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廃カス課金プレイヤーがチート知識で神職『リミットブレイカー』になるまで  作者: なんくるないさ~
第一章 始まりの街編

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1-10 初めてのレベルアップ



よし。じゃあ、まずは【騎士(ナイト)】職の解放条件から手を付けるとするか。


夜明けの爽やかな光が差し込む大木の上で、おれはロープのハンモックから身を起こした。


全身を襲うバキバキとした筋肉痛をあくびで誤魔化しながら、本日一発目の脳内ロードマップを展開する。


この大森林の中心部には、天を衝くような大きな山がそびえ立っている。その山麓に広がる、ぽっかりと開いた草原エリア。


そこに、おれが今回「お馬さん(生贄)」として目をつけた、騎乗するにはこれ以上ないほどおあつらえ向きなモンスターが生息しているはずなのだ。



目的地までの道中、【武道家(グラップラー)】の習熟度を効率よく稼ぎながら進むとしよう。


このあたりのエリアに出現するモンスターのポップデータは、すでに脳内に完璧にインプットされている。


ホーンラビット、スライム、ゴブリン、ビックボア、フォレストウルフ、フォレストビー、グリーンキャタピラー、ジャイアントアンツ

……うん、せいぜいこの程度だな。



一晩じっくりとロープに縛られて寝たおかげで、SPも万全のフルチャージ状態だ。


これくらいの雑魚モンスターなら、今のおれのステータスでも、問題なく正面からボコボコにできる。


おれは転職の指輪に意識を集中させ、職業を【盗賊(シーフ)】から【武道家(グラップラー)】へと再変更し、己の拳だけを頼りに、鬱蒼と生い茂る森の奥へと足を踏み入れた。




わずかばかりの獣道らしき踏み跡を、ひたすら歩む。


まだ【斥候(スカウト)】のパッシブスキル『気配察知』を解放していないため、モンスターからの突発的なエンカウント(不意打ち)だけは避けたい。


おれは周囲の草むらに細心の注意を払いながら、それでいてベテラン廃人らしく歩速は一切落とさずに、最短ルートで目的地を目指した。




―――お、さっそく第一村人(経験値)を発見。


森を進むこと十数分、おれの視界が捉えたのは、ゲームの定番にしてお約束の雑魚モンスター、緑色の小鬼【ゴブリン】だった。


約10メートル先を、だらしなく棍棒を引きずりながら歩いている。


前世で数々の地獄級・最高難度クエストをソロクリアしてきたおれだ。


足音を完全に消した消音歩行なんて、意識せずとも肉体が勝手にオートマチックで出力できる。


哀れなゴブリンは、背後に死神(不審者)が迫っていることすら気づいていない。


ファーストアタックはおれがいただきまーす。



そっとゴブリンの背後に無音で肉薄。


そして――5連コンボの起点であり、一番モーションが大きくて当てにくい『頭突き』を、ゴブリンの後頭部めがけてガツンと叩きつけた!


「ギギャッ!?」


不意の衝撃にゴブリンがガクンと前傾姿勢になり、盛大によろめく。


すかさず追撃。


のけぞるゴブリンの両腕に向けて、左右のローキックを電撃の速さで放つ。


痛みで「ギャスッ!」と身体をくの字に曲げたゴブリンの正面へ、おれは一瞬にして回り込んだ。


視界を奪う為、狼狽えるゴブリンの両目に向けて、左右のジャブを容赦なくお見舞いした。


「ギ、ギギャァァッ!?」


完全にパニックに陥り、目を押さえながら必死に棍棒をデタラメに振り回すゴブリン。


おれはその軌道を完全に見切り、左側へ半歩だけすり足で移動して回避した後、ガラ空きになったゴブリンの左脇腹へと、深く踏み込んで右の正拳を突き刺した!


ズドォォン! と肉厚な衝撃音が響き、ゴブリンの身体は木の葉のように吹き飛んで後ろの茂みへと突っ込み、そのまま静かになった。


よし、完勝。


ふぅ、と息を吐きながら自分の両手を見る。


ステータスがまだまだ育っていないせいが、ゲーム時に比べると動きがどこか稚拙で泥臭い。


こればかりは、このリアルな肉体に戦闘の感覚を徐々に慣れさせていくしかないだろう。


脳内のシステムインジケーターが、武道家の習熟度が『+1』されたことを告げたのを確認し、おれは再び目的地までの道を歩き出した。




―――ドカンッッ!!!


さぁ、これでラストだ。


おれの強烈な正拳突きを横腹に喰らい、文字通り弾丸のように吹き飛んでいった【ジャイアントアンツ(巨大蟻)】。


その巨体が大木に激突して動かなくなるのを見届ける。


森を進み始めてから、これで通算7度目の戦闘が終了した。


ウサギ戦、道中のゴブリンや狼たち……これで計算上、【武道家☆1】の最大習熟度『10』がぴったり貯まりきったはずだ。


「ステータス、オープン」


 アキヒロ


 HP : 50/50 MP : 10/10 SP : 45/80(+10)


 STR : 11(+2) DEX : 8(+1) VIT : 5 AG I : 10(+2)


 INT : 1 MND : 1 LUK : 1


【職業】

 武道家☆2(0/100) UP


【職業履歴】

 剣士☆1(0/10)、槍士☆1(0/10)、戦士☆1(0/10)

 盗賊☆1(0/10)


【スキル】

 スラッシュ、シングルスラスト、ラッシュ、正拳突き、回し蹴り NEW、スティール、解錠


【所持金】

 550ゴールド


画面を展開し、おれはニヤリと口角を上げた。


よしよし! 無事に熟練度が『☆2』にランクアップしたな!


この世界における「職業の星が上がること」は、前世のゲームでいうところの【レベルアップ】と完全に同義だ。


記念すべき、異世界での初レベルアップである。


熟練度が上がった瞬間、肉体の奥底から力が湧き上がるような、確かに小さいけれど明確な「能力値の底上げ」をおれはハッキリと感じ取ることができた。


おそらく、この世界の住人も、職業の星が上がって強くなった瞬間自体は自覚しているのだろう。


だが、彼らは詳細なステータス数値(パラメータ)が見えないせいで、「星が上がったから、その職業の特性で強くなったんだな」と甚大な勘違いをしているに違いない。


今度、学問や魔法の研究に特化した国……【アルカノ魔法国】に立ち寄った時にでも、この世界の学者どもの認識がどうなってるのか、ちょっと確かめてみるか。


そんな未来の観光予定に思いを馳せつつ、おれは次の課題に目を向ける。



無事に武道家は☆2になった。


だが、次の【☆3】へ上がるために必要な習熟度は一気に跳ね上がって『100』。


普通に戦っていたらまたスライム換算で一万匹コースの地獄だが……もちろん、☆2にもおれだけが知っている『確定+1ボーナス』の隠しコツが存在する。


武道家☆2のレベリングのコツは、【拳の攻撃を一切使わず、最初から最後まで蹴り技のみで戦闘を組み立て、新スキルの『回し蹴り』でフィニッシュすること】だ。


10日間の森籠り中に、100匹のモンスターをサッカーボールみたいに蹴りまくってやるぜ!




―――それから、さらに鬱蒼とした森を歩くこと2時間。


木々の隙間から一気に視界が開け、おれはついに、目的の山の麓に広がる大草原へと辿り着いた。


さーて、お目当てのモンスターはどこにいるかな……


おれは草原に立ち、お目当てのターゲットである【グランドシープ】の姿を探し始めた。



シープという可愛らしい名前に騙されてはいけない。


こいつは、この大森林の山麓エリアにおける、隠れた「初心者殺し」の超危険モンスターなのだ。


その体高はなんと、大型トラック並みの3メートルもあり、その頭上には、城門をも粉砕しそうな一対の巨大な螺旋角を引っ提げ、ひとたび獲物を見つければ、巨体に似合わぬ時速80キロという新幹線並みの爆速で突進してくる。


おまけに耐久力と持久力がすさまじく高く、一度ターゲットとしてロックオンされたら、その獲物が木っ端微塵に跳ね飛ばされるまで、地球の果てまででも絶対に突進を止めないという、歩く弾道ミサイルなのだ。


近づきさえしなければ大人しいが、ひとたび索敵範囲に入れば確定で即死級の轢き逃げアタックが飛んでくるため、地元の冒険者たちは、よほどの命知らずでもない限りこの草原エリアには絶対に近づかない。



だだっ広い草原に目を凝らし、じっと観察していると、約500メートルほど向こうの丘の斜面に、モコモコとした巨大な白い綿あめのような物体がいくつか動いているのが見えた。


ビンゴ。グランドシープの群れだ!



おれは、一切の気配を隠すことなく、むしろ堂々と足音を響かせながら、スタスタとグランドシープの群れに向かって正面から歩いて行った。


お互いの距離が100メートルを切った、その瞬間。


群れの中で最も巨大なリーダー格の一匹が、おれの存在を完全に「敵(障害物)」と認識し、ギロリと凶暴な眼光をこちらに向けた。


後ろ足で激しく地面の土を蹴り上げ、突進の助走の構えを取る。


普通のアホな新人なら、この時点で恐怖のあまり失禁して逃げ出すシチュエーションだ。



だが、おれは構わず歩みを止めない。


おれを完全にロックオンしたグランドシープは、ブモォォォッ!! と激しい鼻息を撒き散らしながら、凄まじい地響きと共に、時速80キロの質量兵器となっておれ目がけて突進してきた。


迫り来る巨大な白い壁。死のカウントダウン。


しかし、おれの唇は、最高に歪んだ廃人の笑みを浮かべていた。



「さぁ――異世界初ロデオの、開始だッッ!!!」



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