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公爵姉妹は幸せです  作者: 京栞


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97/112

#97

水曜日は更新をお休みしておりましたため、

月曜日ぶりの更新です。

「リリアーネ様がすべきこと、ですか」


 神父様が確かめると、お姉さまは腕を組んで頷いた。


「腹立たしいが、女神が私の大事な妹を選んだというのならば、当然その意図するところ、望むところがあるはずだろう?」


 お姉さまには、私たちの未来での出来事はお話しているけれど、それだけでは納得できない部分もあるのだろう。

 まあ、私も他人が同じ状況になっていることを知ったら、何らかの条件や代償があるのではと考える。


 女神が私を選んだこととその理由自体はアノンから聞いているけれど、女神に具体的に何を求められているのかということは一切話されなかった。

 それが、アノンも知らないのか、黙っているだけなのかは分からないけれど、隠しているのであれば、私は一生それを知る機会はないだろう。

 教会なら、私以外の事例も知っていたり、何か新しく私が行うべきことを知っているのかもしれない。


「私も、もし私がしなければならないことがあるのなら、それを知りたいです」


 私とお姉さまがほぼ同時に身を乗り出した様子に、流石は姉妹であらせられる……と呟いた後、神父様は困り顔で笑った。


「いえ、それが、恐らくですが、特にないのですよね」

「え?」

「は?」


 神父様は、あくまでも私個人の考察とはなりますが、と前置きして続ける。


「少なくともリリアーネ様ご本人がご存じでないならば、女神にとってリリアーネ様が選ばれる事自体が目的なのでしょう。未来というのはかなり些細なきっかけでも変えられるものです。滅多にあるわけではありませんが、目的を定められてしまったことでかえって不幸な道を歩む方もおられないわけではありませんし」


 教会の教えなんて長い時間の中でかなり人間に都合よく捻じ曲げられています。

 一応現在の仕切りは中央教会が行うんですから、リリアーネ様がそんなことを尋ねたらあっという間に民の人気取りの奉仕活動に利用され続けますよ。


 ため息を吐きながら、神父様はアノンのことを指さす。

 皆の視線を一気に向けられたアノンはどこか少し煩わしそうだ。


「どうしても気になるなら、私よりそこの少年の方が詳しいでしょう」

「アノンのことか」

「ええ。少なくともリリアーネ様をお支えする役目を任されている彼の方が、教義に当てはめた解釈しかできない我々よりも余程明確に女神の意志を理解しているでしょう」


 とてつもなく渋そうな顔になったアノンは、いやいやといった風に口を開く。


「……女神が選びたかったのは本来リリじゃなかったから。代わりに選んでおいてこれ以上苦しめるなんて許せないから、代わりに僕が動く。だからリリは何もしなくて良い」


 それではまるで、本来は私が犠牲になるかもしれない場面が用意されているということではないか。

 私の代わりに、アノンが動けば、私が味わうはずの苦しみを肩代わりさせることになってしまうのだろう。


 曖昧な言い方で誤魔化すように言ったアノンにお姉さまが食い下がる。


「それは、本来望まれていることがあるということか?」

「……別にリリである必要はないですよ。ただ、このままだったら実現する未来をそれとなく変えるだけ。いくつかは僕が動く前にリリが自分で変えちゃったわけだけど」


 アノンは基本的に私が解決したいと思ったことにはいろいろと協力をしてくれるけれど、次に怒るであろう問題については自分から口にしてくれない。

 孤児院の問題だって、きっと私が何も思い出さずにお姉さまに引き取られていたら、一人で解決したのだろうし、それが出来るだけの力を持っている気がする。


 以前からアノンは私を含めた家族全員が大事でたまらない様子を見せていたけれど、巻き戻ってからの彼はより一層その気持ちをはっきりと口にするようになった気がする。

 まあ、精神年齢が高くなったからと言えばそれまでなのかもしれないけれど、私が公爵家で苦しんでいた頃、彼はまた別の苦しみを抱えていたことは想像に難くない。


 お姉さまはアノンの返答を聞いていろいろと思い当たったようだった。


「それは孤児院の問題か? エルヴィンの件か? それともアデラ夫人の?」


 どれもこれも、世界の為なんて立派な理由じゃなくて、私がただ幸せになる為にやったことだ。

 そんな些細なことで、世界の運命が変わるとも思えない。

 私が救いたかったのは、ただ自分が大事に想っていた人だけ。

 ただの、身勝手で自己満足なやり直し。


 それなのに、アノンはお姉さまの質問にどこか誇らしそうな顔で肯定する。


「全部ですよ。公爵家やリリはもちろん、世界にとっても、放置すれば全部まずいことになるからね。ま、リリがしたいことをするのが現状は一番いい風に転がるんじゃないですか。リリは間違いなく、貴女の救世主なんだから」

お読みいただきありがとうございます。


水曜日は更新が出来ませんでしたので、明日も更新させていただきます。

次回更新予定 9/19

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