第11話
「……嘘だろ?」
ポーションの鑑定結果は――驚きのものだった。
【回復ポーション(中級)】
効果:中度の傷を癒す
備考:初級ポーションの製法で作られたポーション。製作者が持つ加護の効果で中級ポーション相当の回復効果を持つ。
「中級……ポーション?」
お、おかしいな?
俺、初級ポーションの作り方を教えたよな!?
どうして……。
「どうしたんですか……? もしかして……失敗作でした……?」
「い、いや違う……真逆だよ」
俺は魔道具に表示された結果をリリスに見せる。
「中級……どうしてでしょう……!?」
「この魔道具によるとリリスの加護が関係してるらしいけど……何か思いい当たる節はないか?」
「私の加護ですか? 調べたこともないので知りませんでした……」
俺も錬金術に有利になる加護なんて聞いたことがないからな……。
帰ったら、ラディアに聞いてみよう。
「えっと……とりあえず、中級ポーションの錬金、おめでとう……!」
「あ、ありがとうございます!」
リリスは少し困惑した様子だった。
まさか一日で俺が作れるポーションと同等級のものを作るとは……。
才能とは恐ろしいな……。
――◇――◇――◇――
「り、リリス、一日で中級ポーション作ったの!?」
宿に戻ってから。
「そうなの……! 先生の教え方がすっごく上手だったからさ!」
リリスが満面の笑みで報告すると、ラディアはあんぐりと口を開けたまま、俺を二度見した。
「教え方が上手って……いやいや、だとしても錬金術って、そんな直ぐに習得できるものじゃないでしょ……?」
ラディアは自分の世界に入ったのか、ブツブツと呟くと……
「もしかして、リリス、天才? 私の妹、天才だった……!?」
「お、大袈裟だよ、お姉ちゃん……!」
「いや……大袈裟でもないと思うぞ。だって俺は初級ポーションの作り方を教えたはずなのに、出来たのは中級ポーションだったわけだしな」
「……それって、どういうこと?」
ラディアは不思議そうに首を傾げた。
「そのままの意味だよ。どうやらリリスがポーションを作ると初級ポーションを作っても中級ポーションレベルの効果になるらしい」
「……え? ど、どどどういうこと!?」
「どうやら、リリスが持っている加護の効果でポーションの効果が勝手に上がるらしい」
「そんなことが……」
ラディアは信じられないといった様子で、リリスの手をとってまじまじと見つめた。
「す、すごいねリリス……! 私の自慢の妹が、まさかこんな大天才だったなんて!」
「もー、お姉ちゃん、そんなに引っ張らないでよ。恥ずかしいよ……」
リリスは顔を真っ赤にして、照れくさそうに頬を掻いた。
「いや、本当にすごいことだよ。これなら将来、国で一番の錬金術師になれるんじゃないか?」
俺がそう言うと、リリスは嬉しそうにパッと顔を輝かせた。
「本当……!? じゃあ、もっともっと勉強して、お姉ちゃんのことも、先生のことも支えられるようになる!」
「うんうん、頼もしいねぇ。お姉ちゃん、感動しちゃったな……」
ラディアは目をうるうるさせながら、リリスをぎゅっと抱きしめる。
「でも……よく、そんな直ぐに錬金術の工房を借りれたね?」
「あー……実はラディアに教えてもらった店の店主さんに条件付きで貸してもらってさ……」
「条件付き?」
「うん。その店主さんの友達である『銃の名手』に銃を売ってくれっていう条件付きで……」
「えー、そんな約束させられたの!?」
ラディアは苦い顔をする。
「あの店主……人の事情も考えず、好き勝手なことを……はぁ」
「す、すまん……。でも、結局、引き受けたのは俺だから……」
「もう……。クラインは昨日、襲撃されたばかりってことを忘れないでよね」
「申し訳ない……」
俺は申し訳なくなり、頭を下げる。
「でも……俺とて、ただで売るわけじゃない。銃の腕前で俺と勝負して勝ったら売る。そういう条件だ」
「へぇ、凄い条件だね……。でも、クラインは射撃の腕は良いの?」
「まあ、一応、職人やってるからな。そこら辺の銃使いよりは腕が良い自信はあるよ」
結局、俺が勝負に勝てば良いだけの話だ。
そうすれば、銃を売らずに済み、俺達はただで工房を借りることが出来る。
「そういえば、ラディアは何処に行っていたんだ?」
「んー、私は冒険者ギルドとか色々かな。そういえば……さっきギルドで嫌な話を聞いたんだよね」
「嫌な話?」
ラディアが少し真剣な表情で頷いた。
「……どうやら最近、ここら辺でモンスターたちの活動が活発になってるみたい」
「へぇ……モンスターの活動が……」
「うん。特異個体が現れたり、やけに高ランクなモンスターが現れたりしてるんだって」
そういえば、村の近く出たレッドベアーも特異個体だったな。
あれもモンスターの活動が活発になった影響なのだろうか。
「それで、ギルマスにもしかしたら近いうちにスタンピードが始まるかもしれないから、その時はよろしくって言われちゃった……」
ラディアは肩をすくめる。
「スタンピード……確かモンスターの異常な大量発生のことだよな」
「そうそう。私はSランク冒険者だから、そういう事態になったら対処しなきゃいけないってわけ……」
「大変だな……」
Sランク冒険者というのも楽じゃないらしい。
少し心配だが……俺達はスタンピードになれば、役には立てないため、部屋でお留守番だな。
そう思っていると――
「でも……私が心配しているのは、どちらかというと二人の方だよ」
ラディアは突然、そう言い出した。
「俺達?」
「うん、もしも私がスタンピードの対処に向かったら……二人の護衛が居なくなっちゃうでしょ?」
「あ……確かに」
俺とリリスは、顔を見合わせた。
俺はギリギリ戦えるが……高ランク冒険者が相手だと流石に厳しい。
そうか、護衛……。
「きっと連中はその隙を狙ってくると思う。だから……どうにか、もう少し仲間が欲しいんだよね……」
「うーん……仲間かぁ。でも、こういう状況だから信頼できる仲間じゃないといけないんだよな」
「だね。でも……私、実はそんなに街に知り合いが居なくてさ……。信頼できる人ってあんまり居ないかも……」
ラディアは苦い顔をしていた。
「意外だな、ラディアって社交的に見えるけどな……」
「うーん……国から亡命した後は相手が帝国の人間かもしれないって思って、あんまり人と親しくしなかったんだよね……」
「なるほどな……」
俺もラディアもリリスも……全員、狙われている身なわけか。
困ったな……あいにく、俺も街には来たばかりなので、知り合いはラディアとリリス以外居ないし……。
「……良いこと思いついた」
「なんだ?」
ラディアはイタズラっぽい笑みを浮かべて――
「もしも、『銃の名手』って人がクラインより強かったら……銃を売る代わりに仲間になってもらえば良いんじゃない?」




