↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵姉妹は幸せです  作者: 京栞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/110

#92

間に合わなくてすみませんでした!

「ブルーメ公爵家当主、マーガレット・ブルーメだ。……貴方が、アスター神父殿で、間違いない、のか? 失礼だが、その、貴殿は男性だと聞き及んでいたのだが、そのシスター服は……」


 お姉さまが困惑した表情で正面にいる神父様に尋ねるのに、私は内心で同情した。

 私や親しい家臣の前では砕けて女性らしい言葉遣いになる事が増えてきたお姉さまだけれど、今日はエルヴィンと繋がりがある人間とは言え、別組織の人間と相対するからか、厳粛な公爵閣下、といったような口調だ。

 最も、今は来訪者の予想外の格好に少し動じていてぎこちないけれど。


 どこからどう見ても女性にしか見えないシスター服を着た神父は、この反応にも慣れているのか特に動揺する様子もなく、さっと礼を取る。


「北部教会所属、北部神殿にて司祭の職を預かっておりますガイウス・アスターと申します。北部の主であらせられるブルーメ公爵閣下に御目文字叶いましたこと、光栄に存じます。この服装はただの趣味で、私の性別は間違いなく男性です」


 はっきりとそう言ってにこりと女性のような可愛らしいともいえる顔でにこりと微笑まれると、それ以上追及も出来ない。

 お姉さまも納得したようなしてないような顔で頷いた。


「そ、そうか。失礼したな」

「いえ、当然の疑問でございますので、お気になさらず。ではまず、先ほどリリアーネ様にはお伝えしましたが、まずは改めて、中央教会の者の暴挙について北部教会を代表して謝罪をさせてください」

「……北部教会が私たちと同様に中央教会と良い関係でないことはこちらも了解していること。北部に尽くしてきた貴方方にまで無理に責任を取らせようとするほど、私は愚かではない。が」


 領政でそれなりに教会と協力したこともあるお姉さまは、私よりも余程はっきり教会同士の関係性について把握しているようで、神父様の謝罪に首を横に振った。

 しかし、それでは終われないというように、一度言葉を止めて神父様を真っ直ぐ見つめる。


「北部教会と中央教会が完全に別組織だと考えることも我々には不可能だ。当然その人員を信用することもだ」

「当然のご判断です。長く神職にある者たちは兎も角、遺恨を知らぬ若者たちは中央との距離が近い者もおりますし、中央教会からの出向を受けたり、北部教会から出向させることも近頃は増えておりますから、下の者の中に中央の間諜もいるでしょう」


 首肯しながら、表情を歪める神父様につられたか、壁際で控えているエルヴィンも眉間にしわが寄っているのが見えた。

 これは私個人の意見になりますが、と神父様はお姉さまを見る。


「教会に接触する場合は出来るだけ、私のようなアスター姓の者を介するか、北部神殿の神殿長に直接お話を持っていくべきかと思います。神殿長は閣下もご存知かと思いますが、元は中央教会の商売人まがいのやり口へ反発してこちらへいらした方ですし、神への誓いと共に北部への忠誠を誓わねば、アスター姓は名乗れませんので」


 神への誓いと共に、ということは神職によくある、破れば代償があるようなものなのだろうか?


 お姉さまはエルヴィンの方に向かって別のことを投げかけている。


「エルヴィン、アスター姓はシュトゥルム家の者なのだろう? 私が勝手に声をかけても問題はないのか?」

「当たり前でしょう! 当主である俺が主と認めた方に使われるなら皆喜びますから、是非」

「分かった。神父殿の忠告通り、教会絡みのことはアスター姓の者を頼るとしよう」


 お姉さまの言葉に安心したような顔を見せた神父様は、話しを元に戻し、現状を語り始める。


「今回の件は、北部教会を始めとして、各地方の教会__中央を除く南部教会・東部教会・西部教会ですが__に断りなく中央が抜け駆けをしたということも問題になっておりまして」

「発端となった神託で余計な接触は禁じられていたのではないのか? 抜け駆けというと、いずれ接触するつもりがあったというように聞こえるが」

「それが絶妙なところでして。中央の者が行ったのは、リリアーネ様たちの行動を勝手に制御しようという企みでしょうから、完全に神託に反しているのですが、神託はご奉仕しろとも仰せなのです」


 アノンが女神に頼んで作られたという神託を、私はざっくりとしか知らないけれど、内容を説明してくれたアノンも確かに「無暗に邪魔するな」以外に「することに協力しろ」みたいなことを言っていたような気もする。


「我々もいずれリリアーネ様がご成人なさった暁には、お目通りを願うはずだったのですが。貴重な聖遺物を多数保有する中央の弁明でそれを言われてしまえば、首謀者を罰することは難しく……」


 頭が痛いと言わんばかりに、額に手を当てた神父様はため息を吐いた。


「せめてもの対策として、中央教会からの出向者は向こう十年、他の地方教会全体で受け入れず、こちら側からも人手は貸さない、ということは決まったようですが」

お読みいただきありがとうございます。


神父様みたいなタイプの人をお姉さまが見るのは初めてなので、ちょっとだけ動揺してます。

あんまりお姉さまは信心深くないので宗教者とは距離がありますが、慣れてくれば口調が砕ける……かも?


次回更新予定 9/7

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。