巻き付けながら、明日からの超过酷なマルチタスク・スケジュール(脳内シフト表)を改めて確認し、文字に起こしてみることにした。



【廃人直伝:異世界地獄のブートキャンプ】


• 【05:00】朝、日の出と共に起床。

寝坊は死を意味する。

アラームはないので野生の勘で起きる。


• 【06:00】ゴブリン村へ向けて出発。

ここから徒歩で1時間ほどの場所にある危険地帯へ。

道中にポップする野生のホーンラビットや狼どもは、すべて武道家(グラップラー)の☆2習熟度用の贄(サッカーボール)とする。


• 【07:30】ゴブリン村に到着。

村の周辺をパトロールし、うろついている「はぐれゴブリン」を各個撃破。

もちろん武道家のコンボの贄(サッカーボール)とする。


• 【12:00】昼食。

現代日本の生ゴミの方がまだマシだと思えるような、雑貨屋で買ったパサパサの激マズ簡易保存食にて、涙のカロリー補給。


• 【13:00】後半戦スタート。

SPが限界を迎えそうになったタイミングで、指輪を使って剣士(フェンサー)に転職。

手作りの木刀をひっさげて、ゴブリン村の本陣へ真っ正面から堂々と「入村」。


• 【18:00】夕暮れ。

周囲が暗くなるか、もしくは剣士の熟練度が上がるかの二択を達成した時点で、命からがら帰路へつく。


• 【19:00】限界マラソン。

戦士の『20キロランニング』のノルマ達成を主目的に、時速20キロの鬼のペースで森を爆走。

この時間帯に出現する夜型のモンスターは、タゲが切れるのを祈りながらすべて無視(シカト)。


• 【20:00】拠点(洞窟)に帰還&筋トレ。

休む間もなく、戦士の☆2ノルマである筋トレ4種(腹筋・背筋・腕立て・スクワット)をそれぞれ怒涛の200回。


• 【21:30】夕食。

現代日本の肥料(ウンコ)の方がまだ高栄養でマシなんじゃないかと思えるような、鼻が曲がりそうな激クサ簡易食にて、ちょっと遅めの虚無のディナー。


•【22:00】深夜のスタンバイ。

極度の筋肉痛と疲労で白目を剥きながら、【月見草】のポップスポットの前に全裸に近い格好(服を乾かすため)で体育座りして、ひたすら開花の瞬間を待つ。


・【24:00】午前0時、金策タイム。

月見草が開花した瞬間、1分間の超絶タイムアタックで花びらをピッキング。

即座に課金アイテムボックスへ幽閉。


・【24:05】深夜の入浴&就寝。

冷たい川の池で一日の汗と泥と精神の汚れをザブザブと洗い流し、拠点(ただの洞窟)の床に倒れ込んで気絶。



おれは自分の脳内で完成した、およそ人間がこなしていいとは思えないブラック企業のシフト表を眺め、ふと我に返った。


……あれ? これ、おれ本当に大丈夫……?



前世のゲームなら良かったかもしれないが、ここは本物の肉体を持った生身の現実世界だ。


普通に筋肉は乳酸でパンパンになるし、関節は悲鳴を上げる。


ゲームと違って『蓄積疲労による過労死』とかの隠しステータスを考慮しているんだろうか。


特に、夜22時から24時までの、ただの岩場で月見草をじっと待つ2時間――。


これ、暗闇の中でガタガタ震えながら過ごすの、精神的な拷問(地獄)じゃね?


ま、ま、まぁ……。何事も一度やってみよう。トライトライ、だ。死ななきゃ安い、死ななきゃ安い……(自己暗示)



あれこれと頭の中で不安と現実逃避を繰り返しているうちに、手元の木刀がようやく綺麗に仕上がった。


おれは転職の指輪を使い、職業を剣士(フェンサー)に変更する。


淡い光が消えた後、完成したばかりの木刀を、闇夜の空間に向かって一気に振るってみた。


―――ヒュッッ!


空気を切り裂く、小気味いい風切り音が洞窟に響く。


うん。


安物ではあるが、おれの全神経を集中させて削り出しただけあって、驚くほど手に馴染む。


明日はこのただの棒切れが、おれの細い命を繋ぐ文字通りの『生命線』になる訳だから、こだわって作っておいて本当に良かった。



ちなみに、基本職【剣士】の☆1におけるレベリングのコツは、これまた非常に面倒くさい。


【一匹のモンスターに対し、剣士の基本5大斬撃(唐竹割り、袈裟斬り、逆袈裟、胴斬り、突き)のすべてを、一発もミスすることなく正確にヒットさせた状態で討伐すること】だ。


しかも、その一連の5連フルコースを「10回」成功させて、ようやく習熟度が「1」上るのだ。


つまり、☆2のレベルアップを迎えるためには、最低でも100匹(正確にはモンスターの素の経験値変換が入るので約97匹)の敵を相手に、この曲芸のような精密コンボを決め続けなければならない。


わざわざゴブリンの村という、危険な敵の本陣へ殴り込みに行くのは、単にそれだけの膨大なポップ数を爆速で稼ぐためだ。



おそらく明日は、複数のゴブリンが棍棒を振り回して入り乱れる、大乱闘スマッシュブラザーズ状態になるだろう。


そんな大混戦の真っ只中で、冷静に「はい唐竹割りー、次、袈裟斬りー!」などと的確に木刀を当てていく超絶リアルテクニックが必要とされるのだ。


普通の新兵なら、パニックになってゴブリンの集団に美味しく召し上がられて終わる。



……だが、おれには前世で、数々のクソ運営の理不尽な超高難度クエストをソロクリアしてきた、圧倒的な自負がある!


その攻略ロジックと技術は、おれのソウルに刻まれている。


やってのける自信は、大いにある!!



明日へのすべての準備と、脳内シミュレーションが完了した。


おれは一旦木刀をアイテムボックスへ収めると、いよいよ今夜のメインイベント――月見草が咲き誇る、夜の滝のほとりへと移動し、岩の上にポツンと体育座りをして開花の時を待ち始めた。


―――

―――

―――

―――

―――

―――

「ね、眠い……。ガチで、眠い……(黒目が無い状態)」


体感的には、まだ夜の11時くらいだろうか。


滝の轟音だけが夜の静寂に虚しく響き渡っている。


しかし、ここで一瞬でも意識を飛ばして寝てしまったら、おれは一生あの「ウンコの方がまだマシ」なレベルの、鼻が曲がりそうな激クサ簡易食すら買えなくなって破産するのだ。


起きろ!! 寝たら死ぬぞ!!!


自分の頬をパチパチと両手で激しく叩くが、襲いかかる睡魔の質量は凄まじい。


思えば今日は、明日の予定をこなすよりも、すでに数日分の疲労が一気に肉体に溜まりまくっているのだ。



朝一番に、意識を持った時速80キロのブチ切れ暴走毛玉(グラちゃん)に6時間も追いかけ回されて死ぬ思いをし。

生きるために落差50メートルの大激流の滝底へと決死のダイブをぶちかまして溺れかけて死ぬ思いをし。

騎士に転職していなかったら、その着水の衝撃で肉体が消し飛んでリアルに死ぬ思いをし。

そして今、この極限状態の疲労の中、ただの植物が咲くのをじっと待つためだけに、襲いかかる最強の眠気を我慢するという――まさに、精神の死を迎えそうだ。


あと1時間……。


あと1時間も、この暗闇の中で全裸に近い格好で寒さに震えながら、体育座りで待つのか……?


おれは虚空を見つめ、涙で視界を滲ませながら、静かに拳を握りしめた。


これでもおれには、数々の最高難度クエストを完全制覇してきた、圧倒的なトップ廃人としてのプライドと自負がある。


その攻略ロジックと技術はおれのソウルに刻まれている。


どんな過酷な環境であろうとも、必ずややってのける自信は――。



……………1ミリも……ないです……(ガクッ)



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