#86
ギリギリ今日……
水曜投稿ミスにより、本日2話更新しております(これが2話目)。
「北部神殿所属のガイウス・アスター神父から面会要請と、中央教会の上層部からは謝罪の申し込みがあります」
どこかで聞いたような名前なのに、どこで聞いたか思い出せない神父の名前と、中央教会の面会申請。
エルヴィンの言葉に眉を潜めたお姉さまが呆れたように言う。
「北部神殿からの申し入れは兎も角、中央はまだ懲りないのか?」
「北部神殿は中央の下部組織ではあっても半ば独立していますから、利権を奪われたくないのでしょう」
「どれだけ強欲なのか……。この期に及んでリリに近づこうとするとは」
「中央の謝罪を受け入れれば王都でも活動はしやすくなりますが、北部神殿とは関係が悪化します。それに中央の教会幹部は確実に王家や中央貴族と繋がっていますから完全な信用はできませんね」
中央と北部の絶妙な関係性は、貴族だけに限ったものではない。
その下に暮らす平民たちはもちろん、利に敏いはずの商人や平等を謳う宗教者も、兎にも角にも対立しがちなのである。
まあ、いきなり先触れも無しに訪ねてくる非礼をしたのはあちらで、こちらの非は一切ありませんけど、とエルヴィンは肩をすくめる。
お姉さまもその発言には頷き、思案顔になる。
「北部神殿には世話になっているし、敵対は避けたい所ね。とはいえ、北部神殿も信用できるかは……」
「ガイウス・アスターなら心配はいらないと思いますよ。アスターの名を持つ者は我が家の手の者ですからブルーメの意思を阻害するような真似はしません」
エルヴィンがさらりと口にしたことに二人で驚く。
お姉さまが帰ってくるまでの間に、エルヴィンの家が諜報や裏工作を担う家であることとエルヴィン自身が出来ることはいろいろ聞かせてもらったけれど、協力者や諜報員がどこにいるのかまでは流石に教えてくれなかった。
この場で明かしたのは正式に主としての権限を得たお姉さまがいるからだろう。
「教会にも諜報員がいたのね?」
「マーガレット様が公爵を継がれてからは連絡もほとんどしていませんが、アスター家は元はうちの分家なんです。まあ、今いるアスターはガイウスも含め皆孤児から優秀なものを養子として籍にいれているので、血はもはやつながっていないのですが。何事も無ければ一生ただの宗教者で終わりますしね」
お姉さまの言葉に朗らかに答えたエルヴィンは、その後に小首を傾げた。
「しかし、ガイウスは少々癖のある性格で、こういった交渉には不向きなはずです。どうして面会申請をしてきたのか……」
「ああ、それはこちらから指定したからよ」
「どういうことです?」
思い出した。
中央教会の聖女を追い返すときに、アノンがわざわざ指定した名前だ。
アノンが指定したということは巻き戻り以前に親交があったという事だろうけれど、ブルーメともつながりがあるのだとは思わないので驚く。
けれど、アノンと私の巻き戻りは、エルヴィンには話していないことだ。
「……これをどこまで言うべきか、分からないことだから、説明はもう少し待ってもらえる?」
どう説明したものかと思ったけれど、お姉さまがそう言うと、エルヴィンはあっさり頷いた。
「マーガレット様がそうおっしゃるなら構いません。ブルーメに害のない相手ではありますから」
お姉さまは私に向き合い、これからどうしたいかを尋ねてくる。
「リリ、ここまで聞いてあなたはどうしたい? 気は進まないけれど、中央の連中とも会ってみる?」
「中央の方ってこの前の聖女様みたいな方なんですよね? それは、ちょっと……。エルヴィンの知り合いなら問題ないですし、アスター神父様との面会だけで良いならそうしたいです」
私があったことのある数少ない中央教会の関係者は、皆高位の神職者だったけれど、正直尊敬できるような性格の方はほとんどいなかった。
今回だってアノンがいなかったから確実に私は流される方向に行ったことだろう。
これ以上関わらずに済むならば関わりたくないのが本音だ。
お姉さまは私の我儘ともいえる返答にもあっさり頷き、エルヴィンに注文を付ける。
エルヴィンもそれに当たり前だとばかりに頷いた。
「分かったわ。エルヴィン、念のため、私が同席できるように時間を調整できる?」
「勿論です。どんな話にしろ、ガイウスが来るならマーガレット様も知っておいた方が良い情報をもたらすに違いありませんから。対面時には俺も同席するようにします。両者を知っている人間が間にいた方が良いですしね」
お読みいただきありがとうございます。
次回更新予定 8/24(期限ちゃんと守りたい)




